弘南バスからは運営委員会の決定どおり、駅と公園の往復料金は一五円とし、片道切符を発行して一〇円とする意見が出されている。馬車組合からは往復二〇円の要望があった。写真組合からは取締は自主的に行い、運営委員会の決定どおり許可制として腕章を付すこととしている。人員は四〇名とし三分の二が地元、残りは他方面から来る業者とした。総じて言えることは、ほぼ運営委員会の決定どおり打ち合わせがなされたことであろう。
弘前市が観桜会を市の観光の名物にしようとしていたのは、観桜会への観光客誘致に関する打合会の開催からもわかる。四月三日の会合には市当局関係者のほか、県当局や交通公社の青森営業所長、国鉄の関係者らが参加している。会合の内容は、観光地の集客問題を講じる上で参照すべきものが多いので、ここに記しておきたい。
打合会の書類を見ると、まず国鉄鉄道管理部、県企業課、青森観光協会、交通公社からの要望が多数記されている。そのなかで代表的なものを紹介しよう。まず団体客の誘致が検討されている。依頼状を各市町村長宛に発送するより、各駅長、交通公社、バス会社、私鉄交通業、大阪商船に依頼して運賃を割り引くのが効果的だという。臨時列車を運行し、列車の外部に「弘前観桜会」の標識を記載する案も出された。青森観光協会機関紙への特集号として「花の弘前」を掲載し、青森駅前の観光塔に広告を記載し、弘前駅前案内所には歓迎標識を掲載することも講じられた。進駐軍への宣伝も考案され、青森県企業課が英文パンフレットを製作し配布することになった。
この要望に基づいて打合会の案件が提示された。案件は、①観光客誘致に伴う宣伝方法、②案内・サービス体制の整備、③交通機関の配置だった。会合では、①の方策として、立て看板の掲示、ポスターの配布、ラジオ放送の活用が挙げられた。②は案内所の設置や観光パンフレットの配布、観光土産品の促進のほか、宿泊受け入れ態勢をどうするかが提案された。具体的には市内や大鰐旅館団と交渉して割引を実施したり、指定観光旅館を設けてサービスの向上をはかったりすることになった。③は「桜と国宝めぐり」と題した観光列車を増発し、県内バス運行の協力促進を検討するとあった。
これらの打合会のほか、仙台鉄道当局との打合せが注目されよう。団体客誘致の宣伝向上のために、市当局関係者と市議会議員数名が、打合せに参加している。いずれも宣伝方法や案内サービスの整備、交通機関への配慮などが重視され、検討されている。進駐軍への宣伝伝や配慮も項目に挙げられているが、占領期弘前市の観桜会の実態がかいま見られ興味深い。
写真228 弘前観桜会風景
打合会で仙台鉄道当局は「仙台としては弘前観桜会を第一に考へて居るのですから最初の印象として出来得る限り地元の誠実なる熱意を要望して居ります」と述べている。この発言は、現在でも地元観光地に必要な要素といえよう。そして具体的に、県外団体客へのお土産接待の方法として、津軽りんごを一人一、二個贈呈すると「相当なる好印象があると思ふ」と述べている。