職員……長官 書記官 警部長 財務長 参事官 技師 典獄 属 技手 警部 監獄書記 看守長 監獄医 |
郡区官…郡長 区長 郡書記 区書記 |
(明治二十四年七月二十四日勅令第一一一号『官報』号外「北海道庁官制」より抜粋) |
地方行政事務は支庁長が担当することとなり、第51条で次のように規定した。
従前ノ法律命令ニ於テ北海道郡区長ノ管掌ニ属シタル事項ハ北海道庁支庁長ニ於テ処理スベキモノトス |
北海道庁支庁の名称位置及び管轄区域が同日の勅令第395号で定められ、19支庁が表3-4の通り誕生し、函館区長龍岡信熊が官制改正施行日の11月5日付で函館支庁長に就任した。郡区書記は他の一般事務職と同じように「道庁属」となったのである。また10月30日には、北海道庁高等文官官等俸給令(勅令第393号)も公布され表3-5のような年俸体系となったが、支庁長については次のような条文が付けられていた。
表3-4 支庁の名称位置及び管轄区域表
明治30年10月30日勅令第395号『官報』より作成
名称 | 位置 | 管轄区域 |
北海道庁札幌支庁 | 石狩国札幌区大通西3町目 | 札幌区、札幌郡、石狩郡、厚田郡、浜益郡 |
北海道庁函館支庁 | 渡島国函館区元町 | 函館区 |
北海道庁亀田支庁 | 渡島国亀田郡七飯町 | 亀田郡、上磯郡、茅部郡、山越郡 |
北海道庁松前支庁 | 渡島国松前郡福山河原町 | 松前郡 |
北海道庁檜山支庁 | 渡島国檜山郡江差中歌町 | 檜山郡、爾志郡、久遠郡、奥尻郡、太櫓郡 瀬棚郡 |
北海道庁寿都支庁 | 後志国寿都郡渡島町 | 寿都郡、島牧郡、歌棄郡、磯谷郡 |
北海道庁岩内支庁 | 後志国岩内郡御鉾内町 | 岩内郡、古宇郡 |
北海道庁小樽支庁 | 後志国小樽郡量徳町 | 小樽郡、高島郡、忍路郡、余市郡、古平郡 美国郡、積丹郡 |
北海道庁空知支庁 | 石狩国空知郡岩見沢村 | 空知郡、夕張郡、雨竜郡、樺戸郡 |
北海道庁上川支庁 | 石狩国上川郡旭川村 | 石狩国上川郡 |
北海道庁増毛支庁 | 天塩国増毛郡永寿町 | 増毛郡、留萌郡、苫前郡、天塩郡、中川郡 天塩国上川郡 |
北海道庁宗谷支庁 | 北見国宗谷郡稚内村 | 宗谷郡、枝幸郡、利尻郡、礼文郡 |
北海道庁網走支庁 | 北見国網走郡北見町 | 網走郡、斜里郡、常呂郡、紋別郡 |
北海道庁室蘭支庁 | 胆振国室蘭郡札幌通 | 室蘭郡、有珠郡、虻田郡、幌別郡、勇払郡 白老郡 |
北海道庁浦河支庁 | 日高国浦河郡浦河村 | 浦河郡、沙流郡、新冠郡、静内郡、三石郡 様似郡、幌泉郡 |
北海道庁釧路支庁 | 釧路国釧路郡真砂町 | 釧路郡、白糠郡、足寄郡、阿寒郡、川上郡 厚岸郡 |
北海道庁河西支庁 | 十勝国河西郡下帯広村 | 河西郡、河東郡、十勝国上川郡、中川郡 十勝郡、当縁郡、広尾郡 |
北海道庁根室支庁 | 根室国根室郡常盤町 | 根室郡、花咲郡、野付郡、標津郡、目梨郡 国後郡、色丹郡、得撫郡、新知郡、占守郡 |
北海道庁紗那支庁 | 千島国紗那郡紗那村 | 紗那郡、振別郡、択捉郡、蘂取郡 |
明治30年10月30日勅令第395号『官報』より作成
表3-5 北海道庁高等文官官等俸給表
明治30年10月30日勅令第393号『官報』より作成
職名 | 年俸額 | |||||||
1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 | ||
長官 勅任事務官 奏任事務官 警部長 支庁長 参事官 警視 典獄 | 5,000 | 3,500 2,500 2,500 1,800 1,800 1,200 1,200 | 3,000 2,200 2,200 1,600 1,600 1,000 1,000 | 2,000 2,000 1,400 1,400 900 900 | 1,800 1,800 1,200 1,200 800 800 | 1,000 1,000 700 700 | 900 900 | 800 800 |
明治30年10月30日勅令第393号『官報』より作成
第五条 函館支庁長ノ年俸ハ特ニ二千円迄ヲ給スルコトヲ得 |
