弘前市建設計画の出発

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昭和三十年(一九五五)に弘前市と周辺の一一ヵ村と合併した際、新市建設計画が立案されていた(弘前市『弘前市企画史』一九九三年)。この計画は五ヵ年計画であり、第一の課題として、農地造成、地力増進対策と農業倉庫、農業センターなどのサービス機関の設置があるように、合併した周辺農村に配慮したものであった。もちろん、この計画には、商業工業の振興策や交通網整備なども盛り込まれていた。市村合併に当たっては「中弘地区市村合併促進協議会各部会決定事項」が準備された。部会は、行財政部、教育部、厚生部、産業経済部、建設部があった。このうち、産業経済部と建設部の内容は表53のとおりであり、新市において検討すべき事項が指摘されていた。
表53 中弘地区市村合併促進協議会決定事項(部分)
産業経済部農業委員会を市の区域を二つ以上に分けて置くとすればその区域及選挙による委員の定数及学識経験者から選出する委員の定数を何人とするか又一農業委員会をおくとすれば委員を増員するか、増員するとすれば何人か。一、農業委員会については、その数及び各委員会毎の委員の数並びに委員の報酬等は合併後一ヶ年間は現在のまゝとし、その後に於ては、市の区域を現在の県農業改良普及地区の区域を区域とし三つの農業委員会を置くものとする。
 農業委員会の職員をどうするべきか。農業委員会の職員は一般職の職員と同様とする。
 将来の農村行政はどうあるべきか。各村提出の農業生産五ヶ年計画を基本として細部については検討善処する。
  農政の重点
 一、米の増産を目標として品種改善、土地改良及水田裏作を奨励する。
 二、りんご増産を図り、りんご共同防除施設の強化に努める。
  りんご草生栽培並びに普通畑の作付転換により酪農の振興を図る。
 三、国有林の払下げ及び民有林の育成を図る。
 四、県営種鶏場の誘置。
 五、県営種畜場分場誘置。
 六、市営と殺場の設置。
 七、農業関係各種団体の指導育成強化。
 八、気象観測所の設置。
 九、農業専門担当課の新設。
 弘前市の商工業の発展はどうあるべきか。左の事項については重点的に施設を行ひ細部については新市に於いて検討善処する。
 一、農産加工を中心とした工場の誘置。
 二、中小企業の育成のため融資対策の強化。
 三、都市計画実施に伴ふ商業地区の設定と育成。
 弘前地区の観光資源をいかに利用整備すべきか。観光資源の整備と市営バスの実現に伴ふ観光バスの運行を行ふこと。
建設部村道を全部市道に認定すべきか。村道は全路線を市道とする。
 道路、橋その他土木施設の整備はどうあるべきか。道路の破損の状況及交通量を勘案して逐次補修又は改修を行ふものとし橋梁は腐朽破損の程度に応じ逐次架替又は修理する。
 弘前市の都市計画はいかにあるべきか。都市計画は基礎調査を行ひその方針を樹立する。
 既設公営企業はいかに伸張すべきか又市民の福祉のためいかなる公営企業を実施すべきか。公営企業については住民の要望を斟酌して逐次整備する。
弘前市役所所蔵資料による。

 五ヵ年計画がスタートした翌年の昭和三十一年には、弘前市建設審議会設置条例が作られ、審議会が発足した。さらに、昭和三十三年四月に、弘前市議会において企画課の設置が可決された。企画課設置の内容は以下のとおりであった。
 ①企画課の新設は現在の総務課調査係六名に、定員増のうち六名を合せて一二名で構成、企画、調査の二係を置く。課の事務分担は市政の総合的振興を目的とし、科学的調査・研究・開発の基本的調査企画および各課関係・各機関開発企画を調整する。

 ②昨年六一名の退職勧奨を実施したさい一〇名減とした市職員定数を今回企画課設置、新規職員採用などのため一六名を増員、合計九一四名とした。(下略)

(前掲『弘前市企画史』)

 企画課設置の目的は、岩木山麓開発、津軽灌排事業あるいは都市計画事業などの総合的調整を図ることで、かねてからの懸案であった。なお、企画課は翌年に、企画室と名称変更された。