事実、八月十九日には、札幌区の共楽館で六〇〇人余の区民を集めて「土人救育演説会」が開催された。当日は藤井民治郎が「開会ノ主意」を述べ、中西六三郎が「土人ニ対スル法律ノ効果」、関場不二彦が「アイヌノ保護」、小谷部全一郎が「吾北海道土人」、加藤政之助が「日本国民ノ位置」と題しそれぞれ演説した(小樽新聞 明33・8・21)。藤井と中西はともに弁護士で、札幌区会議員も兼務していた。関場は北辰病院院長であった。この演説会は札幌区民に対して、アイヌ民族の現状と同会の活動趣旨の理解に加えて、運営資金を確保する目的で開催された。また、これに先立つ八月十七日には、永山武四郎、対馬嘉三郎、佐藤昌介らが発起人となり、札幌区の有志による「土人救育会員招待懇親会」が豊平館で開催され、小谷部と加藤が演説をした(道毎日 明33・8・21)。この懇親会には北海道庁長官園田安賢も出席した。
写真-17 「土人救育演説会」広告(道毎日 明33.8.18)
こうした集会は札幌区だけではなく、八月二十日には小樽区でも開催され、区会議員など六〇余人が参加した。当日は二瓶有の「開会の主旨」で始まり、小谷部が「土人救育会趣意」、加藤が「日本国民の位置」と題し、それぞれ演説した(道毎日 明33・8・22)。