殖産興業の展開

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明治十一年(一八七八)の第五十九国立銀行創設など、士族禄券などを主たる元手とする企業の設立が見られ、また、士族授産結社の活動が活発化するなど、新時代の地域経済を担う組織や人材の形成も進み始めた。りんご栽培などの農業部門も含め、弘前に固有の特産品生産の萌芽も見られ、また、地域産業の形成を促したり、みずから実践したりする動きも出てきた。
 縄、莚の生産は特産品の主なものであり、北海道へ移出されたが、県は、品質維持のために諭達を発し、粗悪品の混入を防ごうとした(「津軽産品縄莚製造に関する諭達」資料近・現代1No.一九七)。
 明治二十年(一八八七)の『青森県農商工統計表』により県内の工業会社及諸製造所を見ると、一〇の会社、製造所がある。そのうち六つが弘前に所在し、富田村、和徳町に各一が所在する。他の二つは青森米町と東津軽郡大野村に所在する。これから見ると、弘前は県内の製造所が集中して所在する地域であったといえる(表9参照)。
表9 工業諸会社及諸製造所表(明治20年)
名称印刷所裁縫所盛蚕所興業社漆器
樹産
会社
発誠社武田
蚕業所
白井
織物
竹内
製糸所
竹内
織物
総計
営業種別活版
印刷
洋服
裁縫
製糸織物漆器製糸
織物
製糸織物
所在地名東津軽郡
大野村
仝郡
青森米町
中津軽郡
富田村
仝郡
弘前本町
仝郡
仝町
仝郡
弘前本町
仝郡
弘前
和徳町
仝郡
弘前
百石町
仝郡
弘前本町
仝郡
仝町
創業年月明治
16年
7月
明治
17年
8月
明治
13年
3月
明治
12年
11月
明治
13年
7月
明治
16年
5月
文政
元年
5月
明治
19年
8月
明治
19年
7月
明治
19年
12月
資本金
8,000
 
2,100
 
8,000
 
18,000
 
2,725
 
2,500
 
5,000
 
2,500
 
3,500
 
1,500
 
53,825
株主人員451565320184
役 員23324317
職 工1740583520120765015422
雇 人3551455358
蒸気
機関
馬力
水車
馬力
営業収入金
4,040
 
2,500
 
852
 
3,039
 
361
 
1,510
 
2,870
 
2,820
 
1,000
 
543
 
19,535
営業支出金
4,000
 
2,200
 
836
 
2,909
 
3,447
 
1,650
 
2,700
 
2,759
 
1,880
 
1,043
 
23,424
青森県庁『明治20年青森県農商工統計表』明治21年
注)数値の誤りを補訂した。