水文地質学

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水文地質学というのは、地下水を溜める器の性状、地下水を含む地層や岩石の層相変化や連続性、それらの透水性や地下水を溜める能力などの性質について検討する学問(地学事典・平凡社)である。帯水層とは、地下水により飽和された透水層であり、大局的にみると特定の岩相からなる地層と一対に対応する場合が多い。津軽平野南部地域の場合も、帯水層と地層区分が一致する傾向にあることが水源ボーリング資料から確認でき、「帯水層と地層を同義とする」検討、つまり帯水層を鍵にした地層区分が可能である。
 一方、津軽地域における多くの温泉貯蔵形態は、古くは石油鉱床に伴う石油かん水的性質を示す、地層に閉じこめられた地下水(化石水的状態)とされた(岩井、一九八〇)。しかし近年では、短期間に多くの温泉が開発されているにもかかわらず、枯渇(こかつ)することなく温泉水のくみあげが継続されていることを根拠に、帯水層中を移動する循環水(地層水とも呼ぶ)と改められている(青森県、一九九一)。筆者の見解は後者に属すが、この事は特徴的な温泉帯水層を対比することで地層区分も可能になることを示唆している。
 透水性は、帯水層中における地下水の流れやすさを表す指標であり、帯水層を構成する砕屑(さいせつ)粒子の粒径・間隙率・固結度に関係することから、透水性の把握により岩相区分(表8)およびその堆積環境が推定できる。

表8 地質と水理条件(建設省水文研究グループ編,1997より)

 帯水層中の地下水は、循環水であり、降水・河川水等からのかん養によって補給され、海洋への流動・人為的揚水により流出する地下水系を形成する(図35・図36)。他の帯水層からの漏水による補給もあるが、加圧層(図35参照)を通過する量は少量であり、最も効率的な地下水の補給は、帯水層(あるいはそれに対比される地層)がかん養域(おもに丘陵および山地)に分布し、直接降水・河川水等が帯水層中に流入することである。

図35 地下水系(水収支研究グループ訳,1978より)


図36 陰イオン相と地下水の流動による水質変化
(Morgan,c.o.,et al.,USGS., 水収支研究グループ編,1993より転載)