改正公布の一、二級町村制度は施行後幾度か小改正されたが、大筋の内容に変わりなく、昭和二年(一九二七)の大改正に至るまで北海道の町村を成り立たせる基本法規として、地域社会の形成発展に基底的役割を果たすことになる。
一級町村制は八章一一三条が改正によって八章一二四条となり、内容的には北海道区制に近似することになったので、府県の「町村制」との差異も小さくなったといえる。この制度に基づく町村は法人と定められ(第二条)、一応国家機構から独立して存在するとはいえ、内務大臣、北海道庁長官、北海道庁支庁長の強い監督を受け、統治の末端機関としての役割が大きかった。柴田啓次の研究から、この制度の主要な内容をあげると次のとおりである。まず執行機関については、町村長と助役は町村会で選挙して道庁長官の認可を受け、四年任期である。収入役のほか収入役代理者を一人置くことができ、書記と附属員は町村会の議決で人数を決め町村長が任免する。町村長以下の給料等は町村費となるから町村会の議決と道庁長官の許可が必要であった。議決機関として町村会が設置され、その議員定数は人口段階別に八~二四人と定められた。議員は等級選挙制を原則とし、任期六年で三年ごとに各級半数改選され、町村会の議長は町村長である(柴田啓次 北海道一、二級町村制度の変遷)。
二級町村制は八章一〇六条が全文改正によって七章七一条となり、内容的には「町村制」にくらべ多くの独自性を盛り込み、特に財務の安定措置に特徴があり、これにともない道庁支庁の監督は強いものとなった。法人として定められてはいるが、これを自治制度に含め得るのか、躊躇せざるを得ないほどである。鈴江英一の研究から、この制度の主要な内容をあげると次のとおりである。執行機関については、町村長は道庁長官の任免で、収入役と書記は支庁長によるが、助役は置かない。町村内の地域組織である各部の部長までも支庁長の任命により、町村長などの給料は地方費(道庁)から支弁される。町村の事情により支出の一部または全部を地方費によってまかなうことができるようになっていたので、道庁支庁の出先機関的色彩が強い。議決機関として議員定数四~一二人の町村会を設置するが、公民の制は設けず議員の選挙被選挙権のみを規定した。等級選挙制はなく、任期二年で全員改選となる。代理選挙人の資格、無効投票の緩和等により、選挙権を持つ有産者階層の少ない地域での選挙を成立しやすくした。町村会の議決事項に規則の制定はあるが、条例は作れない。規則と条例の差異は小さい町村において実質的にないためといわれた。また議事内容が軽易の場合に、議員の三分の二が同意すれば書面によって議決し得るようになっている。道庁支庁の監督権限が大きく、議決を取り消す処分について、もし町村会に不服があったとしても訴願は認められなかった(鈴江英一 北海道町村制度史の研究)。
これらの内容から、二級町村制は全文改正により一級町村制との差異を広げ、「町村制」との隔たりもまた大きくなったといえる。それだけに三十年公布の二級町村制にくらべ、旧来の戸長総代人制に近似する方向に進んだことになり、北海道の地方制度は、区制と一級町村制、二級町村制と戸長総代人制の両面を併存していくことになった。