北海道は昭和四十三年に「開道百年」を迎え、北海道での布教と教化を推進して「開教」に取り組んできた各宗派・教団も、これ以降順次、記念の年を迎え記念行事・事業を実施し、さらには開教史を編纂・刊行することになる。
大谷派は従来より開教史の編纂を重視しているところであり、戦前には『北海道東本願寺由来』(明45)、『北海開教記要』(大4)などをまとめ、戦後も開教八〇年を記念して『東本願寺北海道開教史』(昭25)を刊行していた。そして一〇〇年を記念して四十九年に、『東本願寺北海道開教百年史』を出している。本書は詳密な資料で構成された開教史と寺院沿革誌からなり、八五〇頁に及ぶ大冊であった。後者は「開教状況」としての略述にとどまっているが、第四組に市内の二九寺が記述されている。
曹洞宗では四十三年に各寺の沿革を記述した『北海道百年曹洞宗寺院誌』を刊行し、第一宗務所第八教区にあたる市内の中央寺、大覚寺、龍松寺ほか一八寺が収載されている。平成四年にも『修証義公布百年記念曹洞宗北海道寺院誌』が刊行されていた。
真宗興正派でも五十三年に寺院沿革誌からなる『北海道教区史』が出され、札幌興正寺別院ほか市内六寺が記述され、日蓮宗も六十二年に『日蓮宗北海道大鑑』を刊行し、前半部分の寺院沿革誌では経王寺、顕本寺、日登寺ほか市内一五寺が掲載されている。
開教史の年表作成も高野山真言宗と真言宗智山派でなされ、前者では『北海道開教史年表』(平4)、後者では『開教史年表』(平15)が刊行されている。後者の中からは四十九年十一月に北海道智山青年会の発足、五十年六月二十八日に智山寺庭婦人会の結成、五十五年八月二十四日に北海道教区寺庭婦人会の結成、五十九年に弘法大師千百五十年遠忌法要(会場興隆寺)、六十二年八月三十日に密厳教会遍照講北海道支部連合会の設立、六十三年十月四日に北海道三十六不動尊霊場会の設立など、同派の動向をうかがうことができる。
本願寺派では五十九年より開教史編纂の事業に取り組み、一時、中絶をはさみながら現在も継続され、不定期ながら『開教史研究』(第三号より『教区史研究』と改題)を発刊している。