新弘前市総合開発計画(昭和五十九年計画)の策定

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弘前市総合開発審議会は、昭和五十九年(一九八四)一月に、福士市長に対し、新弘前市総合開発計画の基本構想と基本計画を答申した。これは前年の十月に諮問を受けてから、七回の審議会や分科会での審議を経たものであった。そこで掲げられている都市像は前回の計画を踏襲したもので、「調和と活力ある人間居住空間の創造」を柱として、「市民がつくるまち」とし、①健康でこころふれあう生活都市」、②「人間の未来をひらく学園都市」、③「明るく豊かな産業都市」を将来の都市像としている。実際に策定された『新弘前市総合開発計画』では、審議会が掲げた都市のあり方は、都市の理念、及び理念を貫く方途とされ、また三つの都市像が重視されている。

写真222 第27~30代市長福士文知

 この計画が策定されるに至る経過は次のように評価されている。
 五十三年計画の策定直後に第二次石油ショックがあり、又、政府による赤字財政からの脱却を図る財政規模の縮小、更には第二次臨時行政調査会の報告に基づく大規模な行政改革等、国内の経済社会は大きく変貌してきた。
 一方、本市の経済社会は、水田利用再編対策、米・りんごの価格低迷、建設業等の停滞等国内経済の不況に歩調を併せて低迷を辿った。
 このような経済社会情勢を踏まえ、昭和五十九年第三次の新弘前市総合開発計画を策定した。そこでは、五十三年計画の基本理念と三つの都市像を踏襲しながら、他のものと比較して追いつくという思考の形式から離れ、生活の中で住み良さを実感できることを追求した計画であった。
(弘前市『第四次弘前市総合開発計画』一九九一年)

 こうした背景に加えて、昭和五十三年計画が立案された直後から、弘前市を含めた津軽地区がモデル定住圏に選定され、整備計画が立案されて実施されていた。津軽定住圏は、弘前・黒石・五所川原の三市と西津軽・中津軽・南津軽の三郡の一二町一三村で構成され、弘前市を核とした津軽地域広域市町村圏と五所川原市を核とした西北五地域広域市町村圏から成っていた。この計画は昭和五十四年に国土庁の指定を受け、県の指導のもとに計画を立案、実施した。また、この計画は国の第三次全国総合開発計画に基づいて出発したものであった。ところが、昭和五十七年(一九八二)に国は第四次全国総合開発計画を策定し、多極分散型の国土形成と交流ネットワーク構想を打ち出した。弘前市をはじめ、関係市町村は、新たな全国総合開発計画に対応する組織作りに取り組み、津軽定住圏構想の再編と継続を望んだ。津軽地方全体と、弘前市の開発の関係については、次のように記されている。
 津軽地域の開発については、従前各部門ごとの個別の事業計画によって進捗が図られてきたが、昭和五十六年七月、青森県が津軽地域開発基本構想を策定して総合的な開発の施策体系を構築した。基幹的な体系としては、豊かな暮らしと働く場の確保、住み良い環境の形成、人づくりと文化の伝承・創造の三つの大別があり、それらが更に分類されてそれぞれに方向が示されている。
 弘前市に関連の深い基盤整備の施策としては、県内各都市を結ぶ主要道路、県土横断道路青森空港アクセス道路等基幹道路交通体系の整備、青森空港の活用、七里長浜港の建設、鉄道網の整備等が行政の主導する大きな事業として位置付けられ、その促進がうたわれている。そのほかにも、各般の施策方向が示されているが、いわゆる基本構想であって、総括しての方向付けが大きな要素となっている。
 弘前市の総合開発計画における基本方向とそれに基づく諸施策の展開は、津軽地域開発基本構想の一つの進展であり、また、同構想における弘前市の比重を高めるものであって、産業開発の方向、学園都市の構想、文化施設拡充の計画、都市づくりの構想等、総合開発計画の推進は、県の構想による津軽地域開発の一翼をも担うこととなるものである。
 津軽地域開発基本構想の最終節では、主要プロジェクトを一〇系統に分け、農林水産加工振興事業、津軽新港(七里長浜港)総合開発事業、岩木山ろく総合開発事業など具体的な名称を挙げて推進方向が明記されているが、一つ一つについて具体的な、段階的な進展のみられることを期待する。弘前市における努力とともに県においての積極的な意欲と促進方を強く要望するものである。
 そのほかに、津軽地域を包む開発計画には、新津軽地域広域市町村圏計画、津軽地方生活圏定住基盤総合整備計画、津軽モデル定住圏計画があり、津軽地域における定住圏構想を示しているが圏域内市町村との連携を保ちながら、その方向に向かって進んでいく。
(弘前市『新弘前市総合開発計画』一九八四年)

 開発の基本計画は、①福祉、②保健と衛生、③教育、④文化向上、⑤学園都市、⑥農林業振興、⑦工業振興、⑧商業等の振興、⑨観光振興、⑩道路と交通の体系、⑪まちづくり、⑫生活基盤、⑬地域基盤、⑭地域活動、⑮行政効率化の各事項につき策定されている。