明治十八年二月一日発兌 禁売買
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上田郷友会月報 第壱号
上田郷友会 (改頁)
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上田郷友会月報第一号 目次
○
緒言 ○
本会規則
○本会記則
十八年一月例会
記事 ○論説
血族結婚(第一) 勝俣
工業ヲ振起セサルベカラス 山田
書生ノ地位 山極
○雑録
烟草ノ説
○
雑報 数件
郷里通信 ○
通常会員姓名
○
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緒言今ヤ社会ハ益々複雑ヲ極ハメ文学ニ技芸ニ農ニ工ニ商ニ皆ナ彬々(ひんぴん:文物のさかんにおこること)タリ盖(けだ)シ人智ハ日月卜
共ニ進ミ駸々(しんしん:物事が早く進行するさま)乎トシテ更ニ底止スル処アルヲ知ラス而シテ社会相互競争ノ器ハ愈々(いよいよ)利ナ
リ嗚呼(ああ)此ノ間ニ身ヲ処シ邦ヲ保ッハ亦(また)容易ノ業ニ非ラサルナリ眼ヲ放テ世界ノ邦国ヲ見
ヨ
英ニ
仏(フランス)ニ
独(ドイツ)ニ
魯(ロシア)ニ各経営スル処アリ兵艦ハ益々快疾隊伍ハ益々整練以テ奇獲ヲ待ツ嗚
呼危イカナ我国ハ東洋ノ一孤島ナリ然レドモ愛国ノ士ハ其ノ
独立ヲ永ク保持シ日章ヲシテ
万邦ニ輝カシムルニ従事ス可キナリ今日ハ日本唐土(中国)天笠(インド)ノ旧天地ニハ非ラサルナリ我国
ハ東洋ノ一孤島ナリ然レドモ愛国ノ士ハ其ノ
独立ヲ永ク保続シ威名ヲ轟カシムルニ拮据ス
可キナリ講ス可キハ其ノ術ニ在リ究ム可キハ其ノ手段ニ在リ而シテ先ノ
文学技芸農工商ノ者其ノ隆盛ヲ見ザレハ利器ノ以テ強敵ヲ拒(ふ)セキ 我国ノ
独立ヲ永続スルニ足ラス抑(そもそ)モ
我国ヲシテ欧米各国ヲ凌駕(りょうが)セシメント欲スルモノハ須(すべから)ク
文学技芸農工商ノ進歩ヲ謀ラサ
ル可カラス而シテ又夫ノ進歩ヲ望マバ宜(よろ)シク先(ま)ッ其ノ道ノ可ナルモノヲ撰ラビ而シテ後不
屈不撓以テ之レニ当ラサル可カラス盖シ一国ハ郡一郡ハ邑(むら)ヨリ成ル一国ノ隆盛ヲ企図ス
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ルモノハ先ツ
郡邑(ゆう)ヨリ始ム可シ然ラハ則チ終ニ一国ノ隆盛ヲ結果ス可キハ見易キノ理ナ
リ况ヤ此際各
郡邑間ニ行ハルヽノ競争ハ益々以テ其ノ目的ヲ逹スルノ媒介ヲナセハ各
郡
邑奨励ノ会ハ决シテ欠如ス可カラサルノモノタリ
余輩ガ先ニ創立セル
上田学友親睦会ナルモノハ其主卜スル処又他ニ非ラス他
郡邑ト競争
ノ為ナリ
松代ノ上ニ出デント欲スルナリ
松本ノ右ニ座セント欲スルナリ薩(鹿児島県)長(山口県)土(高知県)肥(佐賀県)ノ如キ
ハ固(まこ)卜之レヲ臀下(でんか)ニ置カント欲スルナリ互ヒニ以テ我国ノ隆盛ヲ致サントナリ然ルニ方
法其ノ宜(のべる)ヲ失シ終ニ保続スルコト能ハサリキ而シテ明治十六年夏七月有志ノ徒(仲間)大ニ前会ノ
衰亡ヲ慨嘆(がいたん:うれいなげくこと)シ同志ヲ募ッテ新タニ上田学友懇親会(当時郷友会卜称ス)ヲ設立セリ即ハ
チ前会ノ志ヲ継ギ会員相互奨励ノコトヲ勉メタリ然ルニ熱心ノ士ナキカ或ハ規約完全ナ
ラザルカ又将(はた:あるいは・それとも)タ方法ノ宣シキヲ得サルカ必シモ前会ノ轍ヲフマサルモ越エテ明治十七年
