本項では十八世紀後半以降、藩政に大きな影響を及ぼした蝦夷地警備の問題を取り上げる。特に、次項で詳しくみるように、津軽弘前藩の寛政改革(かんせいかいかく)は、蝦夷地警備(えぞちけいび)という軍役(ぐんやく)をいかに遂行していくかという課題にこたえることを主眼とした改革であることから、幕府の対蝦夷地政策の流れの中でみていくことにする。ただし、寛政改革の中心政策であった藩士土着政策(はんしどちゃくせいさく)が失敗した後も、蝦夷地警備はより強力に推し進められていくが、改革後の展開については本章第三節および第五節で扱うこととした。(なお、本項は菊池勇夫『幕藩体制と蝦夷地』一九八四年 雄山閣出版刊、同『北方史のなかの近世日本』一九九一年 校倉書房刊、長谷川成一編『津軽藩の基礎的研究』一九八四年 国書刊行会刊、浅倉有子『北方史と近世社会』一九九九年 清文堂刊、原剛『幕末海防史の研究』一九八八年 名著出版刊に多くを依拠している。)