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札幌酪農組合

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 大正六年一月、札幌牛乳搾取業組合(明26設立)と札幌牛乳販売組合(大4設立)とが統合して、「一、各生産者の連絡を充分に密にする。二、適正なる乳価の協定に邁進する。三、飼料の共同購入をする」ことを目的として、札幌酪農組合を設立した。この組合では、牛乳販売代金の一〇〇分の五を三カ年間据置貯金とし、満期にあたる大正九年にこれを出資金に充てて法人格を持つにいたった。組合員二六二人、出資口数四三七口、出資金八七四〇円の基礎を有する「有限責任札幌酪農信用購買販売生産組合」(以下札酪と略)が設立されたが、これが北海道における法人格を持つ最初の酪農組合であった。表34によれば、最盛期の昭和十一年には組合員九五二人、出資口数五二六二口、出資金一〇万五二四〇円に達した。ところで、札酪が事業を行った区域は札幌市、札幌村、篠路村、琴似村手稲村藻岩村豊平町白石村、江別町、石狩町、当別村、朝里村の一市一一町村にまたがり、当時としては異例の広域組合であった。とはいえ、札幌地域が中心であったことは表35を見るまでもなく明らかであり、以下に札酪の事業が札幌地域の酪農に与えた影響如何をみていくことにする。
表-34 札酪の組合員と出資金
年次組合員数出資口数出資金未払込出資金
大 9262人437口8,740円2,614円
102924639,2602,138
1134553910,7801,506
123931,17323,4603,682
134311,21524,3001,238
144621,57631,520363
155032,13042,6004,145
昭 25412,80856,1603,503
35723,65373,0601,555
45584,11082,200613
56354,50390,060322
67164,73094,600600
78254,94598,900523
88554,80696,120233
98844,86597,300214
109245,133102,660271
119525,262105,240292
128844,74294,840219
138794,81396,260203
146944,21684,320122
156924,42288,44068
166564,24684,92078
177384,53590,70023
『サツラク農業協同組合30年史』(昭53)より作成。

表-35 札酪の組合員所有畜牛頭数(昭和5年9月現在)
市町村種牡牛牡牛純粋牝牛雑種牝牛
ホルスタインエアシアその他
札幌2111422334491
篠路村13341146185
琴似村1091522326499
手稲村61242348381
藻岩村1112023
豊平町22424288
白石村730185151274
札幌5151301310262435
その他11181408698875
合計459084928122,2273,251
『サツラク農業協同組合30年史』(昭53)より作成。

 第一に、信用事業について。産業組合となってからも据置貯金は継続し、出資金だけでなく貸付金もそれが基礎になっていたことにより、低利の貸付が可能になった。大正十年にはサイロ建設資金として年賦償還法による貸付を開始し、同様に翌十一年には糞尿溜建設を奨励し、昭和三年にはコンクリート尿溜新設者に補助金を与えることを決定したが、これらの措置は、札幌地域におけるサイロや尿溜の普及をおおいに促進した。
 第二に、購買事業について。札酪の購買事業は飼料の共同購入が主たるものであり、とりわけ「デントコーンの普及については札酪の果した役割が決定的であった」という。さらに、一歩を進めて飼料の開発、具体的には配合飼料の製造を手掛けたことは特筆されるし、その意味でも北海道の先駆的役割を果たした(表36、37)。
表-36 札酪の購買品売却高の推移
年次飼料生産資材全購買額
大 921,038円-円36,750円
1032,13897,934
1158,2949,469122,662
1277,20219,331159,812
13111,93222,199193,637
14122,12015,018210,006
15115,94719,236201,768
昭 2126,55430,981230,164
3137,40831,581238,104
4156,20336,182264,646
5153,08047,060280,084
697,56332,421208,810
783,07032,187210,161
8123,95243,051249,827
9128,18733,335273,002
10134,08036,183304,392
11128,12537,814298,396
12147,39035,333310,206
13145,85550,704322,481
14152,31651,180320,503
15106,65018,169208,053
16135,73426,832211,720
17247,65483,776381,218

表-37 札酪の飼料用デントコーン種子の取扱量の推移
年次白色デントコーン黄色デントコーン合計
大11150石803,787円石--円石--円
12228.903,747
13273.556,283
14436.009,445
15462.409,079
昭 2541.008,93095.002,115636.0011,046
3521.4510,405120.002,564641.0012,970
4429.709,477167.603,641596.0013,119
5830.1719,718124.892,714954.8922,432
6690.759,934151.952,477842.7012,411
7654.109,403147.201,757801.3011,160
8583.8010,315128.002,060711.8012,376
9224.904,14079.401,188304.305,328
10236.204,28682.401,448318.605,734
11208.003,36473.601,219281.604,583
12180.003,14770.001,244250.004,392
13158.003,22777.001,427235.004,655
14151.003,41471.001,454222.004,869
15118.004,83946.001,825164.006,664
1690.003,66434.001,352124.001,926
1795.203,61773.202,990168.406,607
表36共『サツラク農業協同組合30年史』(昭53)より作成。

