観光協会の事業計画

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新生なった弘前観光協会はどのような観光事業を展開しようとしたのだろうか。昭和三十二年度の事業計画書を基に紹介していこう。まず基本方針は「全国三十五観光都市の一として東北では仙台に次ぐ文教観光都市」と自覚し「これを世に広く紹介して外客の誘致に努めねばならない」とある。観桜会では多数の外来客があるので、「年間を通し外客の誘致に努めると共に受入態勢の確立」を期さればならない、それが協会の使命であり設立目的だとしている(資料近・現代2No.五八七参照)。
 昭和三十二年度の目標には、観光思想の普及徹底を計り、観光資源の調査と保存開発に協力することをまず挙げている。そのほか観光の宣伝紹介、施設の整備促進、郷土文化の育成や観光土産品の改良指導、観光事業機関との連絡協調を重視している。しかし何といっても観光客の誘致接遇に努め、全市的観光行事の開催態勢を整えるという項目が注目されよう。このようにして協会は、これらの目標に応じた事業計画を展開することになった。パンフレット五〇〇〇部、リーフレット一万部、ポスター一〇〇〇部など、宣伝印刷物を刊行することや、観光座談会や観光ドラマ、歌の放送も挙げている。いずれの事業も現在、実際行われている事業であり興味深いものがある。ちなみにこの年の観光行事日程表を挙げておこう。
  四月上旬…観光ドラマ放送、観光弘前小唄放送、観光弘前伝説放送
  四月中旬…観光民謡放送、サービス講習会、観光弘前写真展、観光関係者協議会
  四月下旬…観光案内所設置、観桜会、姫コンテスト、芸者手おどり、民謡大会、
       登山ばやし大会、バスガイドコンクール
  五月上旬…仏舎利花まつり
  六月上旬…新観光資源調査
  七月上旬…カッパまつり
  七月下旬…広告カーニバル、納涼花火大会
  八月上旬…ネプタ祭、盆おどり大会、灯籠流し
  九月上旬…祭りばやし行進、羅漢祭
  九月中旬…お山参詣
  十月中旬…りんご祭、りんご狩
  十一月上旬…紅葉祭、県下菊花展覧会
  十一月下旬…観光誘致団編成(北海道)、みやげ品新作展覧会、観光座談会
        全国観光ポスター展覧会
  二月上旬…雪の芸術祭、節分豆まき
  三月上旬…観光土産品展示会

写真227 田園を行くお山参詣の列

これらの行事予定を見ると、観桜会を中心として春に最大のイベントを行い、雪に閉ざされる冬から春にかけては、調査などの準備活動を計画している。弘前市の観光政策は春を中心に計画されていたといえる。
 これらの行事のなかには、すでに現在では実施されていないものもある。もちろん「ネプタ祭」や、現在さくらまつりと呼ぶ「観桜会」は、今も弘前市を代表する観光事業である。しかし近年ではお山参詣の人数も減るなど、かつての観光行事もずいぶんと様変わりしている。新たな時代には新たな観光事業を展開する必要がある。それに伴う努力と工夫は、弘前市の観光事業が開始され始めた当該期の事業展開に学ぶところが多い。