二十六年十月二十日付『東奥日報』は弘前相互銀行の発足を次のように伝えている。
弘前無尽の新飛躍 庶民金融界に一層の利便
弘前無尽株式会社はかねてから大蔵省に対し、相互銀行営業免許を申請中のところ、このほど認可となり、十月二十日から社名を「弘前相互銀行」と改めて新発足することになつた、弘前市内には青森銀行が本店を青森市に移してからは本店銀行が一行もなく、特産リンゴをはじめ、各種農産物の集散地として発展するには、その地方の特殊事情に精通し、かつ理解ある本店銀行を設立したいとの要望は、弘前市をはじめ周辺の中、南、西、北郡の各中小商工業者の切実な叫びであり、岩淵勉氏が弘前市長在任中も特にこの問題を取りあげ、青森市内の某銀行を誘致すべく地方の政治家と共に運動を起こしたこともあつたほどであるが、弘前無尽株式会社は一面においてこの要望に応えて立ちあがり、従来の無尽業務と共に銀行業務(為替業務を除く)までも取扱うことになつたのは、地方経済界に一新紀元を画したものとして、一般の歓迎を受けている(後略)
弘前無尽株式会社はかねてから大蔵省に対し、相互銀行営業免許を申請中のところ、このほど認可となり、十月二十日から社名を「弘前相互銀行」と改めて新発足することになつた、弘前市内には青森銀行が本店を青森市に移してからは本店銀行が一行もなく、特産リンゴをはじめ、各種農産物の集散地として発展するには、その地方の特殊事情に精通し、かつ理解ある本店銀行を設立したいとの要望は、弘前市をはじめ周辺の中、南、西、北郡の各中小商工業者の切実な叫びであり、岩淵勉氏が弘前市長在任中も特にこの問題を取りあげ、青森市内の某銀行を誘致すべく地方の政治家と共に運動を起こしたこともあつたほどであるが、弘前無尽株式会社は一面においてこの要望に応えて立ちあがり、従来の無尽業務と共に銀行業務(為替業務を除く)までも取扱うことになつたのは、地方経済界に一新紀元を画したものとして、一般の歓迎を受けている(後略)
(資料近・現代2No.四〇三)
昭和十八年、第五十九銀行を中心に県下銀行の大半が合併して青森銀行が誕生し、本店を青森市に置くと、弘前市には本店銀行がなくなった。だが、弘前に本店を置く弘前無尽が普通銀行とほとんど変わらない業務を行える相互銀行として発足したことは、りんごをはじめ、津軽地域における各種農産物の集散地である弘前市の金融を支える銀行として、地元商工業者に歓迎された。
弘前相互銀行発足時の役員は次のとおりである。
取締役社長 唐牛敏世
専務取締役 葛西弥六
常務取締役 斎藤友七
取締役 伊藤金蔵(非常勤)、竹内俊吉、唐牛 貞、舘山徳太郎、山口七郎、平野富蔵、正井清造(非常勤)
(前掲『弘前相互銀行五十年志』)
弘前相互銀行の営業区域は青森県下ばかりでなく、岩手県北(盛岡市、岩手郡、二戸郡、九戸郡)や秋田県北(大館市、能代市、北秋田郡、山本郡、鹿角郡)にまで行き渡っていた。また、本店は弘前市に、支店は青森市、八戸市、南津軽郡黒石町(現黒石市)・大鰐町、北津軽郡五所川原町(現五所川原市)・板柳町・金木町(現五所川原市)、西津軽郡木造町(現っがる市)・鰺ヶ沢町、上北郡三本木町(現十和田市)・野辺地町、下北郡田名部町(現むっ市)、三戸郡三戸町の県下全域、さらに岩手県盛岡市に置かれた(資料近・現代2No.四〇四)。
弘前無尽会社は相互銀行に転換して営業を始めるが、営業において集めた資金は次の規定にもとづき適正なる運用が図られた。
資金運用規定 改昭二七、三、二六
第一条(目的)
第二条(給付、貸付金の総額の限度)
第三条(現金の最低保有額の限度)
第四条(本部経費分担金制度の実施)
第五条(本部経費分担金の運用)
第六条(操作資金制度の実施)
第七条(操作資金の運用)
第八条(操作資金の運用申請)
第九条(本部預ヶ金制度の実施)
第十条(本部預ヶ金の運用)
第十一条(本部預ヶ金の返還)
第十二条(分担金、操作資金並びに預ヶ金の管理)
第一条(目的)
この規定は、営業所の業態を常時良好なる状態におき、以て本行全般の機能をたかめ、金融機関としての使命を果すを目的とする。
第二条(給付、貸付金の総額の限度)
営業所の給付、貸付金の総額は、掛金、定期性預金並に定期性預金以外の預金の合計額の百分の百を超えてはならない。但し、給付金の総額に就いては、相互銀行法第十二条の規定の適用を受ける。
第三条(現金の最低保有額の限度)
営業所は、支払準備として、相互銀行法第十三条に規定する金額と、掛金の百分の二に相当する金額との合計額以上の金額を、現金若しくは銀行預金として常時保有しなければならない。
第四条(本部経費分担金制度の実施)
営業所は、毎月十日現在の資金量の千分の二に相当する金額を本部経費分担金として、当月十五日迄に本部へ送金する。
不動産の購入並に諸税支払金は別途割当額を以て本部へ送金する。
不動産の購入並に諸税支払金は別途割当額を以て本部へ送金する。
第五条(本部経費分担金の運用)
前条の規定に基く本部経費分担金は、左の事項に限り運用する。
1、本社全体に関する諸経費(不動産購入並に諸税の支払を除く)
2、本部に於ける諸経費
1、本社全体に関する諸経費(不動産購入並に諸税の支払を除く)
2、本部に於ける諸経費
第六条(操作資金制度の実施)
営業所は、毎月十日現在の資金量の千分の二に相当する金額を操作資金として、当月十五日迄に本部へ送金する。
第七条(操作資金の運用)
操作資金は他の銀行への預ヶ金とし、左記事項に限り使用する。
(一)営業所の応急支払
(二)有価証券(日銀担保適格)の購入
(三)取締役会に於て特に必要と認めた事項
(一)営業所の応急支払
(二)有価証券(日銀担保適格)の購入
(三)取締役会に於て特に必要と認めた事項
第八条(操作資金の運用申請)
前条(一)の規定により営業所が本部より応急援助を受けようとするときは、当該店長は直ちに支払に要する金額及び其の事由並びに償還計画を書面により申請しなければならない。
第九条(本部預ヶ金制度の実施)
毎月十日現在に於て、本部経費分担金及び操作資金を控除したる後の営業所の現金、預ヶ金の合計額が、第三条規定の支払準備最低保有限度額に掛金の百分の五を合算したる金額を超過した場合は、その超過金額をその月十五日迄に本部に現送して本部預ヶ金とする。
第十条(本部預ヶ金の運用)
本部預ヶ金は、日本銀行預ヶ金若しくは重役会の決議により、日銀見返となるべき有価証券を購入するものとする。
第十一条(本部預ヶ金の返還)
本部預ヶ金は、支店の請求により直ちに本部より現送するものとする。
第十二条(分担金、操作資金並びに預ヶ金の管理)
本部経費分担金、操作資金並びに本部預ヶ金は社長自ら之を管理する。
本規定は昭和二十七年三月二十六日、取締役会に於て定め、即日之を実施する。
本規定は昭和二十七年三月二十六日、取締役会に於て定め、即日之を実施する。
(資料近・現代2No.四〇六)
写真119 弘前相互銀行本店