草地改良計画

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昭和三八年、支庁は国策スローガンであった所得倍増にあやかって、三たび大型の城岱万畳敷開発計画を模索するため、その概要書をつくり関係町村に配布している。
 昭和三九年六月二五日、南茅部町長米田陽は渡島支庁長矢野康一行を迎えて、万畳敷の現地踏査をおこなった。このことは、のちの草地改良事業計画の本格的事業の促進に大きな源動力となる。

泣面山方面の万畳敷原野の状況


ブナ林の状況


試作圃収穫の状況


泣面山を望む


岳を望む


調査参加者


原野を縦貫する送電線

万畳敷原野 昭和39年6月25日
     函館城岱(萬畳敷)地区概要書
 (渡島支庁)
一、位置
      北緯     東経
       四一度五五分 一四〇度五〇分
 
二、所在  函館市、亀田町、南茅部
 
三、標高  最高九六一メートル 最低二五〇メートル
      最多平均  六〇〇メートル
 
四、面積  四、四〇〇ヘクタール
 
五、所有別面積内訳  個人有   七八五ヘクタール
            公有 三、二二七ヘクタール
            国有   三八八ヘクタール
            (開拓財産)
 
六、立地条件
  A 地形
   本地区は、函館市北東約一〇粁地点を南端に西端は横津山系を背負い、東端は三森山を抱きながら弓状に展開し北端は、南茅部町泣面山に至る。地区中央部は通称城岱原野と称され袴腰岳山麓と併せ地区中最大の平坦並びに緩傾斜を呈した部分である。
   又、比のところに郡界、町村界合し、分水嶺となり、松倉川の源となって、津軽海峡に注ぐ。北端は通称萬畳敷原野と称され本地区中最高の平坦部を展開し、西の四囲は太平洋に注ぐ大船川。磯谷川の峡谷せまり急傾斜を呈しているが泣面山山麓は別添写真のように緩傾斜である。なお、南端は地区中最低の高部を占め緩傾斜が稍輻輳した地形となっている。
  B 土壌
   地区の基層は横津岳、泣面山等、その他旧火山の噴出せしめた溶岩集塊岩凝灰岩等により生成されている。その上部に更に駒ヶ岳噴火による火山灰が数回に且り約一メートル降灰したもので土性としては火山灰性壌土となっている。第一層は昭和四年駒ヶ岳火山礫層で粒径一センチメートル大の全く未風化の浮石であるが二層の腐蝕に富む砂壌土と混同することにより、その量が少いので大きな影響はない。
  C 酸度
   調査中(前回地区北部調査時第一層六・三pH 第二層六・〇pH)

地区中部土性


地区北部土性

 
七、植生
 (一) 草奔 大部分は根曲竹、熊笹、かや等
 (二) 樹木 天然広葉樹が大部分で他一部に、とど松、落葉松、散在を見る。広葉樹々種は、白かば、ぶな、等
 
八、気象
 本地区は渡島半島南部に位し、一般に気候は温暖な地域に属するが標高の高い本地は、大野、森、函館、各測候所のものと比較出来ない。そこで昭和二六年本地区間においての観測(一ヶ年)した結果は次表のとおりである。

(表)

  右記により稍高冷になるが、試作の結果から見て馬鈴薯、根菜類、牧草の栽培は可能である。
 
九、水利
 (一) 地区北部方面(萬畳敷)
  磯谷川支流の沢沿い低地及びこれに続く泣面山々麓は押出し堆積物の火山砂礫層中に深さ四~一五メートルの帯水層が存在し、水量も豊富であり浅井戸により飲料水を容易に取得し得る。又本地内北端に小沢あり家畜の飲料は略可能と見られる。
 (二) 地区中南部方面(城岱より南)
  本地域は松倉川支流寅沢始め数条の小沢あり水量豊富であり家畜の飲料は可能である。
 
一〇、交通道路
 (一) 地区北部方面
  南茅部町海岸より磯谷温泉経由硫黄山までの旧鉱山道路があるがこの道路は一部木橋の決壊により車馬の通行は出来ない。現在は磯谷温泉所在地より迂回し磯谷川の西方に沿った林道により約五粁本地区北端に達す一部を除いて又、本地とは直接的な結び付きはないが海岸より大船林道を経由する町道延長一四・九キロメートルの林道が林務署の手で進められて居り後述の湯の川鱒川路線と接続の予定である。
 (二) 地区中部方面
  亀田町より赤川部落迄は町道により道路良好で約一二粁は車馬の通行は可能である。赤川部落より東北に分岐する林道により城岱原野に達するが急傾斜多く地区内林道共に車馬の通行は不能である。
 (三) 地区南部方面
  函館市湯の川市街より北東に道費道により約五粁、之より分岐する市道約七・五粁を以って南部地区中央に達することが出来車馬の通行は可能である。地内を走る林道歩道は車馬の通行は不能である。
   又、(一)において前述のとおり湯の川鱒川路線は本地区市道に接続せしめるべく目下建設の途上にあり一部は本地内を貫通し利用し得る。
 
