弘前市における
租税額と
地租や、それにかかわる
土地関係税をまとめたのが表30である。なお、この表での
市税は予算書による数値ではなく、
県税や
国税と整合する『
青森県統計書』の数値を示している。また、『
青森県統計書』では、
市税の特別税土地建物売買譲与税が独立の項目として取り上げられていないこともあり、ここでは
土地関係税には加えていない。この表から、弘前市の
土地関係税が、金額は一貫して増加していること、また、全体に対する比率は増減の波があることがわ
かる。弘前市の
土地関係税は、
租税前提の五%を超えることはまれであったが、年々その比重を下げるということはなかった。
表30 租税計及び土地関係税(弘前市) |
(単位:円、但し下から1段は%) |
| 明治22年 | 明治26年 | 明治32年 | 明治37年 | 明治42年 | 大正3年 | 大正8年 | 大正13年 |
国税計 | 56,973.4 | 56,153.5 | 187,833.0 | 257,363.7 | 403,047.5 | 316,617.0 | 415,051.0 | 902,784.0 |
県税計 | 6,247.9 | 11,100.7 | 13,406.3 | 18,489.9 | 29,874.1 | 25,821.2 | 89,099.9 | 183,978.3 |
市税計 | 12,906.9 | 21,773.0 | 64,573.5 | 58,964.0 | 79,611.6 | 54,351.2 | 154,393.0 | 264,593.1 |
租税計 | 76,128.2 | 89,027.2 | 265,812.8 | 334,817.6 | 512,533.2 | 396,789.4 | 658,543.9 | 1,351,355.4 |
地 租 | 1,986.7 | 1,997.5 | 3,731.0 | 5,876.7 | 14,082.7 | 17,300.0 | 17,396.0 | 17,466.0 |
地租割 | 78.1 | 447.5 | 882.5 | 1,102.4 | 1,655.1 | 1,711.8 | 6,907.0 | 9,228.8 |
地価割(地租付加税) | 0.0 | 427.6 | 698.7 | 917.3 | 723.2 | 1,511.1 | 4,127.1 | 6,398.4 |
地租等合計 | 2,064.8 | 2,872.6 | 5,312.2 | 7,896.4 | 16,461.0 | 20,562.9 | 28,430.1 | 33,093.2 |
地租等合計/租税計×100 | 2.7 | 3.2 | 2.0 | 2.4 | 3.2 | 5.2 | 4.3 | 2.4 |
弘前市と対比するために、
青森県全体の同様の数値を一〇年おきに示したのが表31である。
地租等が
租税全体に占める比率は、わずかずつではあるが低くなっていくことがわ
かる。しかし、
地租等の合計額は、一貫して増加していることも見られる。また、県全体の
土地関係税額は、明らかに弘前市とは異なり、その
租税全体に占める比重が高いことがわ
かる。さらに、
県税の
地租割と市町村税の地価割が、
国税の
地租額を追い越すに至る過程を見ることができる。この点は、弘前市の数値では見いだしがたいが、
大正期以後の県や市が徴収する
土地関係税の伸びの大きさは、弘前市の事例でも確認できる。
| 明治22年 | 明治32年 | 明治42年 | 大正8年 | 昭和4年 |
国 税 | 716,731.5 | 1,323,493.3 | 2,621,411.7 | 3,924,236.0 | 5,165,833.0 |
県 税 | 235,676.1 | 432,156.0 | 770,959.9 | 1,998,333.6 | 3,195,417.8 |
市町村税 | 163,476.2 | 835,226.9 | 2,108,145.9 | 3,133,724.9 | 4,960,929.0 |
租税計 | 1,115,883.8 | 2,590,876.2 | 5,500,517.5 | 9,056,294.5 | 13,322,179.8 |
地 租 | 457,896.1 | 350,553.7 | 1,045,528.7 | 916,582.0 | 831,095.0 |
地租割 | 116,565.1 | 219,790.8 | 349,463.7 | 898,392.0 | 1,047,562.8 |
地価割(地租付加税) | 40,275.4 | 101,742.7 | 163,679.4 | 267,603.0 | 512,033.0 |
地租等合計 | 614,736.6 | 672,087.2 | 1,558,671.8 | 2,082,577.0 | 2,390,690.8 |
地租等合計/租税計×100 | 55.1 | 25.9 | 28.3 | 23.0 | 17.9 |
以上、市の予算書や『
青森県統計書』によって見てきた。弘前市は、県全体と比べて
土地関係税の比重が小さく、農家戸数や耕地面積が少ない都市の財政構造を示しているものと考えられる。
地租の比重は小さいものの、その額は無視しうるものではなく、また、この税は県や市にとっても重要なものであり、
租税全体に占める比重も増減の波はあるものの、一貫して減少していくものではない。
土地関係税の徴収は、
国税や
県税を含めてすべて市によって行われた。また、
市税のほとんどは、
国税や
県税の付加税であった。このことは、
国税と地方税の密接な関係を示している。さらに、
土地関係税の地方税としての性格が強まってくることも確認できる(以上の本節の記載は小岩信竹「明治・
大正期の弘前市における
租税賦課の構造」『市史ひろさき』一、一九九二年所収に依拠している)。