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農業の実習は別つて2種として居(お)りますが、一は水田の実習で一は畑の実習であります。水田の実習地
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は西筑摩郡役所前にある反別3畝15歩の土地を充てゝ居ますが、此地は元来田なりしを、近年畑として使用し来たりしを以(もっ)て地盤粗鬆(そそう:あらくすき間があること)なるが為(た)め、水持ち悪しくして往々(おうおう:くり返し起こるさま)乾燥するの憂あり。去る4月28日、苗代の整地をしまして皆丹尺(注36)苗代として折衷苗代(注37)と水苗代(注38)の2種とし播種しましたが、其種類・期日・種子分量・選出産地等は左の如(ごと)し。
折衷苗代の分
播種月日 種類 分量 産地
4月28日 見帰坊主 3合
4月28日 上州 3合
4月28日 白櫛田 3合
水苗代の分
4月29日 大宝 4合 田立村
同 川合坊主 3合 福島町
同 木曽錦 3合 木祖村
同 見帰坊主 3合 福島町
同 上州 3合 長野県農事試験所
同 関州 3合 田立村
同 大和錦 3合 福島町
同 よしだ 3合 木祖村
同 甲州 3合 大桑村
同 三島 3合 大桑村
同 渋さらい 3合 木祖村
同 白櫛田 3合 長野県農事試験所
同 栃木 3合 木祖村
同 野沢早稲 3合 長野県農事試験所
同 神田坊主 3合 大桑村
2種類即ち折衷、水苗代共4月28日、29日の両日を以て播種したり。其後ち6月7日本田を踏み、同8日再び之れを踏みて整地して、又丹尺形に間隔5尺宛に区切りて各種類を植え付けたり。其種類により甚だしく分蘖(ぶんげつ:注39)したるものは2本より3本4本5本6本位迄あり。之等(これら)の苗は播種後本田に移植する迄に何れも40日を経過したるものなり。
畑実習地は本校北側に接したる反別4畝28歩の地を以て充てゝ居ますが、今其地に栽培したるものは左の如し。
播種月日 種類 産地
4月15日 大莢豌豆 仏国(フランス)
(オオサヤエンドウ)
4月28日 大越瓜(注40)
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同 南瓜(カボチャ)(砂川)
同 同 (縮緬)
5月1日 午房(注41) 地方種
同 同 滝川
5月2日 菖苣(注42)
5月3日 夏大根
5月4日 藷薯(ショショ:注43)
5月8日 扁蒲(ユウガオ)
5月9日 菜豆(インゲンマメ) 札幌
同 下仁田葱(シモニタネギ)
同 新早生(シンワセ)菜豆
5月10日 里芋
5月18日 甘蕪(注44)
同 同
5月20日 白大豆(シロダイズ)
5月22日 大麻(タイマ:麻のこと) 北海道
畑作物は此外に蕪菜(カブナ)ありて皆充分の生長をなしつゝあり。而して是等実習地に於ける害虫駆除・施肥・保護等に関する諸般の作業は、皆生徒より当番を定めて順次之れが任に当るのであります。