株式会社の四社は、第五十九国立銀行、弘前銀行、弘前貯蓄銀行、弘前商業銀行ですべて金融機関である。合資会社には、弘前両益銀行と立誠銀行の金融機関のほかに、弘前農具合資会社、弘盛合資会社、弘前煙草製造合資会社、津軽物産合資会社、弘前水産合資会社の各社があった。これらは、各種製産品を販売する会社である。合名会社の一社は、合名会社武田呉服店である。会社の支店は、生命保険会社の支店が多い。
明治三十一年(一八九八)時点での会社にはやや変化が見られる。その内訳は表38のとおりである。
表38 会社及銀行(明治31年) |
種類 | 名 称 | 所在地 | 営業種別 | 資本金 | 株主及 組合人員 |
合名会社 | 合名会社関銀行 | 弘前市大字親方町 | 銀行業 | 35,000 | 6 |
同 | 小山内合名会社 | 同 徳田町 | 雑貨販売 | 5,000 | 4 |
同 | 工藤機業合名会社 | 同 亀甲町 | 機業 | 3,000 | 2 |
合資会社 | 合資会社弘前両益銀行 | 同 親方町 | 銀行業 | 30,000 | 10 |
同 | 仝 上 立誠銀行 | 同 土手町 | 同上 | 20,000 | 3 |
同 | 弘前酒造合資会社 | 同 亀甲町 | 酒類製造 | 18,000 | 6 |
同 | 弘前金融合資会社 | 同 百石町 | 貸金業 | 10,000 | 6 |
同 | 弘盛合資会社 | 同 代官町 | 曲物其他販売 | 4,500 | 8 |
同 | 弘前煙草合資会社 | 同 土手町 | 煙草製造及仲買 | 3,500 | 7 |
同 | 漆器樹産合資会社 | 同 本町 | 漆器販売 | 3,000 | 5 |
同 | 陸奥物産合資会社 | 同 和徳町 | 藁細工物其他販売 | 2,350 | 7 |
同 | 弘前桶樽合資会社 | 同 鍛冶町 | 桶樽製造 | 700 | 5 |
同 | 弘前織物合資会社 | 同 和徳町 | 木綿製造及販売 | 2,000 | 3 |
同 | 米穀合資会社 | 同 浜ノ町 | 穀物販売 | 2,000 | 5 |
株式会社 | 株式会社第五十九銀行 | 同 本町 | 同上 | 700,000 | 566 |
同 | 仝 上 弘前銀行 | 同 上 | 同上 | 555,000 | 354 |
同 | 仝 上 弘前商業銀行 | 同 百石町 | 同上 | 200,000 | 127 |
同 | 仝 上 津軽銀行 | 同 元寺町 | 銀行業 | 100,000 | 73 |
同 | 仝 上 弘前貯金銀行 | 同 本町 | 同上 | 30,000 | 65 |
同 | 弘前農具株式会社 | 同 土手町 | 銅鉄物雑貨販売 | 60,000 | 24 |
同 | 津軽物産株式会社 | 同 代官町 | 米縄莚販売 | 15,000 | 28 |
同 | 弘前倉庫株式会社 | 同 土手町 | 貨物預及貸庫 | 20,000 | 48 |
前掲『明治32年青森県治一班』 |
この会社表には、酒類製造会社である弘前酒造合資会社が入っている。弘前市は藩政時代から酒造業が盛んであり、明治期に入ってもその伝統は続いた。代表的な酒造業者には、清酒白藤を販売し、またブドウ園を開いて葡萄酒を醸造した藤田半左衛門、りんご酒の醸造を始めるなど、革新的な酒造業展開を目指した松木淳一、新たに酒造業を興した福島藤助らがいた。また、弘盛合資会社は、曲物その他を販売したが、特にあけび蔓細工製品を扱い、日本全国にその名声が及んだ。