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札幌市域の銀行

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 表9に大正十五年六月時点における札幌市所在銀行の営業状況をまとめた。札幌市所在銀行を、法的性格から区分すると三つに分けられる。まず、北海道拓殖銀行法による特殊銀行たる拓銀本店、貯蓄銀行条例(明23・8公布、明26・7施行)、貯蓄銀行法(大10・4公布、大11・1施行)による貯蓄銀行たる小樽銀行支店、北門貯蓄銀行本支店、不動貯金銀行支店、共栄貯金銀行支店、そして普通銀行たるその他本支店である。また、これらを本店が道内か道外(内地府県)かにより道内銀行(地場銀行)と内地銀行とに分けることもできる。内地銀行は、十二銀行支店(本店富山市、明43・8支店開設)、第一銀行支店(本店東京市、大2・4支店開設)、不動貯金銀行支店(本店東京市、大3・8支店開設)、共栄貯金銀行支店(本店東京市、大3・10支店開設)の四支店であり、その他は地場銀行である。大正期には、北海道殖産銀行が夕張郡角田村(現栗山町)に大正八年十二月に設立、直後に札幌に支店を置き、九年には中立銀行が小樽銀行と改称している(北海道拓殖銀行調査課 北海道金融機関沿革史、札幌商業会議所 第一〇回統計年報)。
表-9 銀行営業状況 〔単位:千円,%〕
北海道拓殖銀行本店北海道銀行支店北門銀行本店北海道殖産銀行支店札幌銀行小樽銀行支店北門貯蓄銀行本店北門貯蓄銀行北七条支店北門貯蓄銀行苗穂支店○十二銀行支店○第一銀行支店不動貯金銀行支店共栄貯金銀行支店合計
預金12,117
32.9%
6,439
17.5
3,241
8.8
74
0.2
675
1.8
66
0.2
2,077
5.6
255
0.7
195
0.5
3,452
9.4
6,596
17.9
1,339
3.6
246
0.7
36,777
100.0
貸付金61,603
79.1
3,361
4.3
4,721
6.1
299
0.4
608
0.8
48
0.1
899
1.2
11
0.0
9
0.0
2,619
3.4
3,159
4.1
378
0.5
133
0.2
77,855
100.0
入金65,657
53.0
23,570
19.0
8,895
7.2
846
0.7
208
0.2
149
0.1
1,672
1.3
107
0.1
127
0.1
9,384
7.6
13,052
10.5
248
0.2
52
0.0
123,972
100.0
出金65,926
53.1
23,542
19.0
8,869
7.1
849
0.7
196
0.2
145
0.1
1,656
1.3
109
0.1
126
0.1
9,407
7.6
12,937
10.4
243
0.2
47
0.0
124,058
100.0
為替手形取組高1,630
26.4
1,152
18.6
217
3.5
6
0.1
0
0.0
416
6.7
1,754
28.4
6,177
100.0
為替手形支払高4,010
46.0
2,045
23.4
871
10.0
73
0.8
0
0.0
390
4.5
1,330
15.2
8,722
100.0
荷為替手形取組高17
23.9
19
26.8
2
2.8
6
8.5
26
36.6
71
100.0
荷為替手形取立高281
39.0
297
41.3
3
0.4
124
17.2
124
17.2
9
1.3
720
100.0
他所割引・代金取立手形取組高1,340
44.3
198
6.5
20
0.7
3
0.1
0
0.0
2
0.1
285
9.4
1,177
38.9
3,028
100.0
他所割引・代金取立手形取立高792
42.2
305
16.3
66
3.5
8
0.4

0.0
1
0.1
219
11.7
470
25.1
1,875
100.0
定期預金利息最高
最低
169
169
181
181
170
170
192
164
203
191
192
170
192
178
192
178
178
169
169
169
192
169
205
192
186
175
当座預金利息最高
最低
60
60
80
60
60
60
100
80
100
100
130
130
70
60
60
60
83
76
証書貸付利息最高
最低
274
148
330
230
340
280
411
274
329
260
329
320
330
330
290
290
270
240
270
250
333
333
319
269
手形貸付利息最高
最低
300
260
320
280
700
300
450
280
330
210
320
220
200
200
290
200
290
250
450
350
365
255
当座貸越利息最高
最低
280
260
320
200
330
280
400
300
350
350
310
300
332
282
割引手形最高
最低
280
240
300
260
310
270
700
300
290
245
260
230
357
258
1.○印は札幌組合銀行
2.利息はすべて日歩,単位は毛。
3.北海道庁内務部商工課『本道各銀行金融概況』(大15.6)より作成。

 さて、各銀行の札幌市合計に占める比率をみてみよう。預金は、拓銀、第一銀行(以下第一)、北海道銀行(以下道銀)、十二銀行(以下十二)の順となっており、これら四行で全体の七七・七パーセントを占める。貯蓄吸収を業務とする貯蓄銀行は、全部合わせても一一・三パーセントにすぎなかった。道内外の有力銀行に預金は集まっていたのである。貸付金は、拓銀本店があるために過大な数値となっているが、拓銀を除けば、北門銀行(以下北門)、道銀、第一、十二の順となっている。普通銀行の預貸率を算出すると、道銀は五二・二パーセント、北門は一四五・七パーセント、十二は七五・九パーセント、第一は四七・九パーセントとなっている。道銀、第一の貸付への消極姿勢がうかがえる。ところが為替業務では様相が異なる。各項目の上位三行をあげると、為替手形取組は第一、拓銀、道銀、同支払では拓銀、道銀、第一の順であり、荷為替手形取組では十二、道銀、拓銀、同取立では道銀、拓銀、十二、北海道殖産銀行の順となり、他所割引・代金取立手形取組では拓銀、第一、十二、同取立では拓銀、第一、道銀の順であった。為替業務では内地普通銀行の健闘が目立ち、これらが内地府県と札幌との商品取引の決済の必要から、支店を設置したことが推察できる。
 なお、各普通銀行の貸出金利(最低)をみると、証書貸付では、道銀が十二・第一を、当座貸越では道銀・北門が十二を下回るが、手形貸付、割引手形では道銀・北門が十二・第一を上回る。一般貸付における内地銀行の消極性は、金利が高かったことにもあらわれている。反対に為替業務では地場銀行よりも利用者に便宜をはかっていたといえよう。
 これら銀行本支店の営業規模を、大正十二年度営業税納税額で比較してみると、拓銀は一万八七四四円、第一は二九五三円、北門は二五二〇円、十二は一七四六円、道銀は一六一七円、札幌銀行は二四五円、北門貯蓄銀行は二三八円、不動貯金銀行は一一一円、小樽銀行は五九円、共栄貯金銀行は二七円となっていた(札幌商業会議所 札幌商工人名録 大13)。拓銀の地位が隔絶し、上位五行と下位五行との間も断絶がある。上位五行は札幌組合銀行として、大正五年五月から手形交換を開始し、札幌金融界を代表していた。