口説節

466 ~ 470 / 521ページ
 銭亀沢を筆頭に道南一帯に伝承されている。椴法華村から函館市までの地名、地形、名物、社寺、伝説などを歌詞に織り込んだ地名口説節である。佐々木基晴により全国的に知れ渡った。また『戸井町史』にも数編収録されている。内沢みえによると「姑の故内沢カトが伝承していた口説節を佐々木基晴が歌詞や旋律を現代風に変えて道南口説として歌っている」という。渋谷道夫の調査記録に故吉沢北斗の口説節がある。中浜清一はこの曲の旧節(道南ジョンカラ節とも呼ばれる)を14番まで伝承している(譜例22)。中浜清一は「内沢さんの歌った口説は、歌詞の順序は道順から考えると、違うかも知れない」ともいう。江差追分と同様に特定団体や個人により整理されてメディアにより広められ、民謡としての本来の姿が一部失われて伝承されている一例であろう。(譜例23)

譜例22 道南ジョンカラ節(旧節)


譜例23 口説節

 
 資料17 (伝)故内沢カト伝承の口説節(内沢みえ提供)
  1番 ヨッ/(合いの手(囃子))オイヤーアーサーアーエーコラダッタラすだらそろってるヤセデーナンショショーガヅションベン/ダラキンタラフドー/ウオッ/わたっちや(私) 小安の荒浜生まれ/小安生まれでなー 鍛治村で育ち/わだっしゃ(私者) 鍛治村の荒山育ぢ/声の悪いどっこは 親父の譲り/上手くないのは シショ(師匠)ないや故に/(合いの手)ドドドッコイ ドーダネ コラ コッコロカラタンマラノッコラ 一族内から シンヌルハイ オ(ア)イ/ヨッ/2番 ハーわだっちゃ(私者)鍛治村の荒山育ぢ/嘘で丸めだのは ジョンガラ節よ/声の悪いどっこあは 親父の譲り/文句無いのは シショ(師匠)ない故に/一つ歌いましょはばかるながら/ここにおいい(御居い)の 皆様方よ/おちと(落ち度)有るとこ お許しなされ/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ/ヨッ/3番 インヤーおちと(落ち度)有るとこ お許しなされ/一つ歌いましょ はばかるながら/嘘で丸めだな ジョンガラ節よ/さーさこれから 文句にゃかかる/文句なによと 尋ねてきげ(聞け)ば/(合いの手)コラコラコラ タンマラノッコラ 一族内から しくじるハイ/ドコドッコ ドーダネッコラおちょこちょいは何処にいたウッ/ヨッ/4番 ハー上(かみ)でひゅう(言う)なら矢越の崎よ/下(しも)で言うのは 恵山のお山/登り3里に下(くだ)りは三里/りょうほ(両方)合わせでな 六里の峠/登り詰めれば 権現様よ/チョイと左に はても哀れだな 塞の河原ござる/こいしこいしと つめたて せめられて/ちょいと下(さ)がればな の おのどーりの岩/(合いの手)コラサッ/ハッ こーくるからたまらぬ・・・(不明)/5番 チョイト下(さ)がればな おのどりの岩/波と岩との喧嘩は出来で そこにおのどりゃ さいぼにんに入った/運の悪いさに片羽ねもがれ こしてられぬ 湯治にあがる/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ/6番 ハーザーザこれから湯治にあがる/腰が わらすすけ(草鞋付け?) 椴法華下(さ)がる/こえどミタナイ(根田内?) 情げの古武井/想いかけだろ ありゃシルギシナイ(尻岸内)/日浦(日和?)悪いけりや日浦に回る/お前ハラダツ(原木たつ?) わしゃカマウダ(鎌歌)よ/(合いの手)コラコラコラコラ タンマラノッコラ/テンテコシャンシャン テンテコシャンシャン/7番オイヤーフッ おまやからたつ わしゃカマウダ(鎌歌)よ/うと(音)に聞こえだが 鮫川(?)ござる/確かに見えるは アリャ武井(ムイ)の島/戸井の架け橋 霞むのはきどり(千鳥?)/坂の下り口に カネキジング(かねき家の)なやっこ(納屋っこ)/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ/ヨッ/8番 エンャー 坂の下り口にゃ カネキの納屋よ/とーりや通ると浜中通って 最早日も暮れまるでまる/まる宿屋は 何処かと聞けば まる宿屋は きゅうたでござる/(合いの手)クラクラコラ タンマラノッコラ 一族内から しくじるハイ/ヨッ/9番 あがるお客は 皆としとしと 年っこ一九で その名はとし子/あがるお客の数ある中に/中ですぐれだんな 来るきゃっくわ(客)はござる/嫁にうたせども 嫁にもくれの/そこで来る客は ふたくごなじゃる/どうせこの世の つとめはあれば/つれで(連れて)逃げるのも この世のならい/ケッ 逃げでげ/ウッ/(合いの手)ハイ ハイハイ ハイハイハイハイ/10番 エンヤー連れで逃げるのも この世のならい/夜の一二時ヨヅハン(四ツ半)頃に 人目忍んで/手を取りながら トント打ち出す梯子の段よ/下(お)りでしまえば 川筋の村/戸井のかけ風 霞むなチュードリ(千鳥)/涙ながらにかわすどりば/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ ノッ/11番 アー サド(さぞ)や寒かろ さぞ冷たかろ/とーるは通ると山中通って 水はたつたつ水無しの村/よぐみ前とは虎屋の村よ 心細(ぼそい)さに山中通って/ここは恐ろし とだのいたうとおった/(合いの手)ドコドッコイ ドゴサイッタ コラ/おちょこちょいは ここにいたウッ/12番 昔こだい汐首の村 波も高いし吹く風もよし/とろりとろりと白い浜通ってハナス(話)する間のその間もなくて/いちのまぎまに 白い浜通ったら釜谷焼餅 小安で叩く/石でかだ(固)めだのあー 石崎の村/(合いの手)クークラクラコラ タンマラノッコラ 一族内から しくじるハイ/13番 オイヤー 石でかだ(固)めだのあー 石崎の村/最早日も暮れ 小鳥まで止まる/夫婦2人の古川尻よ 昔こおらい(古来?)汐まりの川/一里上ればメーナ(目名?)も沢よ チョイと下(さ)がればな/さても珍し とぢのき(栃の木)様よ/白い木綿でわが身をつづも 乳をさず(授)げだの女の神よ/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ/14番 ハー乳をさず(授)げだんのは 女の神よ/とろりとろりと ナガバカ登る 登りづめ(詰め)れば石倉様よ/今日は日も良い 天気も良いし 四月十日は石倉まい(参り)/(合いの手)コラコラコラコラコラコラコラコラ/ヨッ/ヨッ/15番 ハー四月十日は 石倉参り/めよい きよいか みなど(湊)の村よ/長い道中 黒岩通って 銭も無けれども 銭亀沢よ/志海苔昆布は 名代の昆布 名代昆布は 志海苔の昆布/枕かわしてな一夜もねさく(根崎?)枕かわして根崎じゅうなよ/おぎょうといだ ばこっつお 一夜も根さく(根崎)/かわいかわいの  夜明けの烏 もはや夜明けの烏は渡る/かわいとし子は ぶるおこ 落ちたが/とし子とし子とぶりおこされで さぞや寒かろ さぞ冷たかろ/かわいとし子は 我がで(手)にし(ひ)いて/涙ながらに湯川通って 金も無けれども金堀(かねほり)の沢/(合いの手)コラコラコラ タンマラノッコラ一族内から しくじるハイ/16番 心細いさに 大森番も通って 婿に参るのは函館の町サーエー
 
