雑税

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 次に雑税であるが、函館市民全体にかかる税として上げられるものは、店役家役四半敷役(薪役でのち銭納)、人別銭の4種である。4種とも幕府前直轄期の享和年間に創設されたといわれる税で、人別銭が分頭税である以外は、店の大小、家の大小、貧富の差など見聞割で税額が決定された税である。店役家役町会所が税額決定通知兼徴収切符をもって徴収し、四半敷人別銭は、宗門人別下調帳に記載して徴収したものである。店役家役人別銭の3種は3年10月に廃止され、家役は同5年1月廃止されている。なお、人別銭については、「維新前町村制度考」では分頭銭12文とあり、廃止時期不明とされているが、東久世長官「日録」の3年10月3日の項に、「町内人別銭相廃候事農政掛より申付、一人前一年廿四文」とある。「維新前町村制度考」では一般の税として説明されているが、先に掲げた明治3年の収税には漏れており、次に説明する町内入費として捕らえられていたのかも知れない。
 先の4種の雑税以外の雑税は、営業雑種税といえるもので、職種毎に税目が立てられている状態であった。『開拓使事業報告』(第5編租税)に、箱館戦争による戦禍救済ということで賦課免除となった税目と徴収が継続された税目が載っている。運上金が変質した海産税や函館地子永なども含まれ、すべての雑税目が挙げられているわけではないが、函館での現状を反映したものと思われるので次に掲げておく。
 
明治2年は免税となった税目……田畑貢納(8年に地租と改称)、拝借地、茅場、秣場、温泉場、質店、風呂屋、髪結床、炭竃、網、牛馬、差荷役、伐木、海産の諸税
明治2年も徴収された税目……函館地子永、売下地価(沽券金のことか)、酒類醤油麹醸造、引手茶屋、遊女屋、見番、芝居、蚕種紙の諸税

 
 政府が税制の見直しを進めるに当たって雑税は整理廃止の方向で取り組んでいたこともあって、開拓使もまず3年10月に箱館府から引き継いだ税目の検討がなされ、次いで5年に地券発行という改革に伴う雑税の整理、さらに9年に同8年の太政官布告第23号の廃税目を受けてと、3度の雑税の整理が行われた。各年に廃止となった税目は次の通りである。
 
明治3年閏10月廃止の税……豆腐役五十集役、差荷役、合船役(造船税)、人別銭店役四半敷
明治5~6年にかけて廃止の税……職人税、卯時役、南蛮売役、南蛮小役、郷宿冥加、寄留商人免許税、吹抜庫税、陶器焼継税、糴種商税、諸種商税、差網鯡漁船小役、建網鯡漁小役、鯡漁建網釜薪税、引手茶屋税、遊女屋税、見番税、家役
明治9年(8年分から適用)廃止の税……伐木税、炭竃税、茅場税、秣場税、温泉場税(借地料に改める)、鯨税、醤油味噌酢税、建網税、硫黄税、網干場税、質店税、髪結床税、寄興行税