国家総動員体制下の商工業

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日中戦争の開始後、経済は戦時色が強まり、昭和十三年(一九三八)には国家総動員法が制定され、また商店法も制定された。また、弘前経済警察が活動を始め、同年に商店法制定記念の商店祭が、弘前経済警察との共催のもとに開催された。また、大正七年以来実施してきた観桜会の実施も危ぶまれたが、「時局との催し」として開催された。
 昭和十四年(一九三九)には、国家総動員法第四条の規定に沿った国民徴用令が制定され、国民が軍需産業に徴用されることになった。徴用される対象となる人間に関しては次のような規定があった。
一、現に技能を有って居て其の技能を活用して居ない者を活用するようにする
一、特殊技能を有って居る者を徴用する場合は其の技能を生かす様な仕事にのみ徴用する
一、不急産業から先に徴用する。不急産業でも其の産業が立ちいかなくなることのない様に考慮する
一、身体強健で系累の少い者を先にする
(『青森県職業情報』二一七)

 弘前国民職業指導所はこれらの基準に従って候補者の名簿を作成し、順に徴用した。当初は技能を持った者が選抜されたが、次第に商店街の従業者が多く徴用されるようになっていった。これは不急産業と見なされたためであると思われる。
 戦争が長期化すると、商工業に対する統制が一段と強まった。特に重要な商品については直接統制がなされ、配給が実施された。また、そのための需要調査も行われた。工業用縫糸の需要調査は次のようになされた。
  青商第一四七七号
 昭和十五年八月十日    青森県経済部長
 各市町村長殿
  工業用綿縫糸使用実績並需要量調査ニ関スル件
 従来自治統制ニ依り配給致居候工業用綿縫糸ニ関シテハ申請並ニ配給ニ徹底セザル向有之様思料セラレ候條今般是ガ配給基本決定致度候ニ付テハ来ル八月三十日迄ニ左記要項ニ従ヒ貴市町村内ノ需要量及実績量ヲ御提出相成度此段通牒候也
 追而別表(一)ニ付キテハ別途当方ヨリ調査済ニ付別表未加入者ニ対シ御調査相成度申添候
 要項
 (一)工業用綿縫糸トハ製品作製用糸ニシテ修繕用ハ含マズ(例端切ヲ以テ袋物製作ニ必要ナル糸及生地ヲ以テ前掛割烹衣、作業衣等ノ製作用糸等)

 (二)調査業種ハ左記ニ依り分類ノコト
   (1)畳表製造業  (2)製縫業  (3)紐製造業  (4)天幕製造業
   (5)布帛製造業  (6)茣蓙、花筵製造業  (7)セメント袋製造業
   (8)皮革製品製造業  (9)洋服製作業  (10)授産場
  其ノ他必要製造業種別ヲ各別表ニ依り作製ノコト
   (別表略)
(『青森県報』二〇八四)

 昭和十五年(一九四〇)には、商業報国会が組織された。この商業報国会商業組合別に組織され、全体が県連盟にまとめられた。この組織化は同年十一月に完成した。また、県連盟は昭和十六年(一九四一)に、青森県商業報国会本部に改組され、知事が本部長となり、各警察署に支部が置かれた(前掲『弘前商工会議所五十年史』による)。