第七条 当分ノ内支庁長ノ年俸ハ最下級以下六百円迄ヲ給スルコトヲ得 |
つまり下級俸書記官兼函館区長の年俸2000円がそのまま函館支庁長の年俸となり、年俸600円の郡長もそのまま支庁長に移行したわけである。
その後この龍岡信熊支庁長在任中に自治制の函館区が誕生するわけなので、ここで明治12年以来の歴代区長を表(表3-6)にして掲げておく。
この事務内容の変更は全く伴わない郡区役所制から支庁制への移行には、役所名の変更整理という意図があったのかも知れない。郡役所名は亀田外3郡役所でも正式名称は亀田上磯茅部山越郡役所であり、根室支庁となった地域も郡役所の正式名称は根室花咲野付標津目梨国後色丹得撫新知占守郡役所であり、ここの初代郡長広田千秋はさらに網走斜里常呂紋別郡長及び紗那振別択捉蕊取郡長を兼ね、正式な彼の肩書きは、根室花咲野付標津目梨国後色丹得撫新知占守郡長兼網走斜里常呂紋別郡長紗那振別択捉蕊取郡長と18郡をも所管するというものであった。『官報』の辞令記載中もっとも長い肩書きである。開発はこれからという未開の原野を行政区画割のみ先行させたため、多くの郡を兼務する郡長を置かざるを得なかったわけである。
以後、明治32年10月に自治制の函館区となるまで函館区の行政事務は函館支庁が担当、函館区会も議長を支庁長が勤め、区会において説明員となる番外も函館区書記に代わって北海道庁属が担当したのである。
職名 | 氏名 | 前職 | 就任年月日 | 年俸 | 備考 | 退任年月日 | 後職 | 備考 |
区長 区長心得 同 同 区長代理 区長 同 同 同 同 区長代理 区長 同 支庁長 同 同 | 常野与兵衛 桜庭為四郎 荻野八郎 林悦郎 林悦郎 林悦郎 二木彦七 添田弼 椎原国太 曽我部道夫 井川武策 財部羌 龍岡信熊 龍岡信熊 加藤広説 龍岡信熊 | 大小区制区長 区書記 区書記 函館県8等属 区長心得 区長代理 函館県1等属 檜山爾志郡長 室蘭外5郡長 注1 宮城県書記官 区書記 広島県警部長 台北県書記官 注2 函館区長 北海道庁属 非職北海道庁支庁長 | 12.10.14 13.12.13 15.3.15 15.5.23 15.11.2 18.10.26 19.12.28 23.2.22 24.1.24 24.8.26 25.1.26 25.11.30 29.7.25 30.11.5 31.9.1 31.11.29 | ※420円 ※360 ※240 ※300 ※360 ※420 900 600 600 2,000 ※480? 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 | 区長就任後「正義」と改名 12.10.30開拓9等属より 14.3.29開拓10等属より 兼道庁理事官・亀田上磯郡長 特別手当400円 特別手当400円 兼道庁書記官 兼道庁書記官 兼道庁書記官 兼亀田支庁長 兼亀田支庁長 兼亀田支庁長 | 13.12.11 15.3.15 15.5.23 15.11.2 18.10.26 19.12.28 23.2.22 24.1.24 24.8.26 25.1.25 25.11.30 29.7.25 30.11.5 31.8.29 31.11.29 32.10.1 | 家業 払下事件で引責辞任(15.2.2) 区書記 区長代理 注3 区長 岩内古宇郡長 非職(23.3.25) 室蘭外5郡長 注4 釧路外12郡長 注5 未確認 区書記 台北県書記官 函館支庁長 非職(31.8.29) 非職(31.11.29) 亀田支庁改め函館支庁長 | 15.7.15函館県7等属 15.7.19依願免 函館区長事務取扱 |
年俸中※印のあるものは月俸支給のものを年俸換算したものである。
注1 室蘭有珠虻田幌別勇払白老郡長
注2 台湾総督府法院検察官を兼務
注3 15.11.2区長不在時、上席書記を区長代理とする。
注4 室蘭有珠虻田幌別勇払白老郡長
注5 釧路広尾当縁十勝中川河西河東上川白糠阿寒足寄川上厚岸郡長
荻野八郎の退任年月日が「5.5.23」とあるが、誤記のため訂正
龍岡信熊の就任年月日が「27.7.25」とあるが、誤記のため訂正