この町会所蓄積金は、明治元年頃には7320円余になっており、明治に入って場所請負人が廃止されると、地券売買の際買主より5分を積み立てさせて蓄積額を増やし、さらにこの蓄積金を貸し付けて増殖を図っていた(明治14年函館通常区会第3号議案「函館区共有金収支予算調説明書」『桜庭為四郎文書』道文蔵)という。この町会所積立金に関して、明治8年6月から明治10年10月までの「町会所予備基本金出納月表」(道立文書館蔵)というのが残されている。町会所予備基本金というのは町会所蓄積金の大きな部分を占めることは間違いないと思われるので参考として掲げておく(表2-40)。町会所予備基本金は現金が100円を越えると市中の商人へ貸し付けられて増殖が図られている。この月表は毎月主任戸長と出納担当副戸長が署名捺印の上、開拓使函館支庁民事課へ提出、承認を受けていた書類で、明治8年中は主任戸長は伊藤重兵衛、副が白鳥衡平、明治9年から翌10年は主任戸長が白鳥衡平、副は井口嘉八郎、出納担当副戸長は一貫して小島又次郎である。
この町会所蓄積金のほかに町会所には備蓄米が存在した。この備蓄米は明治3年7月に海岸埋め立て事業で出た差金(築立費用と土地払下代の差額)で市中非常救助予備米として購入された1000石で、蔵前通の蔵所構内の板蔵に貯蔵され、町会所が備蓄管理を担当していた。しかし明治7年9月にこの蔵所の地所の払下げが決定、板蔵は取り壊されることになったため、町会所は函館支庁の指示のもと高砂町に町会所蓄積金で板蔵を建設、予備米を移した。板蔵建設費は753円余で、予備基本金から400円、南新町地賃から353円余を支出した。この時無代価払下の含みを持った達書も出されたが、同9年4月、官費購入米であるので官民共有米と心得るように、さらにこの米の出納調査だけは函館支庁会計課が担当する旨の達(「区入費評議留」道文蔵)があった。このほか町会所は町会所持ちの共有地を所有し、地代金家賃が蓄積されていた。つまり町会所蓄積金(穀)の主な構成要素は町会所予備基本金、市中非常救助予備米、共有地の借地借家料のようである。
表2-40 町会所予備基本金出納月表(明治8年6月~10年10月)
年月 | 有金総額 | 内 当月 貸付金利 | 出金総額 | 貸付金総額 | 内 新規貸付金 | 貸付人 | 当月出金額 | 当月出金費目 | 翌月繰越金 |
8.6 7 8 9 10 11 12 9.1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 10.1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 | 円 5,223.299 5,270.832 4,919.365 4,967.898 5,017.430 5,066.963 5,117.496 5,168.029 5,219.562 5,271.095 5,323.461 5,375.827 5,429.026 5,482.225 5,536.257 5,590.289 5,645.154 5,700.019 5,755.717 5,812.249 5,868.781 5,908.646 5,949.345 5,990.044 6,031.633 6,073.222 6,115.645 6,158.901 6,202.157 6,245.353 | 円 47.533 48.533 48.533 49.533 49.533 50.533 50.533 51.533 51.533 52.366 52.366 53.199 53.199 54.032 54.032 54.865 54.865 55.698 56.532 56.532 56.532 57.366 57.366 58.196 58.196 59.030 59.863 59.863 59.863 | 円 5,270.832 4,919.365 4,967.898 5,017.430 5,066.963 5,117.496 5,168.029 5,219.562 5,271.095 5,323.461 5,375.827 5,429.026 5,482.225 5,536.257 5,590.289 5,645.154 5,700.019 5,755.717 5,812.249 5,868.781 5,908.646 5,949.345 5,990.044 6,031.633 6,073.222 6,115.645 6,158.901 6,202.157 6,245.353 | 円 4,753.031 4,853.031 4,853.031 4,953.031 4,953.031 5,053.031 5,053.031 5,153.031 5,153.031 5,253.031 5,253.031 5,353.031 5,353.031 5,453.031 5,453.031 5,553.031 5,553.031 5,653.031 5,753.031 5.753.031 5,753.031 5,853.031 5,853.031 5,953.031 5,953.031 6,053.031 6,053.031 6,053.031 6,053.031 | 円 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 100.000 | 平田儀平 平田儀平 平田儀平 平田儀平 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 佐野専左衛門 | 円 400.000 16.667 16.667 16.667 16.607 16.607 16.607 16.607 16.607 16.667 16.667 | 積蔵普請 学費 学費 学費 学費 学費 学費 学費 学費 学費 学費 | 円 117.801 66.334 114.867 64.399 113.932 64.465 114.998 66.531 118.064 70.430 122.796 75.995 129.194 83.226 137.258 92.123 146.988 102.686 59.218 99.083 138.948 79.647 120.406 61.995 103.584 46.007 89.263 132.459 175.655 |
貸付金内訳
氏名 | 預ヶ金 | 月利息 | 月利息率 | 備考 |
国領平七 武富平作 杉野三次郎 平田儀平 佐野専左衛門 | 円 1,000.000 2,000.000 1,753.031 400.000 900.000 | 円 10.000 20.000 17.530 4.000 7.500 | 0.010 0.010 0.010 0.010 0.008 | 25円に付25銭 25円に付25銭 25円に付25銭 25円に付25銭 30円に付25銭 |
合計 | 6,053.031 | 59.030 |
明治9年「町会所金穀出納評議留」北海道立文書館蔵より作成