郷土の地名について
北海道の地名の殆どは先住民族アイヌの人々の呼名によるものである。郷土のフラウェン・シリキシラリナイ・メノコナイ・オタハマ(浜は和名)・オフイ・ネトナイ・イソヤエイサンなどがそれである。江戸時代末から明治に、これらは訛化したり音(おん)を漢字に当て嵌めたりして尻岸内・女那川・古武井・根田内・磯谷・恵山などと表記されるようになったり、フラウェンは日浦、オタハマは日ノ浜のように種々の理由で和名に変えたものもある。また、澗や浜中のように郷土の先人がつけた地名もある。明治に入り、これらの地名に加え「昆布採取の浜の区画」「土地払下申請の地名」など、土地の人の固有の地名も加わり、明治39年2級町村施行時に制定した旧字名は多くの地名が存在した。
字名・地番改正の必要性について
村役場は行政の能率化を図るため(例えば土地の贈与・売買・税の賦課などが繁雑となる)地名・地番の整理が必要になった。そこで、村会内に字名地番臨時委員会を組織、これには村内の各方面(有識者など)の代表も加え、昭和7年11月22日『尻岸内村字名地番改正協議会』を開催、村会・村内の理解を得て道庁に申請した。道庁は翌8年3月31日第342号で告示(認可)した。
このようにして昭和8年4月10日から、新しい字名(現行)・地番が実施された。
近年、字名・町名などの改称については、自然の特徴を表現してるアイヌ語地名を生かすべきである(アイヌ語研究家山田秀三氏ら)、あるいは旧地名・町名(和名)などの歴史性(命名のいわれなども)を大切にすべきであるといった批判的な意見や、敢えて旧地名・町名に戻す傾向も見受けられる。いずれにしても熟慮を要する事項であろう。
『改正された字名』 昭和8年4月10日施行
新字名 新字に編入された旧字(一部に通称地名もある)
日浦 日浦、日浦(吉畑ノ一部・上の崎仕切・獅子のツネ・川ノ上・村中ノ沢・冷水・沖澗・ノサキ・浜中・浜中村内・ウシノ沢・中川野・下山ノ上・前山ノ上沖・スス沢・カラスガウタ・カカリ澗・上堤ノ出口・前浜・ゴロタ浜・布苔浜・サバキ・ワシノ沢)、村中、武井泊沢の一部、獅子のツネ、支日浦カカリ澗
吉畑 日浦の一部、日浦(吉畑の大部分・武佐ノ沢の一部・ムサ)武井泊の一部、武井泊沢の一部
豊浦 武井泊の大部分、武井泊沢の一部、横澗、澗の一部、吉ノ沢
大澗 澗の大部分、澗宮ノ後、宮後、宮ノ沢、村中、澗ノ沢、サツカイウタ沢、武井泊の一部
中浜 澗の一部、浜中、女那川の一部、フリキの一部
女那川 女那川(メナ川)の大部分、横澗、浜中フリキ、フリキの一部、ヨリカエウタ、古武井ヲツケの一部
川上 女那川の一部、一本橋、炭釜
高岱 古武井(ムサノ沢・ヲツケの一部・浜中の大部分・カラ川・楢木岳・逆川・石倉・中道・カラ川白髪爺沢・ナガキノ沢)、根田内菅谷地、根田内野
日ノ浜 古武井の一部、サカサ川、古武井(ヲツケ・ヲツケ浜中・逆川・ナカキノ沢)
古武井 古武井の大部分、根田内の一部
恵山 根田内、根田内(野・白浜野・サキ野・磯谷・鷲の沢)
柏野 根田内野の大部分、根田内の一部、恵山岳
御崎 根田内磯谷
日和山 古武井の一部
*註( )の表記は( )の前の地名を省略している。
例、日浦(吉畑ノ一部・上の崎仕切…)は日浦吉畑ノ一部・日浦上ノ崎仕切である。