函館市街地改正調査済収租ノ義伺 |
当港支庁管内函館市街ノ義、明治五年沽券税発行以来売買等ノ為メ地価ノ昂低有之、旁十年十二月地券発行条例御達ニ基キ、地価改正調査着手可為致ノ処、其際ハ専ラ管内耕宅地調査中ニ付、同年十一月ニ至リ地位等級等調査ノ為メ、地価鑑定人及ヒ公撰ヲ以地主総代人ヲ置キ着手為致、同十月下旬粗調査了ノ際、十一月十六日鰪澗町ヨリノ火災跡道路更正ノ為メ、地所ノ変換ヲ生シ随テ各町ヘモ影響ヲ及ボシ、前等級調モ画餅ニ属シ候間、翌十二年融雪ノ期ヨリシテ右調査順序ヲ経、実地丈量ニ着手、同十一月下旬既ニ丈量モ相了リ候処、十二月六日堀江町ヨリノ大火引続道路更正ニ付テハ一層地所ノ変換モ甚タシク、且ツ改正路線ニ係ル民有地買上道路建築等旁調査場合ニ至リ兼、漸ク去十三年十月ヨリ再ヒ地主総代鑑定人ヲシテ、現場商業ノ盛衰運搬ノ便否其他諸般ノ景況等ヲ鑑査セシメ、其少シク不適当ト認ル廉ハ再調ヲ命スル等、反覆審議ノ上毎地ノ優劣ニ随ヒ地位等級ヲ区内通シテ四拾壱等トシ、上等百坪金千百円ニ起リ下等金四円ニ止マルノ地価ヲ得候、右ハ当時実際賃借上ノ利益並ニ売買ノ景況等審査スルニ、適当価格ト信認候ニ付地主一同ヘ及告示候処、毫モ異議ナク一筆限リ地価帳ヘ銘々調印相済候条、別紙新旧税比較表面ノ通本年一月ヨリ収租ノ義御允裁相成度、書類相添此段相伺候也 |
明治十四年六月一日 |
函館支庁在勤 |
開拓大書記官 時任為基 |
開拓長官黒田清隆 殿 |
(明治十一年「市街地改租書類」) |
地租改正後発行の地券
このように函館の地価改正については、「北海道地券発行条例」の達しにより調査に着手し、明治11年10月下旬に一応地位等級が出来たのである。その直後大火により街区改正が行われ、先の等級に変更が生じることになった。さらに明治12年12月の大火により街区改正が広げられるため、翌年になり再度調査をし、5月に地主総代鑑定人より区役所へ地位等級表が提出された。つまりこれらの大火は、地租改正の施行時期を遅らせるとともに、街区の様子を大きく変えることになったのである。
このことから1つ問題が生じることになった。それは明治12年6月25日付の布達により、12年の上半期分の地租は仮に今までどおり納め、地租改正がなされた時に不足分を納めるという内容のため、明治11年の市街の景況と明治12年大火後の景況には、おのずと違いがあり、先の布達が生きている限り改正後の地租によって整理することが難しくなったのである。このため明治14年3月10日付で函館区長心得区書記桜庭為四郎名で開拓大書記官時任為基へ「現今之景況ヲ以テ地価相定十二年已降之地租徴収相成候テハ不適当ニ可有之」との判断から、先の布達の取消しを副申している。そしてこの件については、同布達を廃し「昨十三年十二月迄ハ市街宅地々租従前ノ通沽券税ニ引直シ徴収相成」となり、地価改正にともなう地租改正は14年1月から施行することになったのである(明治11年「市街改租書類」)。
この時を境にして市街地の新旧税を比較してまとめたのが表4-6である。又改正後に表4-7のとおり新たに地券が引き渡された。この比較表で留意する点は、宅地の坪数が改正後減じているが、これは改正前の数値には畑地が含まれていたことが考えられ、実質的には増加していたと思われる。また崖地も数字化されているのは、明治12年大火後の街区改正などとの関連で、明治13年4月21日に布達された「崖地保全規則」などによるものと考えられる。また同表は全体的には当時の土地利用をも表現しているのである。また、地券数については、「沽券地請印帳」の数字を明治6年段階での地券数と理解することが可能であれば、改正時において約2倍に増えたことになろう。
地目 | 旧地坪 | 活券価 | 活券税 | 改正坪数 改正段別 | 地価 | 地券税 | 坪数段別比較 | 地価比較 | 税金比較 | |||||
増 | 減 | 増 | 減 | 増 | 減 | |||||||||
