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『展望』の創刊

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 大正十二年四月、札幌展望詩社から詩・評論を主にした月刊誌『展望』が創刊された。編集発行は栗生宮治(美野路)で、創刊号に川路柳虹の詩「」のほか、澤ゆき子、泉成淵子、館美保子、山口牧声、奈良岡昻、深井歌郎、加藤牧人の詩が発表されている。本誌の創刊は大正十二年一月に終刊した川路柳虹の第一次『炬火(たいまつ)』のあとを受けて、在道のメンバーで刊行されたようだ。三号から六号まで柳川柳葉訳の「宗教詩人としてのポール・クローデル氏」(ド・トンケデック作)が連載されており、六号からは昭和に入ってから活躍が目立つ相川正義の詩が毎号発表されている。風間直得、木村十九也、佐々木夢人、笹内寅雄が新たに加わって、大正十三年頃まで刊行された。抒情詩が中心で、東京を中心に流行していたモダニズムの影響は少ない。『展望』の栗生宮治、相川正義は、大正十四年六月創刊の詩と版画の雑誌『さとぽろ』に参加した。大正十一年に北大予科に入学した外山卯三郎は、村山知義の影響を受けて『さとぽろ』四号(大14・9)に前衛詩「都市交響楽詩」発表し、『北大文芸』九号(大15・1)にも舞踊詩「瀕死の魂」を発表している。
  瀕死の魂
花、リボン──。
下駄、紋附、元結
23 688 香水
  ──学位があるのですよ──
0RR 海老


写真-6 『展望

 外山の詩は北海道における前衛詩の先駆であり、ダダイズムやシュールレアリスムを持ち込んで北海道の詩壇に新風を起こした。
 大正十五年十二月、短歌と詩の研究誌というかたちで『』が蓮沼緋沙志、水野義一によって創刊され、昭和五年に『北土文学』と改題された。大正十五年は四月にアンソロジー『全北海道詩集』(相川正義編)が刊行され、十月には札幌で「詩人祭」が開催された。