ビューア該当ページ

ブリーダー牧場の概況

280 ~ 282 / 915ページ
 ここでは当時の雑誌記事から、酪農家への牝牛供給に大きな役割を果たし、また次に述べる酪農組合のリーダーの役割を果たしたブリーダー牧場の大正十四年の概況を示しておこう(道内各地方畜産業の現況)。
宇都宮牧場 (本場白石村大字上白石村、支場白石村字野津幌、分場豊平町大字月寒村字厚別) 斯界の元老宇都宮氏の経営に係り、明治三十五年の創業にして、ホルスタイン純粋蕃殖牧場なり。現在の飼養乳牛百余頭を産し何れも米国より輸入したる優良牛の血統にして、開設以来毎年種畜として各地に供給せるもの三十を下らず。しかして厚別分場は主として犢牛の放牧及飼料栽培地とし、また野津幌支場は昨年早春より建設に着手せるものにして、其の面積六十余町歩。各般の施設は欧米先進地に範を採り、以て理想の牧場たらしむることに努力しつつあるを以て、完成の上は啻に種畜生産牧場たるのみならず、模範農牧場として推奨さるるに至るべし。
極東煉乳株式会社軽川農場 (手稲村大字下手稲村軽川) 極東煉乳株式会社の経営にして、大正六年の創業なり。農場面積八百六十余町にしてホルスタイン純粋繁殖牧場たり。其の現在飼養乳牛五百余頭に達し、かつて本邦に於てアメリカ及びオランダより輸入したるものの内、成績優秀なるものを買収したると。次いで大正七年及び九年の両年に優秀牛の輸入したるものの系統にして、将来繁殖の乳牛一千頭増殖計画の下に着々進行しつつあるのみならず、之れが改良と能力の増進に務めたる結果優秀なるもの甚だ多く、種牛として内地及び満鮮地方に移出するもの年々相当数に達す。殊に是ら産乳を処理すべく札幌三島に練乳業を経営しつつあるを以て、今後の発展目覚しきものあるべし。
塩野谷牧場 (手稲村上手稲村) 塩野谷平蔵氏の経営にして、大正二年六月米国よりホルスタイン種の優良種牛十頭を自ら出張購入し帰朝と同時に創業したるものにして、爾来専心畜牛の改良と能力の増進に務め、現に優秀なるもの三十余頭を繫留し、其の生産牛は種牛として各地に移出され本道一流種畜牧場として定評あるのみならず、更に近く優秀種牛を米国より輸入することに決定せるを以て到着の上は良牛の生産を見るべく期待されつつあり。
木村牧場 (白石村大字上白石) 木村利建氏の経営にして、本道一流ホルスタイン種繁殖牧場として愛牛家の推奨する処なり。同場は明治三十四年の創業にして爾来米国より種牛を輸入すること二回、其の数二十二頭に及べり。今や其の仔畜と共に繫留せらるるもの六十余頭に達し、生産牛の種牛として各地に分譲され、本道畜牛の改良に資せられつつあり。昨年新たに豊平町月寒に分場を設け、優良種畜の生産に努めつつあり。

 このように、ブリーダー経営はアメリカ等からの導入された種畜を基礎牛として、その改良・繁殖を行い、その普及を図りながら、自らも高い収益を上げることを可能としたのである。しかもそのなかから、前田農場や宇都宮牧場、さらには石狩町樽川の町村牧場のように、バターなどの加工を行うものまでを輩出するに至るのである。