札幌の東部に広がる野幌丘陵は、更新世の地層がよく発達しているので、この時期の地史を調べるのには絶好の場所である。本章では、野幌丘陵に分布する地層や化石などから、更新世、とくに、前期から中期まで(約一八〇万年前~一三万年前)の地史を眺めることにしよう。ところで、地形・地質的にみて、野幌丘陵とは、どの範囲なのかを定義づけたものはない。そこで、ここでは、地質や地形の特性を考慮して、一応、南を広島町の音江別川、西を野津幌川で境される、標高一二〇メートルから五〇メートルくらいまでの丘陵地を野幌丘陵と呼ぶことにする。
野幌丘陵の更新世の地層は、下位(古いもの)から順に、裏の沢層・下野幌層・音江別川層・竹山礫層・もみじ台層・小野幌層・支笏火山噴出物・元野幌層・江別砂層・厚別砂礫層(広島砂礫層)などに区分されている(表1)。これらのうち、本章で取り上げる前期―中期更新世の地層は裏の沢層から竹山礫層までであり、野幌丘陵の土台を構成している地層は裏の沢層と下野幌層である。
表-1 野幌丘陵の地質層序表 |
時代 | 年代 万年前 | 層序 | 特性 | |
完新世 | 1- | 樽前降下火山灰層 | 樽前a~b火山灰の薄層 | |
更新世 | 後期 | 江別砂層 | 砂丘砂 | |
元野幌粘土層 | 粘土(広島砂礫層,厚別砂礫は同時期)軽石流 | |||
支笏火山噴出物層 | 軽石流 | |||
小野幌層 | 主として粘土・シルト,泥炭層をはさむ | |||
7- | ||||
もみじ台層 | 砂礫,貝化石を含む | |||
13- | ||||
中期 | ||||
竹山礫層 | 風化の進んだ礫層 | |||
音江別川層 | 砂・シルト・砂礫層が主なもの。貝化石、哺乳動物化石を含む | |||
70- | 下野幌層 | 細砂・シルト層,泥炭層をはさむ,基底礫層に貝化石・哺乳動物化石を含む | ||
前期 | ||||
180 | 裏ノ沢層 | 半固結のシルト層,砂 |
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図-1 野幌丘陵の地質図 |