オリンピックの開催準備を最優先した昭和四十三年度予算は、一般会計二七七億円をはじめ、特別、企業会計を含んだ総額は対前年度比二五パーセント増の五〇四億円となった。
まず一般会計では、総務費に属するオリンピック競技場施設費として、美香保のアイスホッケー場建設費五億四〇〇〇万円(総工費七億八〇〇万円)など八億円を計上した(総務費総額一六億八〇〇〇万円の半額 表10)。しかし文部省の管轄するオリンピック関連事業費は予定の財源が確保できなかったため、オリンピック関連の道路用地の取得については、特別会計を新設して、一〇億円の基金で道路用地の先行取得を実施することとした。また地下鉄建設事業として、市債を財源に開発費九億一〇〇〇万円を計上した(道新 昭43・1・18)。
美香保競技場の他に市が建設した競技施設は、月寒屋内スケート場(総工費一〇億三〇〇万円)、手稲回転・大回転競技場(八億四五〇〇万円)、宮の森ジャンプ競技場(三億七四〇〇万円)、藤野リュージュ競技場(一億六〇〇万円)であり、四十三~四十六年度予算における財源は、各年度で国庫補助金が約七〇パーセント、道補助金と市債がそれぞれ一三~一五パーセント、一般財源が四パーセント~九パーセントという割合になっていた(各会計予算説明書、十二期小史)。
当年度一般会計予算の二〇パーセントを占める土木費は、道路舗装、除雪、交通安全施設費を中心に大幅な伸びを示すとともに、民生費では、軽費老人ホーム(四十四年開館)や保健所の建設費が伸びた。教育費では、小・中学校七校の新設が決まった。
この年度から特別会計の伸びが目立つようになる。まず、駅前通整理会計が約二倍となったのをはじめ、土地区画整理会計が四〇パーセントの伸びを記録した。また本年一月から世帯員(家族)の七割給付を実施した国民健康保険会計が三四パーセント、水道会計も豊平峡ダムの建設によって三四パーセントも伸びた。また国保料は一八・五パーセントの値上げ、水道事業も対前年度で九億四〇〇〇万円の増加で、料金の値上げを前提に豊平峡ダムを利用する水道建設などを行うこととなった(表11、道新 昭43・1・24)。
四十四年度予算の総額は六六六億三〇〇〇万円に達し、対前年度伸び率も三二パーセントとなった。予算編成にあたって原田市長は、基本的な編成方針として、①「建設五年計画」の遂行、②オリンピック関連事業の推進、③教育・福祉行政の充実を打ち出した。また当年度の予算上の重点事項としては、①市民生活の利便と能率の向上策として、市道の整備、歩道の造成、除雪体制の強化、地下鉄南北線の建設着手、②市民生活の安定と福祉向上政策として、公営住宅や軽費老人ホームの新設、生活保護費の増額、③生活環境の改善策として、上下水道事業の拡充と塵芥焼却炉の新設をそれぞれ挙げた(昭44一定会議録)。
具体的な新増設経費としては、一般会計では、オリンピック競技施設の建設費(八億二〇〇〇万円)と市庁舎の建設費(一〇億円)の計上に伴って総務費が二八億円と六六パーセントもの増加を示すとともに、土木費も同じくオリンピック関連道路工事費を含めて八八億円と五四パーセント増加した。さらに高速軌道会計を新設して、全額起債によって地下鉄の着工を始める事になった他、オリンピックのための道路用地の先行取得会計が三〇パーセントの伸びを示して大きく膨張した(表10・11)。このうち、競技場建設費においては当年度から一般財源が登場するが、やはり国庫補助金がかなりの比重を占め、しかもこの比率は、競技場がすべて完成する四十六年度まで一貫して変わることがなかった。
結局、「建設五年計画」の遂行に伴う四十四度の予算経費は、各会計をあわせて三五三億円で当年度一般会計予算の半額を占め、同計画は発足から三年を経過した当年度で、八〇七億円を消化することとなった(消化率四四パーセント)。またこの財源は、市税や補助金の他、起債一五八億円にも依存した(道新 昭44・2・8)。
四十五年度予算編成の編成方針は、原田市長によって四十五年二月の第一回定例議会で説明されたが、その重点項目は、①「五年計画」の推進、②オリンピック対策の推進、③公害防止、交通安全対策など生活環境の改善、④児童、老人福祉対策の強化であった。さらに板垣助役が三月の定例市議会で予算案の説明を行い、①の「五カ年計画」の執行率は本年度で七四パーセントになり順調な進展ぶりであること、②のオリンピック対策としては、ジャンプ台やスケート施設、回転競技場が当年度で完成するとした。また③の具体策としては、上下水道や清掃事業の拡充、煤煙防止策の強化、防護柵や横断歩道橋の新設、④としては、卸売市場の拡充、生活保護費の増額、乳児保育所と福祉事務所の新設等を挙げた(昭45一定会議録)。
以上の方針を踏まえて編成された四十五年度予算は、総額一一九一億四〇〇〇万円とついに一〇〇〇億円の大台に乗り、対前年度伸び率は三三パーセントと引き続き高い伸び率を記録した。
まず一般会計では土木費が六〇パーセントもの伸びを示し、歳出比が三〇パーセントを超えた(表10)。歳入面では、市税は対前年度で一八パーセント増加するが、歳入全体に占める比率は四〇パーセントを割り、逆に国庫支出金、起債、地方交付税がそれぞれ増加し、国からの助成が一段と強化されたことがわかる。このうち今年度の起債額は二四九億円で、地下鉄事業が四三億円を占めた。その他、市債財源事業としては、公営住宅六億四〇〇〇万円、義務教育施設六億三〇〇〇万円、市庁舎建設六億円などがあり、市債の残高は四十五年末で六九二億円となった(道新 昭45・2・7、2・15)。