一一、今後の開発の構想
 (一) 目的
  兎角低迷にあえいだ渡島産業の振興に活路を見い出し国の指向する農業成長生産物の選択的拡大を計り地域農漁家の所得の倍増を計り渡島経済圏、確立の基礎を造るにある。
 (二) 開発方式
  国の指向する農業成長生産物の選択的拡大を目標に地域農家の乳牛多頭飼養による酪農経営の確立と育成牛、肉牛(沿岸漁水対象)の育成牧野として大規模草地造改良方式を採択し効率的利用を図る。
 (三) 具体的対策
A 土地利用

(表)

B 事業費

(表)

C 作目
 前記六のB及び八並びに試作圃の生育状況(別紙写真のとおり、試作圃の設計成績について詳細照会中)等から見て牧草は勿論、家畜根菜等の飼料作物は生育可能であり成果は充分期待し得る。
D 家畜
   (a) 乳牛
     地域農家に対し、貸付牛の優先貸付にするよう努力し、本地区の効率的利用により自然増を計る。
   (b) 肉牛
     地域酪農家沿岸低所得漁家を対象に現在導入されつつある肉牛の多頭飼養により経営の安定と所得の増大を期し、本地区牧野の利用を図る。
   (c) 育成牛
     地域酪農家、附近隣接町村酪農家を対象として本計画により乳牛の多頭飼養経営に移行する場合口用乳牛の需要が増大し経営面績の狭小にあえぐ地域並びに附近酪農家は育成牛の育成が困難視されるので本地区内に育成牧場の施設を施し、乳牛の育成を図る必要がある。
   以上により家畜の大半は有効に本地区を利用し、経済効果は期してまつべきものと思料される。該当三市町別大家畜動態(三〇、三四、三六、市町勢要覧による。)
 
 昭和四二年、一部市町村が肉用牛増殖地域の指定を受けた。
 昭和四三年七月一七日、管内一市一一町村、函館市・亀田・大野・七飯・森・松前・戸井・尻岸内椴法華・南茅部・鹿部・砂原で、三度、万畳敷開発の期成会が組織され、南茅部町長米田陽が会長に選任された。
 開発をすすめるためには、北海道電力の社有地である岩戸地区四五〇ヘクタールをあわせて国営規模の草地開発として、管内の肉牛の振興をすすめるという計画である。
 四三年一〇月九日、指導路線にのり関係町村は、肉牛繁殖基地として開発する目標を画いた。
  草地造成  七〇〇ヘクタール
  肉牛    夏期 一、六〇〇頭  冬期 二三〇頭
  この供給乾草  一、三八八トンを採る
 昭和四四年度新規大規模草地改良調査計画地区選定申請書を提出し、翌四四年四月二三日、農林大臣より地区選定の通知をうけた。
 調査費
  昭和四四年    八、八五〇千円
    四五年    六、〇〇〇千円
    四六年   一四、〇〇〇千円
 農林省は四七年も調査をおこない、そのうえで全体設計を作る。総事業費一二億円。
 当初は一部事務組合をつくる。
  子牛の預託
  子牛分譲、乾燥、供給
  乾草供給
 の三本柱の利用を計画。
 国道のヒヤリング段階で数回協議の結果、事業主体を南茅部・鹿部の運営にすることになった。
 利用方式についても、両町村が北海道開発コンサルタントの指導をうけ、繁殖育成牧場方式を採用、渡島支庁は独自の計画案を作成した。
 両町村はこの支庁案を基礎に開発局などの指導をうけながら、現地に即応した計画案を作成した。これによれば、総事業費は九三〇、七一五千円であった。
 鹿部は昭和三九年度から肉用牛の導入をおこない、現在飼育牛四五〇頭となり、昭和三八年以降二〇〇ヘクタールの草地造成を実施している。
 
 基本構想
 南茅部は未利用の万畳敷を積極的に開発して、鹿部村の専用種一、一四四頭の放牧、及び乾草の供給をうけて哺育センター及び肥育センターを設け、乳用子牛四〇〇頭の導入により常時六八〇頭の飼肥育をするため公共草地を必要とするので、両町村の増殖計画にあわせて約五四〇ヘクタールの草地開発を行おうとする計画である。
 道有林三八八町歩、現況は開拓農地であり可。北電四五〇ヘクタールの売渡しを文書で約束、これも可。
 道路債で大船林道から泣面山のうしろを回る道路と、黒羽尻から北電の山へ行く道路をつなぐ補助的道路をつくる構想である。