昭和三十八年(一九五八)より弘前市教育委員会が実施した、
岩木山麓の開拓事業に伴う事前の
埋蔵文化財緊急発掘調査の一環として、翌年には
岩木山東麓の
大森勝山遺跡が調査され、大型の
竪穴住居跡・
環状列石などとともに
旧石器(三〇三頁図版、資1四五九頁・図6)を発見した。
石器は珪質頁岩(けいしつけつがん)を原材としており、ナイフ・彫刻刀・削器・スクレパー(掻器(そうき))など一〇点の剥片(はくへん)
石器である。調査中に周囲を丹念に調べたが、
石器製作時に出るフレーク(剥片)やチップ(石屑)がみられぬため、狩猟時におけるキャンプ跡ではないかとも考えられている(11)。
青森県は、他県などに比べて
旧石器の発見は少ない。しかし
旧石器時代から次の
縄文時代へ結び付く、漸移(ざんい)期の遺構・遺物が発見され研究者の間で注目を集めている。その例を一~二紹介しよう。
弘前市大森勝山遺跡出土の旧石器(岡田康博実測)