資料の乏しい中から、明治、大正のものと昭和初期のものを調査して載せた。然し西部地区の旧小安村の小安、釜谷、汐首の分は資料がなくて採録できなかった。したがってこの調査表は、殆んど旧戸井村管轄の弁財町、泊町、館町、西浜町、東浜町、二見町、原木町のものである。旧小安村管轄であった瀬田来町の明治十三年のものは瀬田来学校時代の学校沿革誌から採録した。
　明治十三年（一八八〇）明治三十五年（一九〇二）大正十五年（一九二六）昭和八年（一九三三）のものを載せた。
　この調査表は戸井と全然関係のない人々には興味はないだろうが、戸井で生れ、戸井で育ち、戸井で生活している人々にとっては興味深く又感慨深いものであろう。明治十三年時代の戸主は殆んどこの世にないだろうし、明治三十五年時代の戸主でも生きている人は少ないだろう。昭和八年当時の戸主でさえ、死んでいる人が多い。各時代の一人一人の戸主の氏名を見ていったら、感慨無量なものがあるだろうし、老人にとっては昔の思い出がいろいろ蘇えって来るだろう。
　今は亡（な）き多くの人々の努力によって家が栄え、村が発展し、今日の戸井町の発展の姿があることを思えば、千人千様の感慨と決意が脳裡に去来するだろう。
　昔の鰮（いわし）、鮪（まぐろ）、鰤（ぶり）などの大漁で家が栄えた網元や親方、名主・年寄・百姓代などの村役人を勤めた人々、村会議員や学務委員などを勤めた人々などの名前は記録にも残り、この町誌にも幾度かその名前が載っているが、決してそれらの人々だけの力によって戸井町が発展したのではないことを、銘記すべきである。それらの人々も記録に残っていない多くの人々の支（ささ）えや援（たすけ）によって村行政や産業の発展に貢献（こうけん）したのである。
　戸井町の行政史、産業史等に名を残していない多くの人々こそ、戸井町発展の基盤であり、原動力であったことを忘れてはなるまい。
　「一将功成って萬骨枯れる」ような町村は発展しない。
　歴史に名をとどめない最大多数の民衆が、それぞれその所を得て、幸福な生活を送り、それぞれの立場で町村のため社会のために貢献（こうけん）することが町村の真の発展であろう。
　このような観点から、他町村の人々には関係も興味もない昔の戸主名を載せることは、「戸井町の過去の発展を支えた人々」として重要な資料であると考えて採録したものである。
　
（1）明治十三年（一八八〇）（瀬田来）

　
（2）明治十三年（一八八〇）（戸井）

　
（3）明治三十五年（一九〇二）（戸井）

　
（4）大正十五年（一九二六）（戸井）

　
（5）昭和八年（一九三三）十一月