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札幌市の小作争議

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 昭和十年代に入ると、全道的に小作争議の退潮期に入ることはすでに触れた。とりわけ昭和十四年以降はその傾向が著しい(表8参照)。
 このような全道的状況のなかで、札幌市域の小作争議はどのような推移を遂げていったのであろうか。いま十年代初期に発生した争議の一覧表を掲げると表12のようになる。この表は件数的には必ずしも完全なものとはいえないが、争議の規模や原因、傾向を知る上では参考となろう。まず争議の関係人員をみると、篠路村の二件(四番と八番)を除いて、地主一人に小作人一人といった比較的小規模の争議である。したがって、関係する土地面積も前期の二件のように一〇〇町歩を越えるものはなく、多くて五~六町歩である。また争議の原因をみると、地主側は概して土地の明渡しを求めているのに対し、小作人側は小作料の減額もしくは継続耕作=耕作権の確立を求めるものが多い。
表-12 札幌市における昭和10年代初期の小作争議
番号発生年月日
終結年月日
争議発生場所争議関係人員関係地の
種類・面積
要求事項
地)…地主,小)…小作人
1昭11.  7.17
 12.12.  2
琴似村大字琴似
田代賢一外2名所有地
地主3人
小作1
畑及び放牧地
6町歩
2 12.10.25
 ~ 11.  8
白石村字北郷番外地
田村与平所有地
地主1
小作1
田1町9反5畝8歩
小)小作料減額要求
3 13.  3.  8
 ~ 4.15
手稲村手稲
田由雄所有地
地主1
小作1
畑1町9反歩
小)小作料減額要求
4 13.  3.19
 ~ 11.17
篠路村大字茨戸青森不動産株式会社所有地地主1
小作64
水田170町歩地)小作料増額,小)小作料減額,地)小)飯米貸付及借受保証人について
5 13.  3.21
 ~ 5.30
札幌市北20条西1丁目
粕野忠八所有地
地主1
小作1
畑1町歩小)継続耕作及び損害賠償要求
6 13.  3.22
 ~ 4.20
琴似村大字篠路村
須藤武夫所有地
地主1
小作1
田1町8反歩地)土地明渡し要求
小)継続耕作
7 13.  3.30
 ~ 4.  4
札幌村字丘珠
大畑要蔵所有地
地主1
小作1
畑3町3反6畝27歩,宅地103坪地)土地明渡し要求
小)継続耕作
8 13.  4.  4
 ~ 11.28
石狩町
篠路村
地主1
小作57
田165町7反25歩
9 13.  6.  1
 ~ 6.14
琴似村大字琴似字牧場
星源吉所有地
地主1
小作2
畑5町歩地)土地明渡し要求,小)土地譲渡又は継続耕作
10 13.  6.  1
 ~ 6.15
豊平町大字豊平
河田与太郎所有地
地主1
小作1
畑4反歩地)土地明渡し要求,小)継続耕作及び損害賠償要求
11 13.11.19
 ~ 12.10
円山町字山鼻八垂別
遠藤善四郎所有地
(原田健作に売却)
地主2
小作1
畑地2町1反5畝8歩,宅地150坪計2町2反8歩小)継続耕作
農水省農業総合研究所所蔵資料,北海道立文書館所蔵資料より作成。

 しかし表12では、争議の結果については示されていない。そこで、そのことが判明するいくつかのケースを紹介しておこう。