ここに、『新編弘前市史』通史編2(近世1)を刊行する。
本市史における近世の通史編は、通史編2と同3の二巻から成り、全八章で構成した。十六世紀末、大浦氏の豊臣政権との接触から明治四年(一八七一)の廃藩置県に至る約三〇〇年間の、弘前市を中心とした近世津軽地方の歴史を叙述の対象としている。
本巻は、第一章「統一政権と北奥の動向」から第四章「幕藩体制の動揺と民衆」に至る、四章仕立てで構成した。時期的には、前述のように十六世紀末における大浦氏の豊臣政権との接触から、幕末期安政年間(一八五四~五九)の箱館開港の時期に至る期間を取り扱った。すなわち幕藩体制の成立から動揺・崩壊期に至る期間を対象としており、津軽領における政治・経済・社会の包括的な歴史叙述となっている。安政期以降の政治情勢と、藩政期の民衆の生活・生業、文化・信仰などは次巻で取り扱う予定である。
我々は、すでに『新編弘前市史』資料編2・3(近世編1・2)を刊行して、資料に基づいた近世津軽領の歴史的な流れと枠組みを示した。この度の通史編では、基本的に資料編に掲載した資料を踏まえつつ、刊行後、新たに見つかった資料類や、二〇〇一年に刊行を開始した『青森県史』資料編 近世1(青森県刊)などを活用して、本巻を叙述した。また可能な限り、学界の最新の研究成果も取り入れるようにした。したがって、記述の中で、やや生硬な表現を余儀なくされた箇所があるいはあったかもしれないが、その点は右のような我々の試みによるものであることをお断りしておきたい。監修者・編集委員長からは、各原稿に対してご懇篤なご指摘を頂戴し、理解しやすい表現を心がけたつもりであるが、行き届かなかった点については何とぞご寛恕願いたい。
資料編をはじめ本巻の刊行に当たっても、市民の皆様や市内外の関係機関からは惜しみないご協力を頂戴した。執筆者一同、衷心より感謝申し上げる次第である。