弘前市の商工業行政の方向

522 ~ 524 / 965ページ
昭和四十三年(一九六八)五月八日に、弘前市政に中小企業対策を要望する協議会が弘前市民会館で開催された。この会は弘前商工会議所と青森県中小企業団体中央会の共催で、開催団体の関係者のほか、山内正三助役ら弘前市の担当者が参加した。山内助役の挨拶の要点は以下のとおりである。
①各種選挙の折には必ずといってよい程中小企業振興対策が掲げられている。しかし、その後の経済は御承知のとおり満足すべき稔りとはなっていないことは遺憾であるが、それだけに中小企業対策の難さがある。企業経営の中に行政がどこまで結びつけられるか大きな命題である。

②本市の中小企業対策の主力は、金融および信用補完、企業・業界診断である。この点については昭和三十五年より実施して来たが、或いはマンネリ化現象を呈しているとの御批判もあろうし、こうした行政に対する忌憚のない要望を聞かして頂き今後の参考としたい。

(『弘前商工会議所会報』一四八)

 参加各団体の質問が続いた後、最後に山内助役はそれらに対して回答した。それは次のものであった。
①弘前市の発展には第二次、第三次の発展が前提であり異論はない。今日の商工対策は交通網の関連で大きく変貌する。東北縦貫道路のインターチェンジが何処に極まるか、現在は新聞発表の域を出ないが、将来市の行政に禍根を残さぬよう十分配慮する。

工場誘致には特に雪害が大きな障害である。しかし、季節的な障害を除くため、下請系列化の問題は十分研究し早急に実現を期したい。

観光産業はもとより市の重点施策でもあり、国定公園申請のため弘前大学へ依頼し、基礎資料の整備を行なっており、大型観光地としての発展を期したい。

④りんごについては単に町のみならず県経済の問題であり、全県民の関心を惹起するとともに流通改善、融資面について出来るだけ可能な措置を講じたい。

⑤卸団地についても市の商工対策の重点でもあり、事業団融資の導入に極力努め、併せて低利資金の導入を図りたい。

労働問題については全く同感で、関係各機関とよく話合い善処したい。

津軽塗については要望に応えたい。只、求人については家内工業的考えを改め、付加価値の向上に努め、適正な給与を支払うよう要望する。

⑧防災街区については目下検討しており、資料もあるので業者間においても研究して欲しい。魚菜市場との関連も考慮し、目下検討中であり時間を貸して欲しい。駐車場については有料とすれば利用者が少なくなるという現象がある。民間への補助はケースによって検討させて欲しい。

⑨技能指導員の各企業への派遣はかなり困難だ。むしろ長期研修等の場を設けることは十分行政措置としてできるので早速検討する。

⑩市の工事については地元を優先することは当然であり、各組織を通して充分話合いたい。

(同前)

 弘前市の産業がりんごや米の農業に依存する側面が強いこと、また観光が重要な産業であること、これらに依存しつつ、弘前市は第二次、第三次産業を育成していかなければならないこと、そのために工場誘致を行い、津軽塗などの伝統産業を育成し、技術指導を行うと同時に、労働者の確保に協力し、労働条件の改善に努めること、また、魚菜市場卸売団地などの基盤整備を行うことなどが、質問に答える形で表明されている。また、高速道路の完成が間近で、インターチェンジがどこに作られるかが重要問題になっていたこともわかる。