チャートという岩石は、海に住むプランクトンの一種である放散虫(ほうさんちゅう)が死んだ後に、その死骸が海底に降り積もってできると考えられている。放散虫の骨格や殼はシリカ(二酸化ケイ素)からできているので海水に溶けにくく、長い間かかって、その死骸が海底に大量に集積し、固結するとチャートの層となる。赤道太平洋のようなところでは、放散虫などのプランクトンが大繁殖し、砂や泥などが堆積しにくいので、低緯度の深海底には放散虫の死骸の密集した泥が堆積している(斉藤、一九七九、日本海洋学会、一九九一)。そうした陸地から遠く離れた所で、珪質プランクトンの死骸から形成されたチャートの層が海洋プレートの移動とともに運ばれると、付加体堆積物中に取り込まれて大地の一部を構成するようになる。
海洋プレートが運んでくる堆積物はチャートだけとは限らない。海中に懸濁(けんだく)している泥のような細かな粒子は、たえず海底に向かって降り注ぎ、泥岩層となる。実際、海洋プレート上で目にみえる厚さとなるまでには、チャートと同じように大変長い時間がかかる。したがってこのようにして形成されたチャートや泥岩の地層は、堆積に要した時間は長いものの、それほど厚くはない。しかし、それが陸側へ付加するときに、何度もはぎ取られて繰り返し積み重なるために、最終的には非常に厚い地層となるのである。
遠く離れた深海底に堆積してできた地層が、どうして座頭石のような陸地の奥まった場所に露出することになったのだろうか。また、どうして変形の激しい、メランジの地層となるのだろう。それには付加テクトニクスと呼ばれる、海洋プレートの沈み込みに伴って海溝の陸側斜面に形成される、堆積物のくさび形の集積体(付加体)に由来すると説明できるようになってきた。