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長期不況下の予算編成

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 平成八年度以降の市財政も、バブル経済崩壊期と同様、市税収入の低落傾向に歯止めがかからず、しかも国の財政危機によって地方交付税国庫支出金もそれほど期待できないため、結局は市債に依存せざるを得ないという苦しい予算編成を強いられている。十一年十一月、市はついに「財政危機宣言」を出し、十二年度予算からこれまでの上積み方式から予算要求の上限を一〇パーセント引き下げるマイナスシーリングを実施することにした(道新 平12・2・5)。以下予算の特徴をまとめておこう。
 歳入出総額は、十二年度と十四、十五年度に前年度を下回るという、市財政史上経験したことのない縮小型の予算編成が行われた。ただ、削減額は十五年度を除くと一〇パーセントには達していない。歳入面では、いうまでもなく市税の伸びに期待できず、その穴埋めをしたのは地方交付税国庫支出金である(表1)。しかし、地方交付税は平成十三年度以降は顕著な落ち込みを見せており、市の財政運営はますます厳しさを増している。
 歳出面での顕著な変化は、戦後復興期と高度成長期、そして安定成長期を通じて膨張してきた土木費が八年度にピークに達し、翌九年度以降は道路橋梁費を中心に金額、歳入に占める比率も急激に落ち込んでいくという事態である(第一節参照)。その反面、民生費産業経済費(中小企業に対する貸付金の増額)、そして公債依存度の上昇に比例して公債費の比率が急激な伸びを示している。教育費と衛生費は漸減、職員費は横ばいである(表5)。
 平成八年度から十四年度予算における重点施策ないし新規事業は、(1)福祉・保健医療の充実、(2)経済の活性化、(3)交通及び環境の総合的対策、(4)市民文化の創造と地域コミュニティの向上などにまとめられる。
 このうち最重要視された福祉関連事業では、高齢者保健福祉計画推進事業の一環として「二四時間巡回型ホームヘルプサービス」の導入(八年度)、ホームヘルパーの大幅増員、痴呆性老人を対象とするグループホーム事業(九年度)がある。さらに十二年四月の介護保険制度導入に備えたヘルパー増員など関連予算増額(十年度)、特別養護老人ホーム施設新築補助(十二年度)も見逃せない。十三年度には、新規事業として健康づくり基本計画策定、地域福祉計画策定調査、障害者保健福祉計画策定調査、盲ろう者通訳・ガイドヘルパー養成事業などがある。
 児童福祉関連事業では、不登校児の家庭に大学生ボランティアを派遣する「メンタルフレンド事業」(九年度)、精神障害者交通助成制度の創設、時間延長型保育サービス実施保育所の増加、児童手当支給年齢拡大、延長保育実施幼稚園の増加(十二年度)、児童虐待防止啓発活動(十三年度)などが挙げられる。これに関連して、少子化対策として私立保育所新築費補助や無認可保育所の認可移行促進を含んだ保育所の大幅定員増(十四年度)なども含まれる。
 福祉とともに重点化されたのが経済の活性化で、予算面では先述のように平成十年度から十四年度にかけて中小企業金融対策費が年々増額されていくが、その他には、十年度に電子流通促進事業が開始され、十二年度には「新・札幌型産業」と名づけられた集客交流事業が選ばれて、その代表施設としてコンベンションセンター(東札幌)の工事費が盛り込まれた。また「デジタル創造プラザ」(豊平区)の稼動による起業家の育成(十三年度)、上記の「新・札幌型産業の育成・振興」策としてデザイン産業の振興と「産学協同研究チャレンジ支援」(十四年度)など次世代を担う産業の開発に期待がかけられた。また、IT関連費として道路交通情報提供事業用光ファイバー網構築(十四年度)などインフラ整備にも力が注がれた。
 今後ますます行政の役割が高まるであろう環境問題への取り組みとしては、太陽光発電モデル事業、環境ホルモン測定調査、リサイクル推進基金創設、第五清掃工場(白石)建設(十年度)、プラスチック回収施設の取得と運営管理、自動車騒音調査、ダイオキシン対策として清掃工場(篠路・駒岡)の改修、衛生研究所の検査態勢強化(十二年度)、ごみ減量化への指針策定、学校施設への太陽光発電施設導入普及事業、リサイクル推進市民団体への支援(十三年度)、エコライフウィーク事業、廃棄物固形化燃料ボイラー施設建設補助(十四年度)などさまざまな事業が予算化されたが、金額的には清掃工場の新設改修費が大部分を占め(例えば白石工場の建設費は八六億円、篠路駒岡工場改修費一五億円)、ゴミ処理が環境問題の最大の課題になっていることがうかがえる。したがってその他の環境保全対策は現行では調査、実験段階にあるといえよう。
 その他の重点項目では、市内総合交通対策として十二年度から公共交通機関中心の交通体系の創出が模索され、「交通実験プロジェクト推進事業」が発足した。また十四年度からは「札幌駅前通地下歩行空間整備推進事業」の基本設計費、駅前通の歩行者天国化と大通公園の連続化を柱とする「都心交通ビジョン」の調査費が計上されて、都市機能の進化とマイカー社会からの脱却が試行されている(道新 平8・2・3、9・2・5、10・2・5、12・2・5、13・2・6、14・2・5)。