民有地 | 第1種 | 宅地 | 672,684 | 715,173 | 7,149 | 610,541 外崖地 1,799 | 966,115 | 9,661 | 外崖地 1,799 | △62,143 | 250,942 | 2,512 | ||
畑 | 26町8段9畝 外畦畔2町1段9畝 | 1,987 | 19 | 26町8段9畝 外畦畔2町1段9畝 | 1,987 | 19 | ||||||||
第2種 | 村社地 | 951 | 973 | 22 | ||||||||||
道路敷地 | 307 | 307 | ||||||||||||
墓地 | 23,435 | 25,486 | 2,051 | |||||||||||
火葬場 | 1,332 | 1,343 | 11 | |||||||||||
官有地 | 1 | 神地 | 1,959 | 1,960 | 1 | |||||||||
2 | 官用地 | 72,762 | 74,690 外崖地 333 | 1,928 外崖地 333 | ||||||||||
宅地 | 224,464 外崖地 194 | 224,464 外崖地 194 | ||||||||||||
第3種 | 農業仮博覧会場 | 24,432 | 24,432 | |||||||||||
外国人居留地 | 14,994 | 14,567 | △427 | |||||||||||
招魂社地 | 5,422 | 10,075 | 4,653 | |||||||||||
公園地 | 16,129 | 14,534 | △1,595 | |||||||||||
樹芸園 | 24,569 | 84,203 | 59,634 | |||||||||||
官林 | 136,448 | 136,448 | ||||||||||||
荷揚場 | 1,102 | 1,102 | ||||||||||||
井戸地 | 87 | 65 | △22 | |||||||||||
堂宇地 | 805 | 805 | ||||||||||||
墓地 | 21,913 | 16,927 | △4,986 | |||||||||||
塵焼場 | 89 | 89 | ||||||||||||
第4種 | 学校地 | 3,865 | 3,971 | 106 | ||||||||||
女紅場 | 1,963 | 2,018 | 55 | |||||||||||
病院地 | 5,472 | 5,483 | 11 | |||||||||||
寺院地 | 8,261 | 15,123 | 6,862 | |||||||||||
総計 | 900,230 | 715,173 | 7,149 | 1,269,606 外崖地 2,326 畑地26町8段9畝 外畦畔2町1段9畝 | 968,102 | 9,680 | 438,549 外崖地 2,326 畑地 26町8段9畝 外畦畔2町1段9畝 | △69,173 | 252,929 | 2,531 |
 
表4-7 地券状引渡目録
明治11年「市街改租書類」より作成
町名 | 枚数 |
富岡町 鍛冶町 旅籠町 天神町 駒止町 船見町 山背泊町 台町 会所町 相生町 元町 寿町 曙町 汐見町 青柳町 春日町 住吉町 谷地頭町 大町 仲浜町 弁天町 西浜町 幸町 大黒町 鰪澗町 末広町 東浜町 船場町 恵比須町 蓬莱町 地蔵町 豊川町 西川町 汐留町 宝町 東川町 大森町 鶴岡町 若松町 音羽町 海岸町 高砂町 大縄町 真砂町 | 3 77 87 130 35 142 97 38 57 94 45 24 28 13 80 41 191 42 45 26 86 38 8 129 52 115 53 8 83 147 66 53 107 31 32 242 7 69 111 86 115 22 12 0 |
総計 | 2,967 |
明治11年「市街改租書類」より作成