南茅部八景

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奇岩聳える変化に富む古部・木直海岸から穏やかな渚の続く尾札部臼尻への海岸や溪谷など試みに八景を推選する。
茅部八景
   大滝落雁(おおたきらくがん)  古部  古部大滝の落雁。赤壁(せきへき)に天より落ちて蒼海に飛沫
                      する大瀑布、古部の大滝。雁(かり)の一群(ひとむ)れが渡っ
                      ていく。
   弁天帰帆(べんてんきはん)   臼尻  弁天島の帰帆 朝夕、弁天島の漁港に大小の出船入船が賑わ
                      う。指呼(しこ)のまに羊蹄を望む。沿岸十里の景。
   万畳晴嵐(まんじょうせいらん) 磯谷  万畳敷原野の晴嵐。泣面山の役方、開拓の秘話をのこす万畳
                      敷原野あり。高原の草木一時(ひととき)に生命(いのち)蘇え
                      る。
   立岩暮雪(たていわぼせつ)   木直  大梶立岩の暮雪 奇岩海中に聳(た)ち、巌頭の松柏海人(う
                      みびと)の心を慰むる。雪降る沖に海鳥(うみどり)が啼き静
                      かに暮れる。
   歌浜秋月(うたはましゅうげつ) 大船  歌浜稲荷の秋月 豊饒なる海が暮れて澄明な空に月出づる。
                      歌浜の社(やしろ)と水松(おんこ)の樹影が月の光に映える。
   山中夜雨(さんちゅうやう)   川汲  川汲山中の夜雨 早春えぞ山桜咲き、土方軍の往きし峠路あ
                      り。琵琶滝の傍(かたわ)らの湯宿、夜来の雨に眠る。
   念寺晩鐘(ねんじばんしょう)  安浦  称念寺の晩鐘 精進川伝説の村に一寺あり。鐘韻潮騒(しお
                      さい)にしみ静かに波頭に消える。
   黒鷲夕照(くろわしゆうしょう) 尾札部 黒鷲八木浜の夕照。黒鷲岬の碑(いしぶみ)に刻まれた漁業の
                      歴史。みはるかす海辺十里の岸、落日万象を染める。
 
 八景は近江八景が有名で、そもそもは中国の瀟湘(しょうしょう)八景に模したものである。
 江差に八勝あり、函館にも八景がある。
 
【資料】
 江差八勝
 弘化三年(一八四六)冬、来江中の文人墨客らにより江差八勝として唱和されたものである。
  篠山暁雪(ささやまぎょうせつ)   頼醇(らいじゅん)  頼山陽の第三子三樹三郎号鴨崖
  法華寺霜鐘(ほっけじそうしょう)  釋日袋(しゃくにったい)  陸奥の人 白袋 号狸庵
  鷗島煙檣(おうとうえんしょう)   西川雍(にしかわよう)  渡島の人 山陽の門人 号棋山
  大澗遊鷗(おおまゆうおう)     梁瀬存愛(やなせぞんあい)  渡島の人 存愛 号馬蓼
  乙浦漁火(おつほぎょか)      高野慊(たかのけん)  渡島の人 慊 号馬十
  愛宕観瀾(あたごかんらん)     原元圭(はらげんけい)  (不詳)
  豊橋涼月(ほうきょうりょうげつ)  齋藤観(さいとうかん)  渡島の人 観 号鷗州
  津花夜市(つばなよいち)      本田覃(ほんだたん)  伊豆の人 覃 号豆山
 
 函館八景
 明治四五年六月九日の函館新聞に掲載された投書によるものに、函館八景は、往時の商都函館の文化の粋を感じさせ興味深いものがある。
 函館八景
  立待岬 秋月
  高龍寺 晩鐘
  宇賀浦 晴嵐
  桟橋  夕照
  山背泊 帰帆
  五稜郭 落雁
  碧血碑 夜雨
  駒ヶ丘 暮雪