札幌市では、昭和五十六年以来「創建一二〇年」(昭和六十三年)を記念して『新札幌市史』の編集を進めてきたが、平成十四年の「通史五(上)」に続き、このたび九冊目の通史編最終巻「通史五(下)」を刊行することができた。
本巻はおおむね昭和四十七年(一九七二)の政令指定都市への移行から現在までの時期を扱っているが、札幌市が政令指定都市として名実ともに独自性を発揮した時期であり、上巻の時代より一層社会基盤整備が進行し、二一世紀へ向けた諸施策が行われた時代でもある。同時代史の資料群は上巻に増して膨大となり、取り上げる分野も拡がり、分析も一層困難となっており、叙述において難しい時代を扱った。
そのような編集状況を踏まえて、本巻でも上巻に引き続き編集協力員制と専門部会制を十二分に活用し、高度な専門知識を必要とされる執筆分野に外部の多くの専門家、研究者にも参加を求めたところ、幸いにも一四人の方々に協力をいただくことができた。専門部会は、政治・行政、産業・経済、社会・生活、教育・文化・宗教の四部会を設置し、各部会では年に数回の会議をもち、編目構成の検討、執筆項目の調整、原稿の校閲、資料・情報の交換と共有化を図るとともに、他部会との項目調整を重ねながら、成稿作業を進めてきた。本巻が大部な巻でありながら、重複がなく均整が取れた構成にまとまっているのも、専門部会制が有意義に機能したからと考えている。
明治以前を対象とした第一巻、明治初期から明治三十二年の区制施行以前を対象とした第二巻、区制施行から大正十一年の市制施行以前を対象とした第三巻、市制施行から終戦までを対象とした第四巻、終戦から政令指定都市への移行以前を対象とした第五巻(上)に続く本巻をもって、通史編は完結する。またこれ以外に、史料編二冊が、また統計編一冊がすでに刊行されており、三年後に刊行が予定されている「年表・索引編」(第八巻Ⅱ)をもって『新札幌市史』編集事業は完結するが、既刊本だけでなく、市史編集の過程で収集した資料そのものが札幌市が歩んできた足跡を伝える貴重な歴史資料であり、札幌市民の財産として後世に引き継いでいくことも重大な使命と考えている。
懇談会委員、本巻編集に携わった編集協力員、市史編集室、事務局職員の編集スタッフ、および編集員・編集協力員による執筆担当章・節は、以下のとおりである。
◇懇談会委員(五十音順)
伊藤義郎 榎本守恵(故) 九島勝太郎(故) 小塩進作(故) 坂口勉 更科源蔵(故) 高倉新一郎(故) 永井秀夫 中島好雄 市総務局長 市教育委員会教育長
◇編集協力員
浅田政広(旭川大学教授)、一瀬啓恵(室蘭工業大学非常勤講師)、大沼義彦(北海道大学助教授)、奥岡茂雄(北海道浅井学園大学教授)、桑原真人(札幌大学教授)、白戸仁康(北海道史研究者)、鈴江英一(北海道教育大学教授)、鈴木喜三夫(演出家)、田中綾(歌人・短歌評論家)、林恒子(女性史研究者)、前川公美夫(北海道新聞社文化部長)、村田文江(北海道教育大学岩見沢校助教授)、森雅人(札幌国際大学助教授)、山田定市(北海学園大学教授)
◇市史編集室
海保洋子(編集長)、中村英重(副編集長)、白木沢旭児(主任編集員)、石田武彦、大矢一人、仙波千枝、西田秀子、橋場ゆみこ、平井廣一、横井敏郎、榎本洋介(以上編集員)、今野由佳里(前)
◇事務局
原本昌代(文化資料室長)、小堀苦味男(資料担当係長)、門谷陽(資料担当係長・前)、岩佐啓吉、村山薫、綿貫美樹(以上事務職員)