社会教育研究大会

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昭和二十二年(一九四七)七月、文部省と県主催の第一回青森県社会教育研究大会が、青森軍政部指導のもとに津軽地区と南部地区で開催された。これは戦後における社会教育の振興と普及を図るために実施したもので、津軽地区は七月十六日から四日間にわたり、中津軽郡藤代村(現弘前市)致遠小学校で開催された。参加者はアメリカ進駐軍青森軍政部民間情報教育部係官、文部省係官をはじめ県関係者、県立図書館長、県社会教育委員および社会教育協会員、市町村会代表、軍政部指名者、学校長、労働組合、教師父母会、婦人団体、青年団、新聞記者、その他一般有志など六〇〇人であった。
 この社会教育研究大会は、アメリカ軍政府の指導に行われたもので、戦後の社会教育の方向を決めたものとして重要な意義を持つ。また、出席者の広汎な顔ぶれを見ても、社会教育の徹底を図ろうとする軍政府の意図が読み取れるのである。左に研究大会の概略を述べる。
 研究大会第一日目 初めに「社会教育の目的」と題して、青森県軍政部教育部長レップローグルの講演があり、次いで木村県教育民生部長の司会で、次の項目について研究討議が行われた。
 ○公民館(講師・文部省視学官小和田武紀)
 ○青少年団
 ○図書館の拡張と改善
 研究大会第二日目 岩淵弘前市長の司会で開会、青森県軍政部係官の「職業教育」の講演があり、次の項目について研究討議が行われた。
 ○労働者教育(講師小和田視学官・長内丈夫鈴木正五郎
 ○民主的団体の協議方法(講師小和田視学官・柴田やす今村敏長内正広・ 白浜キヨ笹森レイ
 ○男女共学・婦人教育(講師小和田視学官・小田信士・前田功・坂本一仁笹森テサ森田キヨ
 ○教育基本法と新学制(講師乳井春雄小野正文竹内こう土屋直好・藤森県視学官)
 第三日目 吉岡県立図書館長の司会で開会、青森軍政部ジョーンズ少佐の「宗教教育」の講演のあと、次の項目について研究討議された。
 ○芸術祭と音楽祭(講師文部省田名部事務官・木村弦三葛西覧造
 ○科学教育(講師小和田視学官・内田県農事試験場長・小山敏夫中川はぎえ
 ○通信教育(講師小和田視学官)
 ○学校拡張(講師青森軍政部レップローグル・田代弘高教授・弘前キリスト教会中村牧師・須貝青森師範学校長)
 ○体育(ワンアウトボールーソフトボールの実習)
 第四日目 須貝青森師範学校長の司会で開会、青森軍政部係官の講演「優秀小学校の特徴」と、同じく「視学教育」について講演および映画上映があり、四日間にわたる大会は終了した。
 以上、津軽地区で開かれた戦後最初の社会教育大会の模様であるが、特に運営の仕方において、講演と討論形式で進められたことは、戦前・戦中の社会教育のように一方的な訓示や訓練を中心とした方法とは、およそ異なるものであり、それだけに参会者の反響は大きかった。また、軍政部としては「話し合いの方法」や「討議のルール」を会得させることによって、日本の民主化を図ろうとしたこと、その成果が大会を通じて感じ取れたに違いない。いずれにせよ、戦後の社会教育の方向を示したものとして研究大会は大成功を収めたというべきであろう。