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電気局の事業経営

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 電車事業の市営化とともに、独立採算制の札幌市電気局が開局した。電気局では、一般的な事務や労務管理に加え、乗車人員や発券数の把握、営業車両数の確認など事業経営に関する業務、軌道路線の補修や延長工事、軌道路の舗装や除雪など軌道の維持管理、電線路の維持管理に関する業務などを行っている(各年の札幌市事務報告)。市営交通の営業成績については、『札幌市史 政治行政篇』に詳しいので本巻では省略する。北海タイムスの見出しで営業の様子をみてみよう。
札幌市電の収入/前年より増加」(昭4・1・3)、(雪害のため)「余り滅茶苦茶な/札幌市電運転状態」(昭4・3・9)、「市電増収一万円/前年度より五万円増」(昭5・3・21)、「稼ぐ市電(局)/増収四万千五百円」「赤字四万二千円/市電大減収/他市に比べれば上々」(昭6・4・14)、「札幌市電とバス/赤字ついに七万円」(昭7・1・20)、「電気局大改革/断行の秋/若狭議員得意の論陣/札幌予算市会七日目」(赤字体制の打破、昭9・2・26)、「札幌市電気局予算/暗礁乗上げ」(昭9.3.2)、「赤字解消へ/市電」(昭9・5・15)、「電車運転を円滑に/系統を変更して不評解消へ」(昭9・5・23)、「札幌市電の赤字穴埋め/乱暴な更正策」(昭9・5・25)、「電車値上げ反対演説会」(昭9・5・28)、「札幌臨時市会/下級は馘首課長は増俸/市電更正策を爼上に」(昭9・6・13)

 市営バスの運行を開始した六年以降、新聞見出しの「市電」は電気局のことを指している場合もある。四年頃から営業状況がよくない様子が分かる。この時は、運賃の値上げや電車路線とバス路線の整理、市債の発行で乗り切ったようである。電気局の市債発行は表24のとおりである。毎年のように電気軌道事業費などの市債を発行しているが、十年には電気軌道事業歳入欠陥補塡のために市債を発行している。土木事業と同様に、電車やバスの市営交通は市債の発行により事業を進めていたのである。
表-24 札幌市電気局市債
年度起債の目的借入額利率借入先償還終了予定年度償還完了年度備考
昭 2電気軌道事業買収費425,000円006.4公募昭26昭 7札幌電気軌道(株)の事業の買収
2電気軌道事業買収費3,075,000.007.5公募 26  8札幌電気軌道(株)の事業の買収
3電気軌道事業買収費3,075,000.006.0公募 26  8前年度同額分を低利借替した
4電気軌道事業費170,000.006.0公募 19  8軌道延長(豊平,桑園,西20丁目)その他
6電気軌道事業費201,000.006.4公募 26 23電車新造・増設,車庫線の建設
7電気事業費210,000.005.5道銀 9  8札幌乗合自動車事業譲受のため
8電気軌道事業費債借替整理費3,622,000.004.6公募 27  9同事業債等の償還整理のため
8第4回電気軌道事業費76,000.004.6道銀  9  8一時借入とした
9電気軌道事業費債借替整理費3,655,000.004.4公募 27 21
9乗合自動車事業費78,500.004.2大蔵省 13
9乗合自動車事業費51,500.004.3日生 13 16
10第5回電気軌道事業費158,000.003.8大蔵省 29
10電気軌道事業歳入欠陥補填119,000.004.0日生 13 14
11第5回電気軌道事業費29,000.004.1一銀 29 19
11第6回電気軌道事業費112,000.004.1簡保 30 25
11電気軌道事業整理公債3,403,000.004.2公募 27 14昭和9年度分の借替したもの
14電気軌道事業整理公債2,805,000.004.1拓銀 27昭和11年度借入分を借替したもの
14電気軌道事業歳入欠陥補填債113,074.654.0道銀 17 17昭和10年度日生より借入分を道銀に借替したもの
16乗合自動車事業費37,028.824.0道銀 19 19昭和9年度日生より借入分を拓銀に借替したもの
17電気軌道事業歳入欠陥補填93,823.234.0拓銀 19 19昭和10年度借入分を再度借替したもの
1.道銀-北海道銀行,拓銀-北海道拓殖銀行,大蔵省-大蔵省預金部,日生-日本生命,一銀-第一銀行,簡保-簡易保険局。
2.『札幌市史 政治行政篇』より作成。

 しかし十二年の日華事変勃発によるガソリン供給の統制のため、十二年十一月の鉄道省監督局からのガソリンの消費規制に関する通達で(二十五年史)、十二月に市会でバス路線の廃止や減車を決め(北タイ 昭12・12・11、21)、十三年四月から実施し(北タイ 昭13・3・26、27)、七月からは一部停留所を廃止し、八月からはガソリン車に代わって木炭車の運転を始めた(第一二回電気軌道事業成績調書)。この統制はバスを中心に影響が大きかった。その後は路線やバス台数の縮減や営業時間の短縮により(北タイ 昭16・3・27、30など)、市民の足に大きな影響を及ぼした。
 さらに戦局が進むにしたがって、電車も一部停留所を廃して電力の節約を図るようになったり(道新 昭17・12・4)、無座席車の運行を開始し、増車していった(昭和十八年札幌市事務報告、道新 昭19・9・17など)。従業員不足になった市営電車に、「市民の足は市民で守る」などのスローガンのもとに、未就職女性や女給、女子学生など一般市民が動員された(道新 昭18・3・17、19、19・1・22など)。