 第三に、販売事業について。昭和二年三月、札幌市北七条東一二丁目の組合事務所裏に共同集乳所を建設し、販売事業を本格的に展開することになったが、きっかけは煉乳会社による二等乳の受入拒否にあり、共同集乳所の建設は、二等乳の処理と産犢育成用脱脂乳販売の一石二鳥を目的としていた。同時に、酪聯の設立に呼応する動きでもあったことは後述するが、本格的な販売事業として着手されたのは、東京以北最大と称された札幌酪農組合ミルクプラントの建設であり、昭和八年三月に完成し創業を開始した(のちに小樽に進出。表38、39)。
表-38 札酪の用途別乳量と売上高
年次受入牛乳煉乳用向クリーム脱脂乳向市乳工場向
総乳量売上高
昭 2254,064貫( 952,740)kg85,535円229,887貫 78,626円24,177貫貫     kg
3226,374 ( 848,903)72,78792,903  35,192133,471
4223,275 ( 837,281)68,817137,342  44,00185,933
5262,816 ( 985,560)91,206174,358  48,26388,458
61,148,358 (4,306,343)186,991863,161  128,618285,197
71,094,548 (4,104,555)195,312726,320  133,687368,318
81,232,042 (4,620,158)288,162958,686  242,330273,356183,824 ( 689,340)
91,244,012 (4,665,045)273,430842,125  214,528401,886196,520 ( 736,950)
101,695,120 (6,356,700)350,8841,035,746  234,572399,76259,606 ( 973,523)
111,545,815 (5,796,806)325,768835,407  189,722376,934333,475 (1,250,531)
121,391,522 (5,218,208)411,591650,205  189,382265,732496,149 (1,860,559)
131,470,564 (5,514,615)454,496616,491  202,385231,878484,168 (1,815,630)
141,169,736 (4,386,510)432,223427,678  156,148183,040559,017 (2,096,314)
15860,274 (3,226,028)566,948152,588  67,92985,905621,780 (2,331,675)
16797,406 (2,990,273)472,81936,326  18,23078,737682,343 (2,558,786)
171,228,577 (4,607,164)864,139152,946  94,553119,959955,672 (3,583,770)
『サツラク農業協同組合30年史』(昭53)より作成。

表-39 札酪の市乳工場販売の動き
年次市乳工場向生乳札幌工場小樽工場合計
売上高
販売量売上高販売量売上高
昭 8183,824貫( 689,340)kg177,705貫( 671,402)kg66,870円貫    kg66,870円
9196,520 ( 736,950)190,816 ( 720,937)77,83677,836
10259,606 ( 973,523)249,313 ( 941,949)103,858103,858
11333,475 (1,250,531)296,558 (1,112,093)120,51722,457 ( 84,214)11,753132,270
12496,149 (1,860,559)360,358 (1,351,343)172,625115,227 ( 432,101)60,840233,465
13484,168 (1,815,630)359,861 (1,349,479)237,127108,725 ( 407,719)68,332305,459
14559,017 (2,096,314)411,076 (1,541,535)256,468111,832 ( 419,370)78,843335,311
15621,780 (2,331,675)458,322 (1,718,708)353,780131,518 ( 493,193)109,196362,976
16682,343 (2,558,786)502,089 (1,882,834)490,737158,083 ( 592,811)152,162642,899
17955,672 (3,583,770)714,017 (2,677,564)748,647226,038 ( 847,643)280,2271,028,874
『サツラク農業協同組合30年史』(昭53)より作成。

 第四に、利用事業について。デントコーンの普及とともにサイロ建設も進み、その切込みの機械化を要望する声が強くなったのに応じて、サイロ切込み用のカッターの共同利用を行った。
 ところで、札酪のその後をみると、戦時の経済統制が進むにつれて、その影響をまともに受けていく。まず、「道内乳業の一元化による企業合理化の機運」を背景に、昭和十五年十二月、北海道興農公社が設立された(昭16・4営業開始、後述)。次いで十八年六月、「農業団体法」が制定公布されたのにともない、「農業会」が設立された。農業会は従来の農会、産業組合をはじめ、畜産組合をも含めて発足し、供出、配給統制などを具体的任務とする戦争協力を遂行すべく、独占的地位を与えられた。このために産業組合法に依拠して設立された札酪も解体を余儀なくされ、市町村農業会へと分散されることになり、大正六年の設立以降、酪農組合として特異な存在を誇った札幌酪農組合もついに解散するに至った。