地誌・風俗書については、右の如水の著のほか、松浦武四郎の『蝦夷日誌』なども貴重であり、市川十郎(高崎藩の兵学者市川一学の子)の『蝦夷実地検考録』も『箱館夜話草』と双璧(へき)をなすものであり、また前田夏蔭の『蝦夷志料』を補うものであった。弘前の画人平尾魯僊(名は亮致)も安政2年藩用で来箱し『松前紀行』『箱館夷人談』『洋夷茗話』を著わして当時を彷彿(ほうふつ)とさせる資料を残している。このほか米国使節ペリー提督来航時の『ペルリ提督日本遠征記』や、英国公使オールコックの『大君の都』なども、箱館の様子が興味深く描かれている。また名主小島又次郎はペリー行入港の模様を詳細に記録し、図画まで挿入して『亜墨利加一条写』としているが、実に貴重な文献である。