これは、前述の趣味・愉楽とは性格を異にする結社団体で、親睦・懇親をその目的に据えている。たとえば、同郷出身者あるいは同窓生といった強固な結びつきを媒介としたものや、さらには札幌といった新しい地域社会で新たな結束を求めようとする意識から芽生えていったものといえよう。
周知のとおり札幌は幕府時代から居住していた人びとはほんの少数であり、ほとんどが明治維新後本州以南よりの移住によって形成された集合体である。それゆえ、本能的かつ自然発生的な同郷意識を重要視した社会生活を営んできたといっても過言ではないであろう。それは同郷者がひとつの核となって市街や村に集団で移住してきた経緯にもよるものでもある。たとえば、風俗・習慣等を同じくする同郷者にとって冠婚葬祭がまず顕著な例ではなかったろうか。しかし、それがやがて近代的人材養成のための学校を巣立った同窓生の結社団体や、前述の新たな地域社会札幌を墳墓の地とする者同志の連帯を求める結社団体も生まれていった。ここでは、そういった結社団体を同郷・同窓・その他の三つに分けて当時の新聞等から拾いあげ列挙するにとどめたい(表14)。
会 名 | 創立・開催日 | 備 考 |
松友会 | 26・1・15 | 旧松前藩出身者の親睦。 |
青森県津軽出身者親睦会 | 20・12・3 | 二十九年青森県人懇親会。 |
岩手県人親睦会 | 20・9・2 | 二十五年岩手県並南部人親睦会。 |
仙台親睦会 | 12・ | 毎年五月中島遊園地にて藩祖祭。 |
秋田県人懇親会 | 22・1・15 | 二十七年秋田北海協同会発会。 |
米沢人親睦会 | 22・11・3 | 二十八年第一回山形県人大親睦会。 |
旧会津人親睦会 | 21・10・8 | |
奥羽六県青年懇親会 | 24・11・3 | |
茨城県人懇親会 | 26・ | 第一回を小樽で。 |
栃木県人懇親会 | 31・10・3 | 阿由葉勝作外一人来礼を機に開催。 |
群馬県人懇親会 | 24・8・16 | 高津代議士来礼を機に開催。 |
千葉県人懇話会 | 32・7・7 | |
東京人親睦会 | 26・2・1 | 第一回。発起人前野長発、黒柳喜三郎。 |
関東人懇親会 | 29・4・5 | 発起人伊藤辰蔵、前野長発ら一〇人。 |
北越親睦会 | 15・1・15 | 第一回。二十年七月第二回。 |
富山県人大懇親会 | 27・1・13 | 在小樽・札幌。三十二年富山県同志会発会式。 |
石川・富山両県人親睦会 | 20・9・4 | 二十四年加越能三州人親睦会。 |
石川県人懇親会 | 29・1・26 | 発起人柴田与次右衛門外一七人。 |
福井県人大懇親会 | 23・1・25 | 発起人藪惣七、南部源蔵、岩崎粂三郎ほか。 |
山梨県人懇親会 | 32・9・23 | 山梨県郷友会規則。 |
信濃有志懇親会 | 22・2・2 | 信濃会設立。 |
岐阜県人懇親会 | 27・2・10 | 発起人犬飼吉也、高橋日出逸ほか。 |
愛知県人懇親会 | 26・1・8 | 尾三協会設立。 |
三重県人懇親会 | 26・2・1 | 幹事土屋徹、加藤英一。 |
江州人大懇親会 | 26・2・19 | 発起人岡田佐助、宇野保太郎ら。 |
京都府有志懇親会 | 24・8・25 | 発起人横田万寿之助、中井三次郎。 |
大阪府人懇親会 | 24・8・10 | |
和歌山県人親睦会 | 22・9・11 | 大洪水罹災者救恤義捐金募集。 |
鳥取県人懇親会 | 30・2・6 | 村田不二三、小谷熊造。 |
島根県人送別会 | 30・3・21 | 発起人高岡直吉。北海道製麻福田氏送別会。 |
岡山県人春季大懇親会 | 25・3・28 | 発起人橋本左五郎。 |
広島県人懇親会 | 30・4・5 | 和田郁次郎、河合保四郎ら。 |
山口県人懇親会 | 21・1・5 | 高州尚友、岡勇。 |
阿淡人懇親会 | 22・4・21 | 第二回。阿部宇之八。 |
讃岐同郷会 | 25・2・27 | のち香川県同郷懇親会と改称。 |
愛媛県人懇親会 | 28・4・14 | 北水協会井村陳政、札幌麦酒会社渥美周恒。 |
高知県人大懇親会 | 32・9・30 | 発起人土居、福留、武市、大谷、坂本ら。 |
四国人懇親会 | 29・3・7 | 発起人瀧本五郎、阿部宇之八。 |
福岡県郷友会 | 23・ | |
佐賀県人懇親会 | 29・1・18 | 肥前協会北海道支部となる。 |
熊本県人親睦会 | 24・1・25 | 第一回。発起人林文次郎。三輪光儀、出田平馬。 |
大分県人親睦会 | 24・8・2 | |
宮崎県人親睦会 | 32・12・29 | 発起人谷山一介。 |
西郷隆盛の祭典 | 22・ | 二十四年故南洲翁十五年忌。 |
会 名 | 創立・開催日 | 備 考 |
札幌農学校同窓会 | 20・ 5・ | 幹事佐藤昌介。 |
慶応義塾同窓会 | 24・ 5・30 | 東京庵にて同窓会。 |
成立学舎同窓会 | 26・ 1・22 | 旧実業舎内で同窓懇親会。 |
北鳴学友会 | 27・ 1・20 | 文学・同窓会の両会併合設立。 |
東京専門学校同窓会 | 30・10・10 | 東京庵にて春季大会。 |
東京法学院同窓会 | 31・ 8・18 | 北海道支部発会式。 |
明治法律学校同窓会 | 32・ 1・28 | 校友親睦会。 |
会 名 | 創立・開催日 | 備 考 |
有志懇談会 | 20・ 3・ | 市中有志発起。北海道に関する意見。酒席、自由談話。 |
北友会 | 24・ 3・ | 親睦、天災、病死の互助。 |
北海道倶楽部 | 24・ 6・ 7 | 地方公共の利益。発起人対馬、南部、新田、藪ら。 |
札幌協会 | 21・ 6・ | 親睦、協和、風儀矯正。 |
札幌倶楽部 | 22・ 3・ | 大島太郎、谷吉三、土田政次郎ら。 |
官民懇親会 | 26・ 2・17 | 札幌を墳墓の地と定むる人。発起人谷、後藤、土田、今井ら。 |
官民倶楽部 | 30・10・10付 | 和親談合と図書館設立を目的。 |
親睦互救会 | 30・ 7・18付 | 月二十五銭積立て、親睦互助。 |