県内の月別降水量

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降水量は雲の生成や降水の様相により様々であるが、複雑な地形から受ける影響も極めて大きい。したがって降水量分布には局地性があり、気象じょう乱の型(高・低気圧、前線など)や季節によっても異なり、特に雷雨性などは地域差が著しい。一般には平地に比べ標高が高いほど降水量が多い。また高温・多湿な低緯度地方では降水強度も降水量も桁違いに多い。地球全体の年平均降水量は、約九〇〇ミリという試算がある。理科年表に掲載された日本の気象官署八〇地点の平均降水量は、一七六三ミリ(一九九〇年までの平年値)である。日本国内の約一三〇〇アメダス地点の平均降水量では、一八〇〇ミリで世界平均の約二倍である。
 表示した月別降水量は、アメダスの準平年値と気象官署の平年値(統計年数により区別、降水量にも差がある)である(表16・17)。年間降水量は、青森一三〇〇ミリ、弘前一一〇〇ミリ、深浦一四〇〇ミリ台である。津軽地域全体の年間降水量分布をみると、八甲田山地から十和田カルデラ帯にかけてが一八〇〇ミリ以上で県内最多域。白神山地から県境にかけての山地は一六〇〇ミリで多雨域。津軽半島北部に局地的ながら一五〇〇ミリの多雨域がある。津軽平野は周囲三方の山地多雨域に比べ相対的に極小域である。弘前・中津軽地域は一一〇〇ミリ台と少なく、黒石は約九〇〇ミリで極小域の中心になる。津軽地域平均では、一四〇〇ミリである。ちなみに、日本各地の地域平均の年降水量は、札幌が一一〇〇ミリ(北海道地域平均九〇〇~一二〇〇ミリ)、八戸の一〇〇〇ミリよりやや多く、秋田の一八〇〇ミリ、新潟の一八〇〇ミリ(全国平均)よりやや少なく、冬の降雪量が多いことから、東京の一四〇〇ミリとほぼ同じである。
表16 青森県内の月別降水量(mm)-アメダス準平年値
統計期間(1979-1990)
 月
地名
123456789101112
青森14311966637085941141071041321531252
弘前1048979616173114129119951001131138
深浦89557496941101641571801441341341432
八戸3538487583991271491727262401000
(小数点以下5捨6入)

表17 月別平年降水量(mm)-気象官署
統計期間(1961~1990)
 月
地名
123456789101112
青森17012182687085101140127981361621360
八戸6250496879901211431668063451016

 季節的にみると、夏六月~八月の降水量分布では、八甲田山地から県境山地にかけて五〇〇ミリ以上と多い。津軽平野から青森平野にかけては四〇〇ミリと少なく、周辺の山地との差が明瞭に現われている。冬十二月~二月の降水量はほとんど降雪によるもので、八甲田山地を中心とした山岳地帯で五〇〇~六〇〇ミリと多いが、青森湾沿岸の青森市周辺でも多いのが特徴的である。比較的少ない地域は、弘前・中津軽地域で三〇〇ミリ、黒石が二〇〇ミリの最小となっている。山岳の積雪は暖候期における重要な水資源として備蓄の役割を果し、下流の津軽平野を潤す。
 また降水量は、気圧・気温などの気象要素に比べ、年による変動幅が非常に大きい。例えば、青森の年間降水量の最多は昭和二十二年(一九四七)の一九六六ミリ、最少は明治二十年(一八八七)の九四四ミリとなっていて、この差は一〇〇〇ミリもあり、平年値からも五〇〇ミリ前後の差になる。月別の降水量変化では、青森は降雪による十二月から一月にかけての季節風期間が多く、一月が最多となっていて暖候期でないのが特徴的である。弘前は八月・九月に多く、原因別気象じょう乱は、前線の停滞によるものと太平洋高気圧縁辺での前線性の局地的大雨による場合が多くなっている。深浦では七月から九月にかけて多く、前線の停滞によるものと台風の影響が大きい。また、月降水量の七〇ミリ以下の極小月をみると、黒石一月~五月、鰺ヶ沢・市浦二月・三月、深浦二月、蟹田三月、青森・五所川原三月~五月、弘前四月・五月などとなっている。これらから、降雪の多小、期間の長短および乾燥期などの地域特性がうかがわれる。