  (伝)故西沢北斗・中浜吉次郎伝承(渋谷道夫提供)
 「歌詞中のぶしじは打ち身の後の痣をいい、くらしまとは暗い所や暗いを意味する」(石田勝造談)。(譜例24)

譜例24 口説節

 
 資料18 口説節 歌(故吉沢北斗)合いの手(囃子)(故中浜吉次郎) 1番 歌(故吉沢北斗)オイヤーヤサエー(エイ)/歌の文句も数ある中に 今でも珍し道中口説き/上でたがい(高い)のは矢越し崎か/下でたがい(高い)のは恵山のお山/(エンヤーコラヤノヤと)/合いの手(囃子)(故中浜吉次郎)「ホラ エーつくビーつぐ みだいのあぱこはあしっこ(足)もひぎずってエコラーヤーコラ つらぬぎとっといもたりに これだばたりぬ それだばとってもたりね 足ひっぱてる奴だもなー」/2番 歌(故吉沢北斗)オイヤーいずり(一里)登ればいざやがござる 二里登れば権現様よ/くだり終わればヒダテが村でヒダテ村どは椴法華の村/合いの手(故中浜吉次郎)「ホラ きたひじかしじ ぶっつけだぶしじ/となりのよしざ(じ) はなむごよしじ/それでもいってはだだもかただ/四〇(?)と八人もったももった ひとだず(一ダース?)二人/どんだ皆さん それだばとっても げたげだ(?)3人 げたげた三人 ばなー」/3番 歌(故吉沢北斗)オイヤー沖に見ゆるは ありゃなんのつゆは(ありゃ七つ岩?)/七つ岩にも鵜のと(鳥)りゃ止まる/恋いのネダナイ(根田内) 情けの古武井/想いかけたる あのシリギシネ(尻岸内)/合いの手(故中浜吉次郎)「コラ どうつく山つぐ 野原さのでつぐ/隣でもぢ(餅)つく わだけくてくて(食て食て)/かだから息つく もだけだたりね もたげたべ(意味不明)」/4番 歌(故吉沢北斗)オイヤー日よりは悪いけど日浦にまる/ハラギ(原木)たづとは わしやカマウダ(鎌歌)よ/行ごうか帰るか戻ろうがどしょうが/こごは思案の熊別さか(坂)よ/合いの手(故中浜吉次郎)「コラ 七転バッテン(八転) くらしまどってん/イワナギャ(岩内ぎゃ) 雷電着るのは丹前(半纏?)/うまだきゃなくて あっぱのざいもむったりどでこきて/本当にこれだば どだげがかあるめが・・・ (不明)」/5番 歌(故吉沢北斗)オイヤー沖に見ゆるはありゃ武井の島/とお(ろ)りとろりと はまなが(浜中)通れば/戸井のカゲ橋(架け橋)霞に千鳥/ミズッコ(水っこ)たらだらミズガセ(水無せ?)村で蓬ないとはトラウケ村よ/合いの手(故中浜吉次郎)「コラダイリョウ(大漁)鰯の大鰯/かだて(片手)に三匹捕まれる/その癖アブラコ タントタント/ほんとに今だら おっきたもんだども/その時われわれがホント(本当)に一缶三銭五銭/三五円でバンバリガッパリホント(本当)にそれだらドダゲバ ??人」