この地方の昆布は真昆布といい、また本昆布ともいわれ、その産地は西はいまの上磯郡から東は内浦湾に至り、亀田・茅部の2郡が最も多産した。『庭訓往来』に「宇賀昆布」と記されているのは、亀田郡小安村ウンカ川付近から産出したので名付けられたという。また後に志海苔昆布と称されたのは、志海苔海岸から採取されたのでその名がある。けれどもその最も優良なものは、茅部郡尾札部(おさつべ)・川汲(かっくみ)および臼尻近傍から出し、志海苔産はこれに比べると薄くて品質がやや劣ったという。昆布は通例暖流に寒流の交流する潮の穏やかな所の岩礁または石礫に根ざし、干潮の最低線から生ずるというが、4~5尋(ひろ)から7~8尋の間において最も繁茂し、地勢によっては24~5尋の所にも生ずることがある。またガモメという昆布もあって、汐首岬から茅部郡沿岸の深さ2尋から5尋くらいの所に真昆布と混生し、その長さが3尺ないし7尺、幅5~6寸である。そのほかシオホシコンブは恵山岬付近に生じ、日高の三石昆布の同類といい、ヤヤコンブは函館旧台場付近に産し俗にダイバコンブともいったという。