拓銀長期貸付の用途別残高を表8によりみてみよう。目的別には、札幌市域は北海道平均に比べ、水田造成、旧債償還の比重が高く、その他の比重が小さい。なかでも札幌市、豊平町、藻岩村で旧債償還が四〇パーセント以上を占めており、北海道平均を超えている。一方、手稲村、白石村では、水田造成が北海道平均を大きく上回り、高くなっていた。次に、一口当たりの貸付額をみよう。合計では、札幌市域は篠路村、札幌市、藻岩村などの金額の多い地域を含み、市域平均も北海道平均よりも高い数値であった。また水田造成の一口当たり貸付額は、札幌市域は五一五三円と、石狩国二二四八円、北海道の一九五三円を大きく上回っていた。とりわけ高かったのは札幌市九三四五円、篠路村八九五九円、白石村七四一二円などであった。札幌市域は大口の資金を融通され、水田造成をさかんに行ったといえるだろう。
表-8 年賦定期貸付用途別内訳 〔単位:口,円,%〕 |
開墾 | 水田造成 | 土地整理 | 土地買入 | 農具買入 | 工業 | 旧債償還 | その他 | 合計 | 1口当金額 | |
札幌市 | 51口 339,383円 6.3% | 98 915,836 17.1 | 39 146,053 2.7 | 81 500,312 9.3 | 4 7,871 0.1 | 4 34,844 0.6 | 296 2,148,695 40.1 | 198 1,269,619 23.7 | 771 5,362,616 100.0 | 6,955 |
豊平町 | 14 7,252 1.6 | 49 84,050 18.1 | 1 500 0.1 | 14 56,505 12.1 | 0.0 | 5 6,100 1.3 | 83 202,882 43.6 | 24 108,254 23.3 | 190 465,545 100.0 | 2,450 |
札幌村 | 16 30,060 4.2 | 30 166,025 22.9 | 9 65,869 9.1 | 20 178,471 24.7 | 4 3,603 0.5 | 71 212,524 29.4 | 18 66,909 9.2 | 168 723,464 100.0 | 4,306 | |
篠路村 | 8 46,213 9.4 | 14 125,421 25.6 | 1 1,082 0.2 | 4 12,063 2.5 | 1 5,525 1.1 | 21 144,589 29.5 | 5 154,729 31.6 | 54 489,626 100.0 | 9,067 | |
琴似村 | 24 21,352 6.2 | 66 69,549 20.3 | 5 60,018 17.5 | 55 66,710 19.5 | 5 2,228 0.7 | 80 87,831 25.6 | 30 34,935 10.2 | 265 342,626 100.0 | 1,292 | |
手稲村 | 1 2,810 2.7 | 25 42,444 40.9 | 5 7,790 7.5 | 19 26,927 26.0 | 6 26,567 25.6 | 56 103,757 100.0 | 1,852 | |||
藻岩村 | 3 28,605 8.3 | 7 13,707 4.0 | 6 120,832 35.2 | 2 7,663 2.2 | 33 138,384 40.3 | 9 34,343 10.0 | 60 343,536 100.0 | 5,726 | ||
白石村 | 11 8,261 2.2 | 32 237,186 62.5 | 4 3,407 0.9 | 13 30,262 8.0 | 4 10,147 2.7 | 51 70,524 18.6 | 9 19,732 5.2 | 124 379,523 100.0 | 3,061 | |
小計 | 128 483,936 5.9 | 321 1,654,218 20.1 | 65 397,761 4.8 | 194 859,776 10.5 | 18 29,374 0.4 | 9 40,944 0.5 | 654 3,032,356 36.9 | 299 1,715,088 20.9 | 1,688 8,210,693 100.0 | 4,864 |
石狩国合計 | 912 1,373,176 3.4 | 3,485 7,883,044 19.7 | 591 1,460,672 3.7 | 1,363 3,754,261 9.4 | 98 308,276 0.8 | 51 307,041 0.8 | 7,287 15,395,854 38.5 | 1,025 9,506,546 23.8 | 14,812 39,988,873 100.0 | 2,700 |
北海道合計 | 4,587 5,797,099 5.3 | 8,464 16,533,091 15.2 | 1,131 4,769,175 4.4 | 5,268 11,675,017 10.8 | 583 921,231 0.8 | 223 2,365,154 2.2 | 16,448 35,759,368 32.9 | 3,456 30,730,367 28.3 | 40,160 108,550,506 100.0 | 2,703 |
北海道拓殖銀行『年賦定期貸付郡市町村別使用途別調』(大13.6.30現在)より作成。 |
大正末期の米価下落と不況は、土功組合の借入金返済を滞らせ、土功組合救済問題が政治問題となった。土功組合救済問題解決の方策として、借入金の低利資金借替が提唱された。大正十五年度に三〇〇万円、昭和二年度に一五〇万円の大蔵省預金部資金が供給され、拓銀を通じて年利五分四厘で借替を行った(大蔵省昭和財政史編集室 昭和財政史Ⅻ大蔵省預金部・政府出資 昭37)。ちなみに、石狩支庁管内各土功組合が借替を希望していた旧債の利率は、年利八分八厘から九分八厘であった(北タイ 昭2・2・28)。これらのうち、九分四厘以上のものはその全額を、八分以上九分三厘までのものはその半額を借替えることとなった(北タイ 昭2・10・19)。
土功組合問題は、大正十五・昭和二年の借替融資により緩和された。ところが、昭和恐慌とその後の凶作によって、土功組合旧債借替要求が再度噴出した。北海道土功組合連合会は、約三〇〇〇万円の負債の償還期限を一五年~二五年延期することを要望した(北タイ 昭6・4・9)。大蔵省預金部では、昭和六年六月に道内一一組合の実地調査を行い、その結果、経営困難の土功組合は第一次世界大戦後の高米価時に「人口食糧政策ノ提唱ニ煽ラレ」設置されたもので、工事計画も高米価を予想してたてられたので、昭和恐慌下の米価下落のもとでは借入金償還は困難であるとの結論に達した(大蔵省預金部 預金部長北海道土功組合視察概要)。これをふまえて、内地の耕地整理組合も同様の問題を抱えていることから、耕地整理組合と同じ方法により「北海道土功組合長期借換資金」一七〇〇万円、「北海道土功組合ノ債務償還資金」八〇万円を融通することを決定した。前者は既融通資金を五カ年以内据置、三〇カ年以内の年賦償還に変更し、後者は経営困難の者に対し、元金償還資金を五カ年以内据置、二〇カ年以内の期限をもって融資するものであった(昭和財政史Ⅻ大蔵省預金部・政府出資)。このようにして土功組合救済問題は、農村救済問題に解消されつつ、解決に向かったのである。