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財政支出

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 次に諸村の財政(協議費)支出につきみることにしよう。この時期の戸長役場制度下における財政支出の特徴は、役場の戸長以下の給与、役場庁舎の維持費等は道庁の支出(地方費)となっていたことである。財政支出の費目は区町村費としてあらかじめ決められてあった。
 表15は諸村における財政支出を表したものであるが、主な費目をみると会議費、村費取扱費、教育費、土木費、衛生費、基本財産造成費などである。以上のうちこの表からもわかるように教育費が最も高い割合で、だいたい八割から九割を占めていた。教員の給与、学校の施設費や維持費に多分の費用を要し、国・道庁などから補助もないために、諸村では教育費の捻出には相当の苦労を強いられた。さらに学校の新築・修築となると協議費ではまかないきれず、村民の寄付金をあおぐことになり、村民の教育費負担は倍加されていた。教育費以外はいずれも僅少であるが、三十年以降は土木費と衛生費が増大してくる。土木費はもっぱら道路の修繕であったが、これは馬車の普及にともない堅固な馬車道が必要とされてきたためである。しかし多額の費用がかかり、小規模なものは村民の寄付金と労力奉仕によりすまされていたが、大規模なものになると国庫補助や寄付金、反別割の増徴などを財源としていた。丘珠村の二十六年、二十八年の臨時費は道路修理費で、このように二十年代は臨時費として処理されていた。しかし三十年代になると、道路修理も恒常的に必要となり通常費に計上されるようになる。これも反別割の創設により財源確保が容易となったことにも関係をもつ。
表-15 諸村の財政(協議費)支出
村名年度種類総 額教育費会議費村費
取扱費
土木費衛生費基本財産
造成費
借入金
公債返還費
雑 費その他臨時費
丘珠23決算190円14銭 厘132円80銭5厘円74銭1厘1円34銭52円50銭8厘2円23銭8厘
25180. 50.169. 65. 21円12銭5厘円50銭4. 225. 07. 3
26190. 63.171. 133. 50.5.11.252円50銭
27予算252. 78.217. 08.6. 50.8. 20.5.15.1.
28298. 80204. 30.9.12.12. 5030円 銭12.398. 80
32決算1685. 27. 9441. 93. 27. 45.24. 07. 71201.9. 321. 50.
33予算787. 75.642. 75.10.46.30.24.20.補助費
15円 銭 厘
70.
341249. 94.658. 54.10.46.615.34.436.10.
40.
白石22決算151. 54. 2146. 33.繰越金
5. 21. 2
23148. 85.148. 85.
3. 53. 6
24144. 02. 7141. 57. 4
2. 45. 3
25144. 26. 9142. 22. 81. 61.
43. 1
26164. 42. 5158. 63. 33.38
17. 10. 2
27193. 16. 1173. 07. 92. 98.
28308. 37. 6210. 57. 46. 76.4. 111. 33.学資元金組入
85. 60. 2
29予算414. 69. 3305. 98.4. 71. 38.96.
手稲25決算不 明116. 56. 50.1. 69.0.
豊平32予算2631. 80. 91681. 16.6. 49. 918.13.505. 85.警備費
397. 30.
332525. 16.1919. 91.6.80.22.11. 3460.38. 66.
387. 25.
月寒32予算1002. 15.895. 76.18.31. 69.35.30.2.
331225. 08.1099. 58.15.62. 32.25.23. 18.
苗穂・雁来26予算222. 48.203. 38.3. 70.5.10. 60
322039. 48.464. 48.11.26.1505.33.
33981. 46.739. 46.14.68.120.40.
札幌32予算1224. 76.479. 18.9. 20.23.682. 38.21.
331578. 05.925. 05.10.42.480.31.90.
篠路33予算2521. 36. 52064. 56. 516.76.100.44.220.繰越金
240.
1.各費目の合計と総額があわないものもある。2.追加予算は省略した。
3.丘珠村は『丘珠村関係資料』、白石村は『白石藩移住後継者団体資料』(道開)、その他は『札幌郡調』(北大図)、『豊平村 平岸村 月寒村沿革大略』(札幌市中央図書館)より作成。

 次に衛生費の増大は、種痘などの実施に加え三十二年以降、各村で衛生組合が作られ組合補助が加わってくることによる。また表15にはあらわれていないが、三十二年頃から白石山鼻村などでは村医を置くことになり、村医費が高いウエイトを占めていく。
 表15をみると三十年代に入り急激に支出総額が増えたことと共に、村により財政規模が著しく異なっていることにも気付く。豊平村のように市街地をもつ村や篠路村のように人口数の多い〝大村〟は、やはり財政規模は格段に大きい。地域の実情が財政にも反映しているといえよう。