表13は白石村における二十一年から二十九年までの財政収入の内訳をまとめたものである。これによると白石村では二十五年まで総額は一五〇円前後であったが、二十六年以降、徐々に増大していく。これは後掲の表14からもわかるように教育費の増加に対応している。白石村では白石小学校の新築、信濃・大谷地小学校の設置などにより教育費が急速に増大する傾向にあった。
表-13 白石村の財政(協議費)収入 |
年度 (明治) | 種類 | 村費徴収高 | 内 訳 | 小学校 授業料 | 督促令状手数料 | 繰込金 | その他 | 総 計 | |||
地価割 | 営業割 | 戸別割 | 追徴金 | ||||||||
21 | 決算 | 143円80銭4厘 | 16円50銭2厘 | 25円68銭 厘 | 101円62銭2厘 | 6円00銭4厘 | 149円80銭8厘 | ||||
22 | 〃 | 145. 53. 8 | 13. 83. 4 | 20. 21. | 111. 49. 4 | 6. 00. 4 | 151. 54. 2 | ||||
23 | 〃 | 139. 9. 3 | 10円4銭 厘 | 3. 53. 6 | 借入7円 | 150. 66. 9 | |||||
24 | 〃 | 128. 2. 5 | 10.79 | 5. 21. 2 | 144. 2. 7 | ||||||
25 | 〃 | 101. 80. 5 | 39. 95. 5 | 円69銭 | 1. 81. 9 | 144. 26. 9 | |||||
26 | 〃 | 125. 79. 7 | 17. 32. | 108. 47. 7 | 35. 12. 5 | 1. 5 | 2. 45. 3 | 164. 42. 5 | |||
27 | 〃 | 138. 95. 5 | 20. 99. | 115. 53. | 2円43銭5厘 | 50. 92. 5 | 2. 85 | 43. 1 | 193. 16. 1 | ||
28 | 〃 | 149. 90. 7 | 11. 25. 7 | 138. 65. | 64. 57. 5 | 1. 77 | 2. 41. 2 | 学資金利子 89円71銭2厘 | 308. 37. 6 | ||
29 | 予算 | 203. 19. 1 | 15. 58. 2 | 188. 10. 9 | 92. 40. | 1. 50 | 学資金利子100円 | 414. 69. 1 |
『白石藩移住後継者団体資料』(道開)より作成。 |
収入の内訳をみると、中心は戸別割の村費で全体の八、九割を占めていた。副次的に地価(地租)割、営業割もあるが、額はいたって少ない。地価割は二十五年に停止となったが、これはもともと免租地へ賦課した違法のものであったらしく、札幌ほか四カ村では二十三年に廃止されている。
唯一の収入源である戸別割も滞納者が多く、白石村では二十一、二の両年をあわせ約四三円の未納があり、完納を期することが問題となっていた(市史 第七巻一〇九五頁)。戸別割は一戸毎に地所、建物、所有財産などの財産高を見積り、その等級に応じて賦課するものであったが、白石村は二十五年までは五等、二十六年以降は六等となっている。白石村の等級数は少ない方で、これにひきかえ丘珠村では二十八年現在、二〇等級に細分化されている。これは丘珠村が農場所有者と小作人など貧富の差が大きかったのに対し、白石村はまだ村内の財産高の懸隔が目立った状態になかったためであろう。しかし三十年代に入ると等級数は増加していく。
当時の各村はいずれも戸別銭が主な収入源であったが、これのみでは増大する村財政を十分にまかなうことができなかった。それゆえまず第一に村の基本財産の造成や利殖などが強く求められていた。その中でも小学校の維持のために設置された学田地の造成につとめていた。表14にみられるように札幌・苗穂・雁来・豊平村では学田地の貸付料(地代)が、大きなウエイトを占めるようになってくる。白石村では二十八年から小学校の新築用預金の貸付をはじめ、利殖による財政収入をはかっている。
ただいずれにせよ戸別割が主な収入源である状況を脱し、増大する村財政に対応した安定した財源が求められていた。そこで設置されたのが以前の地価(地租)割にかわる反別割であった。反別割を初めて実施したのは札幌ほか四カ村で、
とされ(道毎日 二十八年五月八日付)、増大する土木費の財源に対し地所所有者への〝受益負担〟として案出されたものであった。白石村でも二十九年に、耕宅地一反歩につき三銭以下を賦課することを総代人会で議決しており(しかし予算では計上されていない)、各村でも新たな確実な財源として一斉に設定された模様である。
表14は明治三十二、三年の諸村の収入予算を一覧したものであるが、札幌・苗穂・雁来村などでは戸別割を凌ぐ程の割合を占めている。また、賦課率も徐々に上げられていき、村財政では戸別割と並ぶ安定的で重要な財源となっていった。また表14からは豊平・月寒村のように市街商業地を抱える村では、商業者に課せられる営業割、所得割も相応の収入となっており、村々の経済構成が財政収入に反映されていた。
表-14 諸村の財政(協議費)収入予算 |
村名 | 年度 (明治) | 村 費 | 小学校 授業料ほか | 学田 地代料 | 国庫補助 | 寄付金 | 繰越金 | その他 | 総 計 | |||
戸別割 | 反別割 | 営業割 | 所得割 | |||||||||
札幌 | 32年 | 470円56銭 厘 | 600円 銭 | 46円20銭 | 108円 | 1224円76銭 厘 | ||||||
33 | 607. 85. | 816 | 46. 20 | 108 | 1578. 5. | |||||||
苗穂・雁来 | 32 33 | 242. 28 301. 36 | 545. 20 318. 50 | 49. 61. | 150 300 | 500円 | 505円 | 50円 銭 厘 | 2041. 48. 981. 46. | |||
丘珠 | 32 | 516. 28 | 324. | 27. 50 | 67. 95. 6 | 1704. 78. | ||||||
33 | 368. 29. 4 | 288. 50 | 36. | 400 | 437 | 67. 95. 6 | 760. 75. | |||||
篠路 | 33 | 1502. 81. 5 | 582. | 114. 05 | 440. | 2638. 81. 5 | ||||||
豊平 | 32 | 823. 50. | 490. | 500円 銭 | 50円 銭 | 704. | 60 | 2631. 80. | ||||
33 | 600. | 482. | 540. | 62. 50 | 715. | 60 | 学資金貸付30円 | 2525. 16. | ||||
月寒 | 32 | 596. 10. | 98. 90 | 135. 45 | 60. | 89. 10 | 貸金利子 20 | 1002. 15. | ||||
33 | 675. 20. | 87. 80 | 190. 90 | 80. | 165. | 1225. 8. |
1.一部総計があわない。2.『札幌郡調』(北大図)及び『豊平村・平岸村・月寒村沿革大略』(札幌市中央図書館)より作成。 |