夏秋ノ交ニ到レハ保続再ヒ困難ヲ告ゲタリ茲ニ於テ乎会員相集リ本会保続ノ事ヲ討議ス
甲諭シ乙駁シ終ニ本会ノ維時法ハ本会ヲシテ勢力ヲ得セシムルノ他ナキガ故隨テ先ツ雑
誌ヲ刋行スルニ決シ名ツクルニ
月報ヲ以テセリ是レ本会ガ
月報ヲ発兌スル所以ニシテ毎
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号記録スル所ハ
記事 諭説及雑録 雑報ノ四項トス
即ハチ本報ノ起因ヲ記シ以テ
緒言卜ス卜云フ
明治乙酉(一八)歳(年)一月七日
山極勝三郎識
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上田郷友会規則 第一条 会名
本会ハ之ヲ
上田郷友会ト名ツク
第二
条 目的
本会ハ各自相奨励シ親睦ヲ鞏固(きょうこ:しっかりしてかたい)ナラシムルヲ以テ目的トス
第三条 会員
会員タル可キ者ハ上田地方所生ノ者若(もし)クハ上田地方ニ縁故アル者ニ限ル
第四条
会員ヲ分ツテ通常会員及ヒ特別会員ト為ス
(但)通常会員ハ東京
横浜其他交通便利ノ地ニ留寓シテ常ニ本会ノ集会ニ出席ス可キ者ヲ
云フ
特別会員ハ居住地ノ何レナルヲ問ハス第三条ノ資格ヲ有スル者ニシテ単二本会刷
行ノ記録ヲ収受ス可キ権利アル者ヲ云フ
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第五条 入会
会員タラント浴スル者ハ其旨ヲ幹事へ届出ツ可シ第三条ノ資格ヲ有スル者ナルトキハ幹事
ハ之ヲ許允(きょいん:承認する)ス可シ
第六条 会合
第二条ノ目的ヲ達セン為メ毎月一回集会ヲ開ク者トス
第七条 会場
会場ハ東京府下ニシテ便宜ノ地ヲ撰ンテ幹事之ヲ決定報告ス
第八条 会日
会日ハ第一日曜日卜定メ午後一時ヨリ開会スルモノトス
第九条 役員
役員ヲ分ツテ幹事(一名)会計委員(二名)及ヒ編輯委員(五名)ト為ス
第十条 任期
役員ノ任期ハ六ケ月ト為ス但シ再撰スルコトヲ得可シ
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第十一条 撰挙
役員ハ通常会員投票ノ多数ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条
月報毎月一回本会
記事諭説雑録会員ノ動静
雑報等緊要有益ノ事件ヲ採集シテ之ヲ印刷発兌シ
以テ会員ニ頒布スルモノトス名ケテ
上田郷友会月報卜云フ
第十三条 演説
演説セント浴スル者ハ前回ニ於テ之ヲ幹事ニ届出可シ幹事ハ其有志者ヲ抽籤セシメテ順
次ヲ定ム
(但)
月報ノ論説ハ主トシテ会員ノ演説セル者ヲ載ス
第十四条 討議
討議ノ開否ハ前会ニ於テ之ヲ議決シ若シ開クニ決スルトキハ直チニ其議題ヲ議決スヘシ
但シ発題者ハ発議者タル可キモノトス
第十五条 会費
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通常会員ハ毎月十銭特別会員ハ毎月八銭ヲ出金ス可キ者トス
第十六条 欠席
涌常会員若シ出席スル能ハサルトキハ予メ其旨ヲ幹事へ通報ス可シ
第十七条 脱会
脱会セント欲スル者ハ其旨ヲ幹事ニ届出可シ
〔但〕既ニ収メタル金銭ハ之ヲ返附セス
第十八条 退会
本会ノ体面ヲ毀傷 (きしょう:そこないきずつけること)スル者アルトキハ議决ノ上之ヲ退会セシム可キモノトス
第十九条
規則政正ニ係ハル議事ハ延テ次会ニ至リ出席会員過半数ノ同意ヲ以テ決ス