弘前市長らの商業金融に関する意見

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弘前市長長尾義連と商工会議所の佐藤才八ほか一五人は、商工業発展策をまとめ、提案した。その内容は金融、交通運輸、雑の項目と工業関係の項目に分かれるが、金融ほかの項目に対する意見は次のとおりである。
生産調査要項
 金融
改善要項
(一)小銀行ノ併合ヲ図リ、金融機関ノ整理ヲ為スコト

(二)農工銀行ヲ督励シ、設立趣旨ノ遂行ニ努メシムルコト

(三)地方商工業ヲシテ可成問屋若クハ産業組合ヲ作ラシメテ、信用ノ基礎ヲ鞏固(きょうこ)ニシ、銀行ヲ利用セシムルコト

 交通機関
改善要項
(一)荷馬車積載量ノ制限ヲ撤廃スルコト
 雑
第一章 産業組合ノ部ニ於テハ、改善要項第十五ノ次ニ左ノ一項ヲ加フルコト

 十六、毎年政府ヨリ融通スル低利資金ヲ県ニテ借入レ、県ヨリ直接ニ組合ニ貸付スルコト

第二章 物産陳列館ニ於テハ、助成方法トシテ既設ノ物産陳列館ニ補助ヲ与ヘ、左ノ事業ヲ挙行セシム

(一)本県物産陳列ヲ為サシムルコト
(二)参考品ヲ蒐(しゅう)集シ之ヲ当業者ニ展示セシムルコト

 ここで取り上げられた産業組合に関する改善要項とは、意見書の前提となった青森県内務部の調査報告に含まれていた事項であり、以下の一五項目であった。
一、未設町村ニ適切ナル組合ヲ設立セシムルコト

二、既設貯金講若クハ共同販売及購買事業ヲ行フ私設団体ノ組織ヲ変更セシメ、産業組合ヲ設立セシムルコト

三、新設組合ノ目的ハ、信用ヨリ購買ニ、購買ヨリ販売ニ、生産ノ順序ニ従ヒ、漸次兼営ノ歩ヲ進メシムルコト

四、組合ノ組織ハ、有限ヨリ保証ニ、保証ヨリ無限ニ、漸次責任ノ増加ヲ図リ、以テ信用ヲ累進セシムルコト

五、組合員ハ可(ママ)成的域内ノ大部分ヲ網羅シ、共同ノ真義ニ添ハシムルコト

六、猥(みだ)リニ事業ノ範囲ヲ拡張スルヲ戒メ、専ラ資金ノ充実ヲ図ルヲ以テ本義ト為サシムルコト

七、猥リニ借金政策ニ腐心セシメス、組合員ヲシテ自活的精神ヲ了得セシムルコト

八、組合ノ経営ハ、主トシテ実質ヲ尊ヒ、形式的ニ陥ラシメサルコト

九、資金ノ充実ハ、可成的自治的ニ之ヲ図リ、貯金ノ奨励ニ重キヲ置カシムルコト

一〇、各種組合資金ノ固定ヲ戒メ、其ノ運用ヲ良好ナラシムルコト

一一、組合員ノ訓練ヲ図リ、又其訓練ヲ為スニハ、之ヲ道徳ト経済トニ結ヒ付ケシムルコト

一二、事務ノ整理ヲ図ラシムルコト

一三、組合ノ指導監督ヲ一層周到ナラシムルコト

一四、組合理事者ノ修練ヲ図ルコト

一五、既設組合ノ域ヲ整理シ、且ツ組合員ノ数ハ相当増加ヲ図ラシムルコト

(青森県立図書館所蔵資料)

 ここで問題となっている産業組合は、町村や大字単位で結成された組織であり、近隣の住民相互が助け合って経済行為を行うための組織であり、明治後期以降に設立され、特に大正期に入って数が多くなった。このなかには業務別には、信用、購買、販売、生産の各組合やいくつかの業務を兼ねるものがあった。弘前市長らの提言は、この産業組合に、政府の資金を導入する際に、県の関与を求めているのである。この提言は、金融に関してその整備を求めていることと対応している。