(一)年中行事と生活

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 町人の年中恒例の行事を延享二年(一七四五)の「年中家之定法」(資料近世2No.二三七)(町人の年間行事の大要を記録したものと推定される)を中心とし、「今村家年中行事」を加えて、そのあらましを左に示すと次のようになる。
(正月)元日、若水汲み。朝飯(雑煮・飯・酒)。
三日、うたい始め。
四日、門松の取り払い、かり(仮カ)松を立てる。
七日、七種(ななくさ)(草)祝い。
十一日、具足の餅祝い。蔵開き。飴餅祝い。
十五日、小豆粥。若水汲み、雑煮・酒で祝う。
十六日、始め。白粥に粥の汁(けの汁)。
十七日、店の者並に下男・下女の宿礼。
(二月)一日、厄年祝。
十五日、涅槃会。
彼岸、入日・中日(ちゅうにち)・過る日、仏前・菩提寺子供え。
(三月)三日、上巳(じょうし)(蓬餅をつくる)。
二十五日、天満宮へ大文字献納。
(四月)八日、誕生会。
十日、この日より足袋履(は)かぬ。
四月中、道路の清掃。畑に種を蒔く。
(五月)一日、のぼり(幟)を立てる。ちまき(粽)を作る。
四日、昼ころより、蓬・菖蒲を屋根に挿(さ)す。
五日、端午(ちまき(粽)・山のいも(芋)・わかめ(若布)・はにしん(鯡)・しょうぶ(菖蒲)・よもぎ(蓬)を三方に載せて祝う)。
(六月)一日、歯固め。
六月中、干し(入日より三日目)。
(七月)一日、ねぶた。
七日、七夕。朝、寺へ行き墓の掃除。
十三日、精霊の棚作り。盆行事(法界に寺へ行く)。
(八月)一日、岩木山大祭日。お山参詣
十五日、八幡宮大祭日。十五夜(月へ梨・桃・栗・新米・青大豆・神酒(みき)を供える)。
八月中、彼岸。
(九月)九日、重陽(ちょうよう)(栗の節句。餅祝い)。
(十月)亥の日、亥の子の祝い。火鉢・足袋は翌年二月まで。
(十一月)二十三日、大師講(小豆粥を供える)。
十一月中、冬至(南瓜を食べる)。
(十二月)一日、お岩木様。
五日、戎(えびす)様(お膳など供える)。
六日、弁天様。
八日、薬師様・八日そば。
九日、大黒様。
十日、稲荷様。
十二日、山の神様。
十四日、火の神様。
十五日、八幡様。
十六日、大工の神様。
二十日、煤払い。歳暮廻し。
二十六日、餅つき。詰市。
節分、年男、を着て大豆を煎り、午後六時ころより撒(ま)き始める。
二十九日、門松を立てる。年縄・蓬莱を作る。
年男が枡へ米・餅・松葉・譲葉(ゆずりは)・昆布・鯡を入れ伏せた臼に入れる。臼・桶に年縄を、柄杓・桶に松葉・譲葉をつけ、水引きで結ぶ。年男はさらに餅・昆布・松葉・譲葉・田作魚(ごまめ)に鍋二つをかぶせる。

晦日、年越し。表通り雪切掃除。

 以上挙げた年中行事は、町人特有のもののほか、藩士農民と共通する行事がある(第二・三節の日常生活参照)。ただし町人特有の行事でも行事内容が詳細にわからないものが多い。町人を中心とする行事では代表的なものとしてねぶた・宵宮盆踊りがあるが、これらについては第五章第三節を参照されたい。