祝母校隆盛

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          脇 田 山 の 人(注13)
蘇峡(そきょう:木曽谷)20年の歳月は実に急速の進歩をなす数百の健児を産み、邦国の内外各地に送り勇飛せしむ。偉大なるかなの成長―当初向城(むかいじょう:福島町内の地名)の中央に赤の方形不完全な古建築(注14)より出でて、新開の地に廓大(かくだい:ひらけていて大きい)せる長?(ちょうく)を以て今日に及ぶ雄々しさよ。汝の教養せる壮者は不屈不撓(ふくつふとう:志をまげない、くじけない)の為めに校風を保持し益々輝ある生涯に移りつゝあるにあらずや。校門を出でし健児は荒れたる野山を地上に於ける楽園とせん。美化の目的の為に木植うる業に暁星より起床し、岩清に心より潔(きよ)く小鳥の啼鳴(ていめい)を聞きつゝ百花爛縵(らんまん)を迎へて夕陽山家に休養をなす。王候の生活よりも深遠にして意気ある生涯と謂ふべし。
炎熱の季に雑草を征服して整然たる幼樹の旺盛なる発育を計る時、渠等(かれら)の権威は智者の啓蒙を味ふより超越して偉大なり。
行事秋を迎へて冬に亘りて鬱蒼(うっそう)森林の利用啓発や林野将来の計画に際し、紅葉を焼きて山川深く虎狼(ころう:とらと、おおかみ)の吼声(こうせい:ほえる声)を聞きつゝ落葉を踏みて千仭(せんじん:非常に高く深いこと)の間に身心を練磨する同人(どうじん:なかま)は幸なる可(べし)。素懐(そかい:前々からのおもい)を技歴すれば母校の隆盛を期するには曰(いわ)く、世の手腕なき弱者となる勿れ、頑強にして実ある口も八丁、手も八丁以て天下山林国の覇者たらんことを祝意と倶(とも)に期待するものなり。